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No.23/2009 |
■心からの歓迎 |
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心からの歓迎
ITF船員トラストが、新たな船員センターや通信プロジェクトに、どのように資金援助してきたかを、トム・ホルマー事務局長が解説する。
ITF船員トラストは、世界の船員の利益のために設置された慈善組織である。これまで28年間にわたって、船員トラストは船員のための建物、マイクロバス、器具・装置類、その他の施設などに補助金を交付してきた。港湾を訪問した際には、船員トラストが船員センターや訪船者のために購入した機器類などに貼られている、船員トラストのステッカーに注目してほしい。
2007年度に実施された約4千人の船員を対象とする調査によれば、船員が寄港地で最も必要とするものは、国際電話およびEメールができる安価な通信施設、無料の交通、周辺施設に関する情報(電話、店、タクシーの場所など)であった。この結果に基づいて、我々はこれらに補助金を集中させることとし、2008年度は約100万ポンドを船員輸送用車両に支出した。通信施設の最善の設置場所は船内である。ITFは、船員のために、船内でのプライベートな電話または文書の通信手段を確保するために、現在準備を進めている。しかし、これには時間が必要だ。そのため、当面の措置として、港湾施設内に通信施設を設置することに力を注いでいる。
一部の港湾では、船員の福祉が重視され、手頃な価格で利用できる優れた施設が用意されている。また、船員センターや訪船組織が船員のための交通手段を提供している。しかし、福祉施設などが存在しない港も多いため、船員トラストは船員福祉団体や港湾当局に対して、船員のための福祉施設を設置するよう要請している。
多くの港湾には、港湾福祉委員会が設置され、地方自治体や中央政府の代表や、船員労組、船主、教会、港湾当局、船舶代理業者などの海運関係者が参加している。地域によっては、関係者が委員会を立ち上げ、訪船者や運転士を確保するための基金を設置しているところもある。船員トラストは、委員会発足のための初期資金を用意することはできるが、その後の運営については、委員会が自己資金を調達しなければならない。
以前、ラテンアメリカの港湾には何もなかったが、その後、状況が変わり、現在は、船員センターや訪船担当者が活動している。船員福祉国際委員会(ICSW)の4年間の活動によって、ホンジュラスのプエルト・コルテス港、コスタリカのプエルト・リモン港、パナマのバルボア港、エクアドルのグアヤキル港、コロンビアのブエナベンチュラ港とバランキラ港、メキシコのエンセナダ港などに船員センターが設置された。船員トラストは、これらの港に加えて、メキシコのカルタヘナ港、コロンビア港、プログレソ港の既存施設のサービスの改善を行った。
これらの施設やサービスは、主に地域の教会ボランティアがサポートする地域委員会が管理しており、教会ボランティアが訪船活動を行ったり、市街地への交通手段を提供したりしている。家族や友人との交流、他船の乗組員との酒を交えてのつきあい、土産品や身の回り品の調達など、陸上に暮らすボランティアにとっては当然のことを船員にも体験してもらおうとしているのだ。
これらの船員センターは世界的な組織に属しているわけではないため、スタッフは孤立していると感じている。このようなスタッフを支援するために、船員トラストは初期活動資金の提供だけにとどまらず、スタッフの研修コースなども実施している。研修コースには、船員センターの運営に長年携わっている人々に相談したり、カウンセリングを受けたりする機会も盛り込まれている。
ITFラテンアメリカ地域事務所も、これらの活動を積極的に支援している。同事務所のアントニオ・フリッツ所長は元船員だ。5年前、ラテンアメリカには福祉施設がほとんど存在しなかったが、現在は、数か所の船員センターが多様なサービスを提供している。
「この目覚しい変化は、意思と決意、それに、船員トラスト特別プロジェクトの研修や支援の成果だ」とアントニオ・フリッツ所長は語る。「ラテンアメリカを訪問する船員のために、より多くのサービスを提供しようとする努力と専門知識を結集させた結果だ」
船員トラストは他の地域もターゲットにし、船員センターの開設・運営を目指している。ここ10年間、東ヨーロッパ、インド洋沿岸、西アフリカなどにおいても、プログラムを実施している。現在は、南アジアおよび東南アジアでプログラムを実施している。
これら全ての地域においては、船員福祉施設といえるものが一切存在しない港もある。船員福祉サービスが、港湾内のインターネット・カフェという形になるかもしれないし、船員を町まで輸送するライトバンになるかもしれない。いずれにしても、その港湾を訪れる船員の数と要望がサービスの基礎になろう。
船員トラストは、新規のプログラムに加え、すでに基礎を確立し、立派な業績を上げている船員センターへの援助も続けている。最近では、ハンブルク-アルトナのドイツ船員ミッションの改装、英国の複数の港湾で使用される車両の更新、米国およびスカンジナビア諸国の船員センターの車両・機器更新の補助を行った。現行の方針では、大規模な建物への補助は適切ではないと判断されているが、現在でも船員たちに利用されている施設の場合には、可能な限り援助を行うことにしている。 |
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●ITF船員トラストに関する詳しい情報はへ。
●電話やEメール設備を設置してほしいと思う港湾があれば、あなたの意見や提案を添えてEメールを(trust@itf.org.uk)。
トム・ホルマーはITF船員トラストの事務局長。 |
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