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No.24/2010 |
■ITF船員トラスト |
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船員センター
利用しよう。さもないと無くなるかもしれない。船員センターの利用者が十分いなければ、閉鎖になるかもしれない。そうなれば、損害を受けるのは船員だ。
2009年は、船員が多くの困難に直面した年だった。係船された船舶は多数にのぼり、次の契約を待つ期間は長くなった。積荷が少なくなれば、荷役時間も減少し、乗組員の一時上陸も縮小される。
これが意味するものは、船員センターの運営における苦労の増大である。センターへの来訪者が減少するか、または来訪者の使う金額が減少しているか、どちらかである。アルコール飲料の利用制限が厳しくなるにつれて、伝統的な収入源であったビールや清涼飲料水の売り上げが減少している。電話カードや電話料金の収入も、料金引き下げに伴って減少している。
世界の船員センターの代表者が、2009年10月、香港に集まり、いかにして船員センターの運営を維持し、効率的な船員支援を継続するか、話し合った。
フィリピン人船員のノノイ・バルドンが、最近の航海での船員センターに関する経験を語るために、この会合に招かれた。ノノイは、次のような経験を述べた。乗組員らは、入港中の訪船者、とりわけ家族との連絡を援助してくれる訪船者を歓迎している。また、船員は簡単に商売人の「カモ」になっている、と述べた。あるとき、彼は港からタクシーで25分かかる町へでかけたが、タクシー料金を100ドルも払わねばならなかった。その町のバーで彼は盛大な歓迎を受け、多くのスナックや料理を「提供され」たが、帰る時に500ドルの請求書を突き付けられた。
ほかの港では、牧師が訪船し、観光ツアーに連れて行ってくれ、船員センターにも案内してくれた。観光ツアーで、山並や草花を見たのが楽しかった、とノノイは語った。彼の仲間の乗組員たちも、今回の航海で契約が満了して下船する予定だったが、このツアーが大変良い経験だった、と話し合っていたとのことであった。
国際キリスト教海事協会(ICMA)のヘニー・ラグランジ事務局長は、こう述べた。「今回のワークショップでは、各代表らの情熱とプロ意識および船員センターが提供しているサービスの質の高さが示された。このような船員サービスに対する献身は、ICMAの誇りである。今回のワークショップの成果が、全ての船員センターに役立つことを希望する。」ワークショップの運営を支援していたITF船員トラストのロイ・ポールは、次のように語った。
「明らかになったのは、船員に対する福利サービスの提供に関して、現在でも船員センターがその中核を担っているということである。MLC2006は、港湾をベースとする船員福利施設の必要性を強調しているが、この種の施設は、すでに多くの港湾で機能している。」
「船員のニーズは変化した。例えば、宿泊施設を備えた船員センターの必要性は少なくなったが、港に近接した小規模な船員センターへの要望は強くなっている。何よりも重要なことは、船員センターは船員に利用されなければ存在できない、ということである。私としては、可能な限り、船員がセンターを積極的に利用し、支援してくれるよう希望する。」 |
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船員センター
世界各地の港湾に、約650カ所の船員センターが開設されている。多くのセンターは、国際キリスト教海事協会(ICMA)のメンバーが運営している。ITF船員トラストは資金を提供して、ICMAとともに世界中の港湾から港湾牧師やセンターの支配人を招き、香港でワークショップを開催した。船員センターの支配人らは、船員センターの運営を成功させるために、決定的に重要な要素と最善の実践事例について検討した。
ワークショップ参加者は、以下の諸事項を取り上げた。:
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センターの活動の焦点を、船員のニーズに合わせる。 |
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センターのインフラ(場所、交通、建物の構成)。 |
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センターのスタッフと業務の一体化。 |
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スタッフおよびボランティアの態度と職業意識。 |
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センターと地域当局、関係産業および地域の教会組織との関係。 |
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安定した交通手段の存在。 |
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船員のための有益なサービスを維持するための重要な部分は、資金調達である。 |
船員センターは貴重なサービスを提供しているが、船員センターの支配人が協力し合うことによって、船員のニーズに応えることが可能となる。 |
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新たな解決法?
船員を歓迎するためのスペースを創出するための新機軸について、ロイ・ポールが報告する。
コンテナ輸送の発展は、船員の福利に影響を及ぼしている。かつては何日もかかっていた貨物の積み下ろしが、コンテナの登場により数時間で完了するようになった。そのため、船員の一時上陸に当てる時間も限られている。多くの港湾において、市内の中心部または港湾地域外に設置されている船員センターを訪れる機会が減少した。このような状況から、船員のニーズに応えるため、誰かがコンテナに注目するのは、遅かれ早かれ、必然的な成り行きであった。世界各地の港湾で、ますます多くのコンテナが船員センターに改装されている。
船員は、このようなコンテナの船員センターによって、幾つかの利点を享受している。重要なことは、コンテナの船員センターは埠頭やバースの近くに設置できるため、船員にとって利用しやすくなったことである。このような理由から、ITF船員トラストは、この種の施設のために資金を提供し、船員に積極的に利用するよう奨励している。
コンテナの船員センター
2009年度にITF船員トラストは、フィリピンのゼネラル・サントス港にコンテナの船員センターを開設するため、資金を提供した。このプロジェクトは、当地の港湾当局とシスター・スーザン・ボラニオ牧師の援助で推進された。ボラニオ牧師は、グティエレス司教とともに、フィリピン海事局(MARINA)、関税当局、沿岸警備隊、フィリピン港湾当局(PPA)などとの交渉に当たった。その結果、PAAは「海の使徒サービス会」にスペースの提供を約束した。多国籍フルーツ企業DOLE(フィリピン)は、ケビン・デービス総支配人を通じて、40フィートコンテナ一個を寄贈することになった。DOLEは、コンテナを改装し、ドア、窓、床張り、内装などを1カ月以内に完了し、船員センターを誕生させた。
ステラマリス船員立ち寄りセンターと呼ばれるこの施設は、入港中の乗組員が、停泊している船から歩いて行ける戦略的な地点に位置している。このセンターには、インターネット・カフェや電話のほか、小規模な軽食堂や船員が夜間にリラックスして時間を送ることのできるガーデン・スペースも用意されている。
ITF船員トラストは、これまでに何件かの同様なプロジェクトに資金を提供した。フィリピンのセブ港では、2個の40フィートコンテナが、船員センターに改造された。フランスのマルセイユ港では、コンテナの代わりに、プレハブの仮設家屋が船員立ち寄りセンターとして活躍している。
ナイジェリアの首都、ラゴスのアパパ港に入港した乗組員は、埠頭のすぐ近くに船員福利センターがあることに気づくだろう。港湾当局が港の管制センターのすぐ隣に場所を提供し、ITFはインターネットに接続された4台のコンピュータを備えた新しい船員センターのために資金を供与した。このセンターでは、船員が清涼飲料や土産物などを入手することも可能である。
ナイジェリア船員福利委員会のエイモス・キュージェ事務局長は、次のように述べた。「港湾当局の援助を得て、我々は船員センターを設置することができた。このセンターのプログラムでは、アパパ港のターミナルに停泊する全ての船舶、すなわち一般貨物船、コンテナ船、バルク船、Ro-Ro船などの乗組員をもてなすことになっている。センター内のスペースは、レクリエーション、卓球、バドミントンなどに充てられている。また、ショッピング、各宗派の教会、モスクや、興味のある場所を訪問するための無料バスも用意されている。当センターのボランティア達は、ICSWが主催した船員センター研修コースを修了した。彼らは定期的に訪船しているほか、朝9時から夜9時まで、センター内の業務に就いている。
船員にとっての有益な施設を港内の便利な場所に用意するためには、コンテナは極めて優れた手段である。その港のニーズに変化があれば、コンテナを必要な場所に移動させることができる。
アパパ港船員センターのボランティア、バルナバス・エプは言う。「開設以来、多くの船員がセンターを訪れた。ISPSコード(国際船舶港湾保安コード)は、船員が福利施設を容易に利用できなければならないと規定しており、我々のセンターが港内に設置されたことは幸運であった。このセンターは保安地域内にあるため、船員の訪問は常に可能である。船員たちは、センターが港内にあるのを見て驚き、家族との連絡ができるので喜んでくれる。」
ITF船員トラストのトム・ホーマーは、次のように語っている。「船員が必要とするサービスへのアクセスを援助するため、この種のセンターへの資金提供を続けたいと考えている。コンテナを活用した船員センターの設置に必要なコンテナおよび設置スペースの提供について、地域の海運関係企業や港湾当局が積極的に協力してくれているのは、喜ばしいことだ。一部の港湾当局は、自己の港湾に入る船員たちの福利ニーズに応えるために、電力や上水道の供給に協力してくれており、我々は大いに感謝している。」 |
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