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グローバルユニオン

No.17/2003
■海技免状
 
新たな調査によって問題の広がりが強調された
偽造海技免状の増加傾向?

船長100人のうち2人は、偽造または不正に発給された海技免状を持って勤務している可能性がある。その原因は、国際海運業界がこの問題について、その場を取り繕うだけの不正防止策をとり続け、1980年代に行き詰まってしまったことにある。
偽造は、資格証明書および全ての職位・技能の証明書の裏書保証に関連しており、増加傾向にあると広く信じられている。
全ての船員の10%が、少なくとも一つの偽造海技免状を保有している可能性がある。その合計は、関連する6カ国だけでも40,500件にのぼっており、ある場合には組織的な偽造、不正あるいは劣悪な訓練と検定などの巨大な問題の存在を指し示している。
この問題の広がりは、国際海事機関(IMO)の委託によって、英国のカーディフ大学の船員国際調査センター(SIRC)が行なった調査によって初めて明らかになった。この調査によれば、ほぼ10人に1人の船員が「直接または間接」に偽造海技免状に関係した経験を持っている。このうちの40%は下級士官(職員)、9%が上級士官で、51%が部員であった。
調査対象となった1,105人の船員の17%が、偽造免状を持っていることが分かっている船員が乗組んでいる船で勤務したことがあると答えている。また、このグループの10人のうち9人が、1種または2種の偽造免状を所有していると回答している。
船員配乗業者、船主、船員訓練施設、専門偽造業者および海事当局職員などが、偽造書類の出所となっている。調査チームによれば、海技免状の偽造防止措置は極めて単純であるため、海技免状の偽造に際しては、高度の技術や機器は全く不必要とのことである。
調査チームが訪問した13ヶ国のうち10カ国においては、裏口営業という言葉が控え目すぎる表現と思える規模で、書類の偽造業者が活動していた。「免状の偽造は、効率的な組織と海事当局内部、海運経営者、船員斡旋業者および船員訓練施設などへの有効なコネ(つながり)によって運営されている。偽造業者が国際的に活動しているケースも幾つか見られる」と調査報告は述べている。
船員の訓練、資格、当直の基準に関する国際条約(STCW―95)の第6章に基づいて発給されたすべての海技免状が偽造であるとの証拠を、調査員らは発見した。多数の船員訓練センターが、訓練および査定に関する最低基準を満たすことなく、STCW短期コースの証明書を発行していたのである。公然たる偽造―とりわけ1995年のSTCW条約、第5章および第6章に基づく海技証明書―の偽造および健康証明書や乗船経歴証明書などの偽造が広範に行なわれている。
「現行の海技免状は、その所有者とされる人物と免状を充分に関連づける確実な生物学的情報を提供していない。」と調査報告は言う。「免状の信頼性の証明も簡単ではない。これは重大な欠陥である。なぜならば、殆んどの場合に、使用者、ポートステート・インスペクター、船長、行政関係者などの視覚によるチェックによって、免状の信頼性が確認されているに過ぎない」
ITFは、海技免状に生物学的情報(暗号化された個人情報の提供)を記録することには同意できない。この種の「スマート・カード(集積回路を組み込んだ多機能カード)」方式の情報技術による人権および労働組合権に関する問題について、ITFは懸念を持っている。
この調査が結論として提示している唯一の現実的解決策は、国際海事機関(IMO)および国際労働機関(ILO)が管理するグローバルな規制システムである。総合的には、規制の行き届いた国内労働市場からその場しのぎの規制しかないグローバル・マーケットへの移行による「混乱の代償」が、問題の根源なのだ。
この報告書は次のような提案を行っている。
● 海技免状自体の偽造対策の改善
● STCW−95の実施の効率化
● 偽造対策の専門家の訓練
● 海事当局内部および相互間のコミュニケーションの改善
● 偽造対策担当者の任命
● 船員訓練機関の徹底的な規制
● 海技免状データ(イメージ)バンクの設置
● 免状の確認のためのサンプル技術の利用
● 船員配乗業者の一層厳格な規制
● グローバルな協力による技術援助計画に基づいて、使用者および国家から提供されるより多くの訓練資金
● 上記の提案の全部あるいは一部を促進するために、IMOとしてSTCW−95条約の改正を検討する
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2年前にITFは、一等航海士の海技免状をパナマ政府から取得するのは、容易であることを暴露した。ITFのデビッド・コックロフト書記長が一航士の免状を取得するためにしたことは、住所、氏名およびパスポート用顔写真に4,500米ドルの小切手を添えて提出するだけであった。
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不正な海技資格の免状およびその裏書保証手続きに関する調査報告書は、キプロス、英国、ノルウェーなどの政府、欧州連合(EU)およびITFが提供した資金によって、船員国際調査センター(SIRC)が作成した。この調査は、54海事関係団体、48関係企業および主要船員供給国である6カ国出身の船員1,105人への面談、聴取、調査などに基づいている。
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