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No.17/2003 |
■一時上陸 |
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この体験学習に参加したのは、ポルト・マルゲーラのG.ブルノ高校の生徒(17〜18歳)であった。ポルト・マルゲーラは、ベニスの商業・産業港湾として約120カ国から年間約180,000人の船員を迎え入れている。この調査は2001年9月に行なわれた。
生徒たちは、国籍を示した上陸許可証(ショアパス)を首から下げていた。国籍は、この港を訪れる船員の典型的な国籍から選ばれた。各グループは、故国の実家に送金する、または電話をかけるなどの、達成すべき課題を与えられた。彼等は、イタリア語の使用を禁止され、英語だけが許されていたほか、所持金として米ドルが支給された。 |
生徒たちは、船員の生活の困難を体験した。
イタリアの高校生が6グループに分かれて3時間にわたって「船員」を体験し、外国の港湾で一時上陸するということが何を意味しているのかを理解しようとした。以下は彼等の日記からの抜粋である。
グループ1
●国籍:ガーナ、インドおよび
ルーマニア
●課題:市場に行き、自転車を借りる
私達はバーを見つけて、スタッフに町の中心地区への行き方を尋ねましたが、得られた情報は私達を混乱させるものでした。バスに乗って行かなければならないのですが、バスのチケットを買う場所がありません。中心地区に行く道路標識もなく、30分も歩きました。
私達は、米ドルを現地通貨に交換することにして、ある店で銀行の場所を聞きました。銀行に着いて判ったことは、手数料として7米ドル支払う必要があるということでした。私達の所持金は、全部で17米ドルしかなかったので、両替するのは中止しました。
私達は、やっと青空市場を見つけましたが、その時に、町には大きな商店街があるということを教えられました。
自転車を借りることも不可能でした。自転車を借りるためには、住所が必要です。住所の代わりに車を駐車場に預けておくこともできますが、どちらも不可能な私達は、自転車を諦めるしかありませんでした。
結局、私達は一時間遅刻して、港の入り口に帰りつきました。その訳は、誰かが私達に間違ったバス路線番号を教えたためです。そのバスは、唯一の交通手段でした。
グループ2
●国籍:全員中国人
●課題:中国の食料品店に行き、北京に電話をかける。理髪店で散髪をする。
近くにバス停留所はありません。そこで私達は、当てもなくバス停を探しながら30分ほど歩きました。高架道路にでたところでバス停を見つけ、ベニスに行きました。そして市内に入り、通貨交換所を発見しました。偶然に中国人商店を見つけました。理髪店の場所を尋ねましたが、英語が通じないので苦労しました。最後になって、女性が理解してくれ、理髪店の場所を教えてくれました。しかし、その理髪店は予約制でした。そのあと、私達は国際電話カードを買いました。なんとかして北京に電話をかけようといろいろ試みましたが、何回やっても通じないので、とうとう諦めました。
グループ3
●国籍:フィリピン、ウクライナおよびビルマ
●課題:フィリピンに小包を送る、ウクライナに送金する、船員センターの場所を探す。
絶望的状況。ものを尋ねようにも人影もない。やっと見つけた人は、英語が通じません。フランス語を試してみましたが無駄な努力でした。私達は、何とかして船員センターを見つけようとしましたが、港にはまったく情報がありません。ある人が、自動車のショールームのあるベンパ・ビルの向かいではないかと教えてくれましたが、肝心のベンパ・ビルの場所がわかりません。ほかの人の言う場所に行って、また30分ばかり時間が無駄になりました。
やっと町に着いた私達は、小包を送ってくれる場所を探しました。運送店がありましたが、包装が不完全であるとして受け付けてくれません。私達は、銀行に行き通貨の交換には成功しましたが、不利な交換レートと手数料のためにかなり損失がでました。彼等は、郵便局を通じて送金するよう教えてくれましたが、我々は郵便局の場所を知りませんでした。
船員センターを探すことにして、ベンパ・ビルの場所を聞きました。我々が得た情報は、またも間違いでした。結局は正確な情報を得ることができましたが、それは来た道を後戻りすることでした。バスを利用することにしましたが、切符を買う場所がわからないので、切符なしでバスに乗りました。ベンパ・ビルに行く途中で、私達は郵便局を見かけたので、そこで包装紙を買い、小包をフィリピンに向けて発送することには、遂に成功しました。私達はベンパ・ビルに到着しましたが、英語の分かる人は一人もいません。船員センターの標識も見当たりませんでした。諦めるほかありませんでした。
グループ4
●国籍:トルコおよびギリシャ
●課題:Eメールをトルコに送る。ギリシャ正教の教会を探し、神父と面会する。
港付近の地図もありません。出口もわかりません。バス停を発見しましたが、時刻表もその他の表示もありません。あるのは、有効なチケットを持たずにバスに乗った場合は罰金の対象となるとの警告だけです。しかし、チケットの売り場は見当たりません。長い間バス停で待ちましたが、バスは現れませんでした。
私達をヒッチハイクで運んでくれたドライバーは、高架道路まで連れていってくれました。チケットを買う方法がないので、チケットなしでバスに乗りました。わからないままに終点まで行って、バスを降りました。私達は両替を済ませてから、警官にインターネット・カフェの場所を教わりました。そこで、課題の一部を達成することができました。次に、教会の場所を尋ね歩きました。言葉が通じないので散々苦労した後に、やっと教会を探し当てました。しかし、神父の面会日は土曜日と定められているとのことでした。
グループ5
●国籍:クロアチア、ブルガリア、フィンランドおよびインドネシア
●課題:時計屋、撞球場、レコード屋を探す。サウナ風呂に行く。
我々のいる所はどこなのでしょうか?あてもなく野原を突っ切って3キロばかり歩いて行くと、大通りに出ました。しかし、舗装していない道路なので危険でしたが、この道路に沿ってゆくしかありません。電話ボックスもバーも何もありません。仕方が無いので、また別の野原を横切って行くと、バス停留所がありましたが、なにも表示がありません。バスがきたので、我々はバスに乗りました。バスのチケットを持っていませんでしたが、一人の女性がチケットを使わせてくれました。市街中心地で彼女は我々とともにバスを降りて、時計屋の場所を教えてくれました。これで課題の一つが達成できました。
我々は銀行に行き、44米ドルを現地通貨に交換しましたが、バスのチケットはまだ手に入れることができません。撞球場を探しあぐねているときに、我々は偶然、レコード屋を見つけました。そこで我々は、サウナ風呂を探すことにしました。旅行代理店やホテルで聞いてみましたが、情報を得ることはできませんでした。我々がホテルで尋ねている時に、制限時間が過ぎてしまったことに気付きました。そこで、ホテルのフロントに、タクシーを呼んでもらいました。タクシーが来ましたが、運転手は英語が全く通じません。どうしようもないのでイタリア語で説明しました。ところが、所持金は全部で20ユーロ(40,000リラ)しかなく、港まで帰るには不足でした。仕方が無いので、タクシー料金が40,000リラに達した地点でタクシーを停め、残りは歩いて帰り着きました。
グループ6
●国籍:クロアチア、ブルガリア
●課題:中東料理のレストランを探す。コーシャー食品(ユダヤ教の作法によって作られた「清浄な」食品)を買い入れる。
私達は、現在位置がはっきりしないまま出発しました。遠くに住宅地域があるようなので、そちらに向かって歩きましたが、着いて見ればそれは発電所でした。運良く、そこの駐車場に車で到着した人がありました。その人は、英語は話せませんでしたが、ある商店を指差して、そこでバスのチケットを買い、バスについて尋ねるよう教えてくれました。
歩き出してから、通行人が水上バスの乗り場を教えてくれました。乗り場までは、2―3キロの道のりでした。町のインフォメーション・センターで、希望するレストランの場所と食品を手に入れる場所を尋ねました。彼等は、私達にベニスに行くよう勧めました。私達はまず両替をして、チケットを購入しようとしましたがモーターボートのチケットの値段は一人15,000リラ(7.5ユーロ)でした。そこで彼等は、より安い料金でベニスに行く方法を教えてくれました。まずバスで鉄道の駅まで行き、そこからベニスまで鉄道を利用するという方法です。私達はバスのチケットを買いに行きましたが、次のバスに乗るには45分待たねばならないことが分かりました。
そこでヒッチハイクを試みることにしました。やっとのことで、ある運転手が私達をメストレ地区の高速道路まで乗せてくれました。それから私達はバスに乗ってベニスに到着し、観光案内所で地図を手に入れました。地図のおかげで私達はユダヤ人地区を見つけて、パン屋で必要な食材を購入しました。
さらに私達は中東料理のレストランの場所を何軒目かのバーのスタッフに教わり、それを探し当てました。私達は課題をすべて達成しましたが、制限時間は過ぎていました。仕方なく、高価なチケットを買ってモーターボートで帰らざるを得なくなりました。
高校生達の結論
これらの学生たちの経験が強調しているのは、世界の各港湾に船員センターを設置することの重要性である。この調査が結論付けているのは、港湾地域には、無料の交通手段、図書館、ビデオ、衛星テレビ、インターネットやEメールの機能を持ったコンピューター、両替所、郵便および電話サービス、スポーツ施設などを備えた多国籍の船員厚生施設が不可欠であるという事実である。
今回の高校生たちの体験実習の結果として、現在ではマルゲラ港を訪れる船員のためにデザインされた立派な携帯用地図が用意されている。この地図には、この地域の詳細な情報に加えて、地域の船員援助センターの無料電話番号、バスの時間表、電話ボックス所在地、宗教関連施設、医療およびスポーツ施設、商業施設などが表示されている。また、新たな船員センターの建設も検討されている。 |
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「英語が分かる人は一人もいません。船員センターを示す標識も見当たりません。私達は諦めるほかなかったのです。」 |
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高校生達の結論
これらの学生たちの経験が強調しているのは、世界の各港湾に船員センターを設置することの重要性である。この調査が結論付けているのは、港湾地域には、無料の交通手段、図書館、ビデオ、衛星テレビ、インターネットやEメールの機能を持ったコンピューター、両替所、郵便および電話サービス、スポーツ施設などを備えた多国籍の船員厚生施設が不可欠であるという事実である。
今回の高校生たちの体験実習の結果として、現在ではマルゲラ港を訪れる船員のためにデザインされた立派な携帯用地図が用意されている。この地図には、この地域の詳細な情報に加えて、地域の船員援助センターの無料電話番号、バスの時間表、電話ボックス所在地、宗教関連施設、医療およびスポーツ施設、商業施設などが表示されている。また、新たな船員センターの建設も検討されている。 |
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