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グローバルユニオン

2005年10〜12月 第21号
■サプライチェーンにおける連帯
 
サプライチェーンにおける連帯

最近開催された海運・炭鉱労組の会議で、労働者が国境やサプライチェーンのリンク(繋ぎ目)を越えていかに助け合えるか、また、助け合っていかなければいけないかがはっきりと示された。会議の様子をスティーブ・スタローンが報告する。

グローバル経済においては、世界の産業に必要な資源を採掘、加工、輸送する労働者は巨大な力を発揮できる。グローバルサプライチェーンのリンクを握り、共通の多国籍企業を使用者にもつ運輸・炭鉱労働者は、産業をどのように機能させるか、富をどのように流通させるかなどの決定に影響力を行使できるのだ。サプライチェーンの中で働くわれわれ労働者が必要な時にいかに助け合えるかを、ある最近の出来事が示してくれた。
今年5月に米国カリフォルニア州のロングビーチで開催された第2回海運・炭鉱労組会議に10カ国、30労組の役員・一般組合員総勢200人が結集した。この会議の目的は、お互いの接点をよく理解することで、相互の力を最大限に発揮させることだった。参加者は4日間にわたる討論、報告、ネットワークづくりを通じて、会議テーマの「連帯のグローバル化」を文字通り実践した後、会議最終日にグローバル資本や多国籍企業に対して共に闘うことを誓い合った。
オーストラリア海事組合(MUA)と北米国際港湾倉庫労働組合(ILWU)の共催で開催されたこの会議は、3年前にオーストラリアのニューキャッスルで開催された第1回目に続くもので、チリ、ベトナム、オーストラリア、米国、カナダ、南アフリカ、日本、台湾、パプアニューギニア、ニュージーランドの海運・炭鉱労組が参加した。
ILWUのジェームズ・スピノザ委員長は開会の挨拶で次のように述べ、4日間にわたる会議の基調と方向性を示した。
「ロックアウトされたり、アウトソーシング反対ストを実施したり、何か問題が発生している時にだけ結集すればいいというものではない。われわれは一人ではないという自信を常にもっていられることが大事だ。そのためにも、相互支援が必要になった時にどこに声をかければよいかを日頃から学んでおく必要がある」
スピノザ委員長に引き続き開会の挨拶を述べたMUAのパディ・クラムリン委員長は、参加組合の経験に基づきながらグローバル化の問題と連帯の必要性を訴えた。
「われわれはモノを運ぶ仕事をしている。だから叩かれるのだ。自由貿易には労働者の居場所はない。組合の居場所もない。強力な交運労組の居場所などあるわけない」
クラムリン委員長は98年のパトリック争議に触れ、港湾で働く2千人の組合員が犬を連れた私設警官に深夜に港から引きずり出された光景を語った。ロックアウトされた組合員はゲートの外からスト破りが自分たちの仕事を行っている姿をただじっと見つめていたという。当時、MUAのピケラインには全国の労働組合だけでなく、一般市民も加わった。ロサンゼルスのILWU組合員はスト破りが荷役した船舶がやって来ても荷役を拒否した。そして最後にはこの国際連帯が勝利を収め、組合員は自分たちの仕事を取り戻すとともに、MUAを救うこともできた。
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過剰な企業権力との闘い

アメリカ労働総同盟産別会議(AFL-CIO)のリチャード・トゥルムカ財務部長−父、祖父も炭鉱労働者で、全米炭鉱労働組合(UMWA)の一組合員からアメリカのナショナルセンターのナンバー2に上り詰めた−は、労働者間の所得格差の拡大、企業役員の異常なまでの高額給与、政策や法律を決定している人々との関連性を考えてみる必要があると代議員に語った。
「労働者とアメリカの労働組合が直面している冷たい現実は、企業とその役員が片方の手でわれわれの給料を絞りとり、もう片方の手で政府をコントロールしているというものだ」
そしてトゥムルカ部長はこのような「企業の陰謀」を阻止するためには、組織拡大、政治活動の強化、法律・規制面での戦略、労働者・市民の権利や人権を守るための連携強化、そして何よりも連帯が必要であると主張した。
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公正な分配を求めて

建設林業鉱山エネルギー労組(CFMEU)のジョン・メイトランド全国書記は、海運と鉱業の関連性は明らかだが、それだけではなく、グローバルな工業経済においては、資源を採掘、加工、輸送する労働者は社会の富を創出しているのだから、その分け前を十分にもらう資格がある、また、その立場にあると主張した。
世界85カ国、144組織が加盟する国際化学エネルギー鉱山一般労連(ICEM)のギノ・ゴベンダーは鉱業の概況を説明した後、「敵を知れ」と訴えた。現在、鉱業は好景気に沸いており、大手企業の合併による巨大複合企業が誕生している。今こそ労働者は行動を起こし、鉱山の所有者と労働者の間の富の格差を解消すべきだとゴベンダーは述べた。
ITFのフランク・レイ港湾部長は世界四大ターミナルオペレータ−(APモラー、ハッチソン、P&O、PSA)の港湾ターミナルが国際貿易の半分以上を取り扱っている現実に触れ、これらのグローバル企業の力と活動範囲を考え、ITF加盟組織はこれらの企業に関与しながら国際的な最低基準を設立するための戦略を構築していかなければならないと述べた。ITF便宜港湾(POC)キャンペーンはこの重要な問題を扱っている。
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海運労組の連帯

ITFの港湾・船員労組には相互連帯の歴史がある。港湾労組がその影響力を行使して、便宜置籍船(FOC)の乗組員に容認可能な最低賃金・労働条件を確保するためのITF協約の締結を手助けしているのだ。しかし今日、最近制定された新しい国際保安規定を理由に港湾労働者を船から締め出し、ITF協約に違反して船員に荷役をさせている船がある。
レイ部長はITFとICEMの新たなアライアンス(石油・ガス生産と交通運輸の労働者のグローバルな連携)にも触れた。石油輸送に従事する労働者を最もうまく支援できるのは他の輸送モードの労働者ではなく、石油の生産に携わっている労働者である場合が多い。このアライアンスは、生産から最終流通地点までの石油の流れに着目した取り組みだ。
オーストラリアの鉄道路面バス労組(RTBU)のボブ・ハイデン書記長は「生産地から港まで」石油を運ぶRTBUの組合員が鉱業と海運を結ぶ上でいかに重要な役割を果たしているかを説いた。97年に発生した、反労組で有名なオーストラリアのリオ・チント社との争議で、RTBUの鉄道員は同社の炭鉱と港湾を結ぶ列車の運行を一切拒否し、鉱山労働者を勝利へと導いた。同様に、98年のパトリック争議でも、RTBUの組合員は当該港湾への貨物列車の運行を一切行わなかった。RTBUは現在、オーストラリアの他の交通運輸労組と合同で、共通の使用者の強みと弱点を分析したり、オルグ、教宣、ロビー活動、企業キャンペーンなどを展開したりしている。
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港湾保安

2001年の米国同時多発テロ後、国際海事機関(IMO)で「船舶及び港湾施設の保安に関する国際規則(ISPSコード)」が採択された。その目的はテロから海運を守るためとされている。この規則の実施に関しては、各国の労働組合が労働者の権利を守るために政府との交渉を続けているが、その成果もさまざまであり、実施内容も国により異なる。
オーストラリアのITFコーディネーター、ディーン・サマーズは会議中に開催された海運ワークショップで、MUAがいかにしてこの規則の問題部分を阻止したかを報告した。MUAの運動の甲斐あって、オーストラリアでは、新しく導入される交運労働者用のIDカードに政府および使用者が望んでいた電子情報機能は搭載されず、簡単なプラスチック製の写真付きカードにとどまることとなった。犯罪履歴調査もテロ関連の犯罪に限定されることとなった。
一方、カナダの海運労組(ILWUを含む)は未だに導入が検討されている厳重な保安措置に抵抗している。例えば、権利侵害につながるような詳細な身元調査が提案されているが、この身元調査の結果、「正当な疑い」という、やや主観的な要件が成立すれば、ベテランの港湾労働者でさえ港湾への立ち入りを禁じられたり、解雇されたりする可能性がある。
ILWUのマイク・ミトレ港湾保安部長は、米国では労働者を管理し、組合を弱体化させるための「交通運輸労働者身分証明書(TWIC)」等の保安措置ばかりが議論されて、真の港湾保安対策がないがしろにされていると報告した。新保安措置の中で最も問題が大きいのが犯罪履歴調査の部分だ。ILWUは影響を最小限にとどめるため、議会に働きかけを行ってきた。この犯罪歴調査に関しては、今や使用者側も、しっかりと訓練された生産性の高い労働力にマイナスの影響が出かねないと懸念を募らせている。また、ブッシュ政権もTWICの早期導入を望んでいるため、ILWUがかねてから要求していた調査対象の縮小や不服申し立て制度の確立が実現するかもしれない。
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組合権・人権の侵害

ビルマ軍事政権の非道
会議中にロンドンのITF本部からフランク・レイ港湾部長に電話がかかってきた。ビルマ船員組合(SUB)のオルガナイザー、コー・モー・ナウンが当局に殺害されたという連絡だった。ナウンは数日前に軍に逮捕されて以来、拷問を受けていた。ビルマ人漁船員や移民労働者のオルグ活動に従事していたため、軍から報復を受けたのだ。
ITFはビルマ軍事政権を政治的、商業的に孤立させるよう、国際労働界や財界に訴えてきた。第2回海運・炭鉱労組会議の参加者もこの会議をナウンの追悼に捧げることを決めた。

チリ政府の反労組戦術
6千人の組合員を擁する港湾労組のジョージ・シルビア・ベロン委員長が2004年10月5日に開始したストについて報告した。このストは日給29ドルから32ドルへの賃上げを要求するものだったが、軍や警察の攻撃を受けた。ベロン委員長は特に標的にされ、頭を殴打され、出血多量であわや命を落とすところだった。
ストが始まってから20日後に組合は要求を勝ち取ることができた。しかし今、組合は使用者側から損害賠償を求める裁判を起こされているだけでなく、ベロン委員長は港湾の作業停止を主導した容疑で起訴されている。有罪となれば、懲役5年の刑に服することになるが、彼を裁くのは裁判官ではなく、海軍の司令官だ。
事態の深刻さを理解した第2回海運・炭鉱労組会議の参加者は、参加者から6千ドルを募り、ベロン委員長の法廷闘争費用として寄付することを決めた。

オーストラリアの反労組、超保守政権
オーストラリアの参加者は帰国後に彼らを待ち受けている新たな危機に警戒を募らせていた。最近の選挙で、ジョン・ハワード首相率いる超保守的な「自由」党が上下両院で過半数の議席を獲得したためだ。新政権は既に労働法制の「改革」を表明している。CFMEUのメイトランド全国書記はこれを「労働者の権利に対する、オーストラリア史上最悪の攻撃」と批判した。
労働法が改悪されれば、使用者は団体協約の代わりに「個人契約」を締結できるようになる。また、不当解雇法が廃止されれば、労働者は上司の言うことを聞くか、解雇されるかの二者択一を迫られるようになる。この他にも、最低賃金の引き下げや、時間外労働や変則勤務を拒否する権利も廃止されようとしている。
そこで、第2回海運・炭鉱労組会議の参加者は、オーストラリアの労働組合がハワード政権のこれらの攻撃を撃退するために、できる限りの支援を約束する決議を採択した。
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港湾の力

ILWUのピーター・オルニー組織部長は港湾荷役のチェーンに沿ったオルグ活動に関するプレゼンテーションの中で、ILWUの最近のオルグ活動−ノーザンカリフォルニアにあるブルーダイヤモンド社のアーモンド加工工場のオルグ−を例に、港湾のもつ力を労働者のために利用することを訴えた。
アーモンドはカリフォルニア州最大の輸出農産物で、ブルーダイヤモンドは最大手の加工会社だ。同社の製品の7割は世界各国に輸出されている。過日、社員600人以上が賃金・労働条件と安全衛生の向上を求めて組織化を開始すると、会社は直ちに強烈な反労組運動を展開した。
社員の集会に駆けつけた組合は、ブルーダイヤモンドの最高責任経営者(CEO)宛の書簡に署名し、団結権を尊重し、社員の要求に応じるように要請した。「貴殿が反労組の姿勢をとり続けるならば、貴社の社員に正義をもたらすために、合法的権利の範囲内であらゆる手段をつくしてILWUを支援する」と通告した。
第2回海運・炭鉱労組会議の最終日には、組合指導者と一般活動家のネットワークの構築を謳う決議が全会一致で採択された。この「ロングビーチ宣言」は、ネットワークの参加組合に影響が及ぶ政治紛争や労働争議が発生した場合はグローバルな対応を迅速に行うこと、組織化運動の標的とする企業を特定することを約束するものである。
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スティ−ブ・スタローンは北米国際港湾倉庫労働組合(ILWU)のコミュニケーション部長。ILWUの機関誌「ディスパッチャー」の編集長も務める。
ロングビーチ宣言

目標の概要

1) 政治紛争や労働争議にグローバルかつ迅速に対応するためにコミュニケーション・ネットワークを構築する
2) ネットワーク指導部を設立する
3) 全労働者の国際連帯の重要性に関する教育プログラムを共同で開発する
4) キャンペーンやコミュニティー行動における女性の参加を増やす
5) キャンペーンやコミュニティー行動におけるOBの参加を増やす
6) キャンペーンやコミュニティー行動における若年層の参加を増やす
7) 多国籍企業に組合認知を求めるグローバルなキャンペーンの実行力を高める
8) 組合認知を求めるグローバルなキャンペーンの標的となる多国籍企業を特定する
9) 組合の団結を強化するための国際行動日を設定する
10) 各国、各地域のオルグネットワークを構築する
11) 各国のナショナルセンターや国際産別組織(GUF)と協力する
12) 2007年に会議を開き、これまでの活動の見直しと強化を行う

2005年5月
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サプライチェーンにおける連帯
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