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2005年10〜12月 第21号
■ザンビア バス民営化の後
 
ザンビア バス民営化の後

ザンビアでは、公共交通が民営化された後、地方の輸送サービスは大幅に後退した。一方、都市部では新規雇用が生まれたものの、労働者はほとんど無権利状態だ。ハンフレー・ヌコンデが民営化後の状況を報告する。

ザンビアは1990年代に世界銀行や国際金融機関(IMF)のプログロムを受け入れた途上国の1つだ。これまで国が実施してきた事業を民間にまかせることで、国民に富をもたらすことが狙いだった。
道路旅客輸送の場合、政府の社会的義務が民間に移されたことで、地方におけるサービスレベルと質の大幅低下、都市部における未組織労働者の急増という2つの結果が生じた。
民営化でザンビアユナイテッドバス(UBZ)やムルングシ・トラベラーズをはじめとする国営・準国営のバス会社が閉鎖され、UBZだけでも1,500人以上が職を失った。この他にも、道路輸送会社、ザンビア鉄道、ザンビアエアウェーズなどが民営化され、何千人もの雇用が奪われた。
民営化のプロセスが始まったのは、91年の大統領選挙および議会選挙でフレデリック・チルバの複数政党制民主主義運動(MMD)がケネス・カウンダの統一国民独立党(UNIP)を破り、政権の座に就いてからだ。チルバ政権の誕生後、すぐに小型バスの輸入税が廃止され、都市部の道路は小型バスであふれるようになった。
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打撃を受けた道路輸送部門

今日、地方の住民は旅客輸送にはふさわしくないトラックなどをバスの代わりに利用せざるを得なくなっている。地方における信頼性のある輸送手段の不足は、今年4月に悲劇となって現れた。ルアプラ州のカワンバ高校の生徒44人が交通事故で死亡したのだ。事故を起こした三菱のトラックには春休みで帰郷する学生110人がすし詰め状態で乗車していた。
カウンダ政権時代にはトラックが学生を輸送することは認められていなかった。地方においても、都市部においても、公共交通輸送はUBZが担っていたからだ。
児童支援団体「弱い子供たちを擁護するプロジェクト(VCAP)」のジョン・ダカ事務局長は、民営化の枠外として、地方住民のためにUBZを残しておくべきだったと主張する。「政府は地方のサービスを民間部門にまかせるべきではなかった。民間の事業運営は採算性ベースで決定されるからだ」とダカ事務局長は言う。
UBZが赤字運営だったことは確かだ。実際、運転手、車掌、検査係の中には全く仕事がない者もいた。彼らの多くが政治的懐柔策の一環として雇用されていたからだ。カウンダ政権時代の準国営企業は政治的決定と経営上の決定に明確な線引きをしていなかった。
しかし民営化でUBZがなくなったら地方はどうなるのか?この問題を検討しようとする人は誰もいなかった。地方に存在する数少ない運送業者にバス車両を購入するだけの資金力はなかった。ホコリとタールにまみれた穴だらけの道路がほとんどの地方では、現在、牛車が基本的な輸送手段となっている。
「政府は地方住民に輸送手段を提供する社会的義務を有している。そしてこの義務は国営企業でも果たせるはずだ。ヌドラ(「産銅地帯」の中心都市)−サムファ(ルアプラ州の農漁村)間を運行するザンビア郵便のポストバスは質の高いサービスで利益を上げているではないか」とVCAPのダカ事務局長は主張する。
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増える仕事、減る権利

都市部では民営化後、道路旅客輸送に従事する労働者の数は増えているが、これらのほとんどが未組織で、労働者としての権利をほとんど享受していない。
ジンバブエ労働組合会議(ZCTU)は、民営化後に最も労働力が増えている道路輸送部門の組織化を認めてくれるよう、現在政府と交渉中だ。労働社会省に提案文書も提出したが、政府は消極的なままだ。
労働組合が存在しない中で、これらの労働者は劣悪な労働条件で働かされている。「旅客輸送の労働者は早朝から深夜まで長時間働いている。会社側は彼らをいつでも解雇できる状況にある」とZCTUのシルベスター・テンポは言う。
「産銅地帯」の町、ルアンシャとチンゴラで実施された調査によると、バスの運転手と車掌には公正な賃金体系がなく、彼らは年金にも加入していない。
「会社から毎日の売り上げ目標を課せられている。もし目標を達成できなければ減給となる。だから朝早く起きて、夜遅くまで働くのだ。組合があれば、このような労働条件で働かなくてもよいだろう」とチンゴラの運転手は語る。
UBZ時代、車掌は正規の職員だったが、今は会社に名前すら把握されていない存在だ。運転手が車掌を雇い、不特定の手数料を一日の終わりに支払っている現状が先の調査で分かった。
「車掌はリスクが高い。私の仲間は仕事中に事故に遭ったが、バスのオーナーが彼のことを知らなかったため、一銭ももらえなかった」とある若手の車掌は語る。
これらの若手労働者は彼らの利益を代弁する組合が誕生し、しっかりした労働基準が設立されることに望みをかけている。しかし問題は賃金と労働条件だけではない。安全衛生や雇用に関する基本的権利も守られなければならない。
HIV-エイズの感染率が20%にも達するザンビアでは最近、政府がHIV-エイズ患者に抗レトロウィルス薬を配布することを決めた。しかし、運転手は医療保険に何ら加入していないため、カウンセリングやHIV検査を自費で負担しなければならない。
「病気になったら友達からお金を借りるしかない」とある運転手は言う。病院に行きたがらない者もいる。病気が判明したら、解雇されてしまうからだ。
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ハンフレー・ヌコンデはフリーのジャーナリストでザンビア通信協会のメンバー。
 
 
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