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グローバルユニオン

No.18/2004
■コメント
 
非難を浴びる便宜置籍船
ITF書記長・デービッド・コックロフト


今、便宜置籍船(FOC)制度は、過去50年間でも最大規模の非難の的となっている。この現状は何よりも、FOC制度のもとに、責任の所在が企業秘密のベールに秘匿され、殆どの場合に不明であり、そのため、船体の安全基準や賃金・労働条件の最低基準への違反が放置されている状況を改善するため、ITFが長期にわたって推進してきたFOC制度反対キャンペーンの成果であると喜びたい。
諸国政府がFOC制度に関するITFの主張に以前よりも大きな関心を持つようになったとはいえ、このような諸国政府の態度を大幅に変更させた理由は、犯罪者やテロリストがFOC制度を悪用することが極めて容易であるからだ。
米国を始めとする先進国は、船舶の所有者を秘匿することができるFOC制度が、テロリスト、麻薬密売業者あるいは不正資金の浄化業者などにとって、極めて有効であることを実感している。
昨年のシーフェアラーズ・ブルテンに大きく取り上げられたエリカ号及びプレスティージ号による海洋汚染災害は、船舶基準に関する有効な管理が欠落している現状を,白日の下にさらして見せたのであった。ITFはグリーンピースやWWF(世界自然保護基金)を含む環境保護団体と連携して、各国政府に措置をとるよう要請した。彼らが共同の措置を策定することができなければ、沿岸国政府あるいは地域政府グループは、自国国民や自国の海岸線を保護するために、それぞれの関連法規を強制的に適用するであろう。このような事態は、船員を含む海運産業関係者に有益なものではあり得ない。
このような圧力のもとに、船舶所有者と船舶の間の「真正な関係」の必要性について国連は率直な議論を進めている。そしてこの「真正な関係」は、ITFが長期間のキャンペーンにおいて一貫して求めてきたものである。
OECD(経済協力開発機構)はさらに一歩進めて、FOC船舶の受益船主が容易に特定できない場合には、関係国政府はそのFOC国籍船の入港を拒否することができるとの警告を行った。
最悪のFOC船舶所有者について、OECDの協議資料は次のように述べている。「彼らの船舶は規準以下である。すなわち当該船舶の物理的状態、運航条件あるいは乗組員の活動条件などから見て、それらの船舶は耐航性の基準を満たさず、国際基準や規則に違反しており、生命及び自然環境への脅威となるものである」。これこそITFが明確に声を高くして主張してきたところであり、ITFは全面的に賛成である。
船員のためにも、海運産業のためにも、FOCは最悪の存在であると主張することに夢中になって、忘れてはならないことは、一部の自国籍船にも劣悪な船舶所有者と甚だしい低基準船が見られることである。不正な船舶所有者は、あらゆる法律の抜け穴を利用して、常に経費を削減しようとしているのである。
このような船員の生命と海洋環境に対する傲慢な態度の生み出す必然的な結果から、世界の船舶乗組員を守るための活動の継続が必要となる所以がここにある。
ITFの行動週間やITFインスペクターの活動の強化を通じて、今も多くの船員が船主によって遺棄され、何ヶ月も継続して賃金を支給されず、十分な食料も清潔な飲料水も与えられず放置されるのを目の当たりにしてきた。悪徳船主は、FOCからFOCへと渡り歩き、有効なポートステート・コントロール(PSC)や船体の安全検査を回避しながら、船舶が運航不可能な状態になるまで酷使を重ねるため、船舶を解体してもその屑鉄としての価格は、乗組員の未払い賃金の支払いにも足らないことが多い。かくして乗組員はそのまま放置され、港湾への諸経費も未払いとなり、欧州、日本あるいは北米のどこかにある受益船主企業の前に、複雑な書類手続きを辿ってきた債権者の長い列ができるのである。
このような法律、規則あるいは労働協約などの犯罪的な回避や違反に、ITFは、船員労組と港湾労組のユニークな協力関係をもとに、反撃を加えている。ITFのインスペクター組織は、2002年度に未払い賃金3200万米ドルの回収に成功した。これは船員とその家族に支払われるべき金額である。
これまで以上に多くの便宜置籍船(FOC)、現時点では6500隻を超えるFOC船にITF承認労働協約が適用されている。このことは、一定程度以上の生活水準を保障されている船員が、16万5千人以上に達していることを意味している。
ITFとFOCを利用する責任ある船主が参加している国際交渉業議会(IBF)における論議を通じて策定される新たな労働協約の適用を受けることとなる約5万人の船員は、一層大きな保障を受けるであろう。
最高レベルにおける政治活動と、個々の労働者の諸条件を保護するための産別レベルのキャンペーンとの連携によって、運輸労働者のための前進が達成されることを、ITFは示してきた。また、基準の切り下げによって経費の削減を図る連中を海上から追放するという共通の目的については、公正な賃金と適正な労働条件を標榜する船主とITFは、利害を共有している。
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「船舶所有者と船舶のあいだの「真正な関係」の必要性について国連は率直な議論を進めている。そしてこの「真正な関係」は、ITFが長期間のキャンペーンにおいて一貫して求めてきたものである」
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