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No.18/2004 |
■港湾調査 |
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船員厚生施設不在の驚くべき実態が明らかに
世界の主要港湾には、入港する船舶に乗組む数万人に及ぶ外国人船員のための、最も基本的な厚生施設が欠落している。くつろいで休養したり、通貨を両替したり、町へ出るための安全な手段が船員に供与されていない。必要なときに助けを呼ぶべき相手もいない。
船員たちがレクリエーションのために港を離れると、強盗や暴漢に襲われる危険性が増大する。遠隔地に建設された新しい港湾に仕事を奪われた古い港湾地域では、失業と貧困による犯罪が増加しているためだ。ITF船員トラストの委嘱による調査の対象となった28港湾の中で安全と思われる港湾は、ほんの一部に過ぎず、大多数の港湾では、各種の危険があるため、自由な移動は事実上不可能であった。船員トラストは、主要港湾である上海、モンテビデオ、イスタンブール、コーチンを含む136港湾を「問題港湾」として当初確認していたが、これら港湾の「施設不在の驚くべき実態」が明らかとなった。ドイツ企業の総合サービス社は、一般港湾リストに記載されている28港湾を訪問して、各種サービスを確認するよう委嘱されていた。
総合サービス社によって明らかになったのは、質問書による最初の調査から予想された結果よりも遥かに劣悪な実態であった。港湾28ヵ所のうち21港湾には、外国人船員のための厚生施設が存在しなかった。定期的な訪船サービスが、コーチン港のみで行われていた。そのほか6港湾は、援助を求める船員からの訪船要請が時々あると報告していた。厚生施設不足港湾に分類された11港湾は、アデン、カヤオ、コーチン、ダカール、グアヤキール、イズミール、カラチ、モンテビデオ、ポートケラン、ポートスーダン、上海である。
厚生施設不在港湾に分類されたのは以下の14港湾である。アルジェ、ハバナ、ホーチミン、イロイロ、イスタンブール、ジェベルダンナ、キングファハド・ポート、マスカット、寧波(ニンボ)、パナマ、パラマリボ、ポート・ジョホール、プエルト・リモン、シュアイバ。
ITF船員トラストは、この調査結果が「船員ミッション」や「海の使徒」などの歴史と伝統を持つ船員厚生組織によって活用されるよう希望している。
公的施設の不在が、何らの厚生施設も存在しないことを意味するわけではない。例えば、南アメリカやイスタンブールにおいては、ITF加盟組合が、外国人船員のために最善のサービスを提供している。ITF加盟組合は、南米ではウルグアイ、ペルー、エクアドル、中米ではパナマ、コスタリカ、アジアではインド、パキスタン、フィリピン及びトルコなどで活動している。他に手段がない場合には、たとえ組合自身が重大な問題に直面することとなっても、ITF加盟組合が乗組員に援助の手をさしのべるであろう。調査の対象となった中国の港湾においては、船員の厚生に関する責任の一部を、船舶代理店が担っている。
船員厚生施設のない港湾の一部では、地域の教会と関係のある慈善団体や社会運動組織が活動している場合もあることに、留意すべきであろう。とはいえ、業務上の指導や財政上の援助なくしては、彼らが何かを始めるのは困難である。船員トラストの報告書は、その他の港湾においては、政府の許可が得られないため、船員厚生サービスの提供が可能となる見込みはないと指摘している。マレーシア、クエート、スーダンなどのイスラム諸国では、キリスト教系団体による活動が認められない。これは中国やベトナムでも同様である。
船員福祉施設の供与が困難な理由として、一般的に社会的、経済的な地盤沈下が挙げられることが多い。「訪問した諸国の大多数における貧困化の進行が、船員福祉団体、とりわけ地域の教会の活動に関して、経済的・人材的な援助の確保を一層困難にしていた」と船員トラストの報告書は以下のように述べている。「歴史的に国内の代表的な重要港湾と見られてきた港湾、例えばアルゼンチンのブエノスアイレス、マレーシアのポートケラン、エクアドルのグアヤキールなどは、過去十数年のあいだに、国際港湾あるいは国内港湾としての重要性を失ってしまった。しかし、同じ国内でも以前は国際的な知名度の低かった小さな港湾が、今では重要な港湾に成長している。この理由は、喫水が10メートルから14メートルに及ぶパナマックス型またはポスト・パナマックス型のコンテナ船を受け入れるために港を拡張する余地が、古い港湾にはないためである」。
新しい港湾や一部の産業は、そこを通過していく人間という貨物の必要とする基本的事項などには、無関心である。コンテナや石油のターミナルは、通常市街地から遠く離れた地域に位置している。そのため、船員たちが市街地に行くことは不可能なことが多い。産油国の石油積出し港では、伝統的な福祉機構が許可されない。また、保安上の理由、短い入港期間、出入港手続きなどの理由によって、船員の上陸は禁止されている。
ブエノスアイレス港の取り扱い貨物の約80%は、新しい港湾のロサリオやサンロレンソに移ってしまったが、これらの新港には外国船員が利用できる施設が存在しない。新しい環境に投げ込まれた外国船員は、行くところもなく、相談する相手もいないのである。 |
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「新しい港湾や一部産業は、そこを通過していく人間という貨物の必要とする基本的事項などには無関心である」 |
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ILO勧告
国際労働機関(ILO)は、加盟170カ国に対し、外国人船員に提供すべき福祉業務について、拘束力を持った規則および勧告を発布している。
ILO船員福祉条約(第163号)と船員福祉勧告(第173号)は1987年に採択されたが、遺憾なことに、ILO加盟13カ国による批准しか得られていない。
福祉施設の種類や提供の方法に関するガイドラインが、船員福祉国際委員会(ICSW)によって起草されているが、このガイドラインには以下のように述べられている。
● 港湾福祉サービスは、この種のサービスを提供する、またはサービスの提供とその運営に関連する各種団体(船主団体、船員組織、ボランティア組織など)によって構成される港湾、地域または国内船員福祉委員会によって統合・調整(コーディネート)されるべきである。
● 船員福祉サービスの提供に向けた財政支援措置は、公的資金、税金、港湾料金あるいは自発的拠出金などを財源とすることができる。ただし、調達された資金は、福祉目的のみに利用するものとすべきである。
● 提供される福祉サービスは、レクリエーション・ルーム、ホステル、スポーツ施設、教育施設、個人カウンセリング、宗教行事などを含むものとすべきである。また、適切な場合には、用意された施設を陸上労働者も利用できるものとする。
● 外国港湾を訪問する船員に対し、利用可能な福祉施設、医療施設および船員が特に注意すべき危険または疾病に関する情報を提供すべきである。
● 帰国のために待機中の遺棄または抑留された船員のための実際的援助が供与されるべきである。また、帰国が遅延した場合には、船籍国の関係当局に対し、直ちに通報すべきである。
● 船内に準備される一連の福祉・レクリエーション施設は、実行可能である限りにおいて、テレビ、ビデオ、スポーツ用具、図書室などを含むべきである。
● 船員が妥当な費用負担によって利用できる船舶から陸上への電話を設置すべきである。また、船員の郵便物は可能なかぎり迅速な方法で発送されるべきである。
● 上陸休暇は、入港後できるだけ速やかに許可されるべきである。また、港湾地域からの出入りのための適切な交通手段を供与すべきである。入港中における船員家族による船員との面会訪問は、可能なかぎり許可されるべきである。また、船員の配偶者が一定の航海に時折乗船できるよう配慮すべきである。
● 船員がその賃金を、家族あてに定期的に送金するためのシステムを設置すべきである。船員福祉サービスの設置と運営に関するガイドラインの全文は、船員福祉国際委員会(ICSW)のウェブサイトからダウンロードすることができます。アドレスは次の通り; ( www.seafarerswelfare.
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主な調査結果:
福祉不足港湾:アデン、カヤオ、コーチン、ダカール、グアヤキール、イズミール、カラチ、モンテビデオ、ポートケラン、上海。
福祉不在港湾:アルジェ、ハバナ、ホーチミン、イロイロ、イスタンブール、ジェベルダンナ、キングファハド・ポート、マスカット、寧波(ニンボ)、パナマ、パラマリボ、ポート・ジョホール、プエルト・リモン、シュアイバ。
総合サービス社の調査を拒否した港:キングファハド港(サウジアラビア)、アルジェ港(アルジェリア)。
現地ITF加盟組合が船員に援助を提供した港:カヤオ、グアヤキール、パナマ、プエルト・リモン。
貧弱な福祉業務を改善するための財政的支援が必要な港湾:モンテビデオ、ダカール、コーチン、カラチ、アデン、ハバナ、イロイロ。
政府が福祉組織の活動を許可しない港湾:ポート・ジョホール、ジェベルダンナ、シュアイバ、ホーチミン、ポート・スーダン、マスカット、寧波(ニンボ)、上海。
港湾の社会的・経済的衰退のために外国船員に対する強盗・襲撃の危険が増大している港湾:イロイロ、コーチン、カラチ、カヤオ、ダカール、グアヤキール、パナマの全港湾。
船員襲撃事件が増加している港湾:トルコの港湾、モンテビデオ、プエルト・リモン、上海。
船員にとって安全な港湾:マレーシアの港湾、マスカット、ポート・スーダン、アデン、ハバナ。 |
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