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2010年01〜03月 第38号 |
■分析 |
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分析:経済危機、産業界の視点から
ノートン・ローズ法律事務所(ロンドン)のゴールドン・ホール、アミー・リンドマン両氏「交通運輸業界、不況脱却のための成長分野」
国際法律事務所ノートン・ローズが実施した新しい調査を見て、交通運輸労働者は幾分勇気づけられるのではないか。同事務所が昨年後半に実施した交通運輸産業の短・中期景況感調査(「The way ahead forTransport」(交通運輸業界の見通し))に、航空、鉄道、海運部門から900社が回答した。
同調査によると、鉄道業界は他の交通運輸業界より、景気後退の影響が受けにくいことが明らかとなった。これは驚くに当たらない。なぜなら鉄道業界へは政府からの支援が厚く、乗客数も安定しているからだ。鉄道経営が民営化されたり、フランチャイズ化されたりしても、重要な財政支援である国からの資金提供は維持されている。
一方、海運や航空関連企業は、それほど楽観的にはなれない。世界貿易の縮小と銀行融資の減少は、海運業、とりわけコンテナやドライバルク部門を直撃した。航空業界は、燃料コストの上昇・変動、テロ、炭素ガス規制、豪華旅行客や観光客の減少などの問題に直面している。調査の回答者の38パーセントが、景気の回復を実感するまでに2―3年はかかると見ている。 |
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適者生存
海運・航空業界の回答者のおよそ半数が、会社の「中核部分以外の資産」を処分するだろうと答えている。海運業界では、好況時に発注された多数の船舶が、景気低迷期に納品時期を迎えることにより引き起こされる、需給のアンバランスを処理する必要がある。海運業界の回答者の実に77パーセントが、企業合併は不可避としている。好況期に高収益を上げた強い企業は、高値で船舶を買い上げた弱い企業を買収先として狙うだろう。
合弁事業の展開が予想される航空業界も同様である。同業界の回答者の約60パーセントが、自分の会社は向こう1年―1年半の間に戦略的パートナーと業務提携や企業連合の締結を考えている、と見ている。海運・航空両業界では合併のために、失業が増える公算が大きいが、海外部門の打撃は最も小さい、と同調査は予測している。
鉄道業界は順調といえるが、危機の影響が全くないとは言えない。世界貿易の縮小と原料需要の冷え込みは、鉄道貨物輸送に顕著な影響をもたらしている。同部門にとって、石炭輸送は特に重要だが、乗客輸送に比べ、貨物輸送の占める割合は比較的小さい。
鉄道部門の回答者の大部分は、2009年の乗客数が減少すると見ているが、深刻な落ち込みはないと予想した。鉄道部門の回答者(654人)のうち、56パーセントが、乗客減少率については5パーセント未満としている。鉄道は、大量の通勤・通学者にとって重要な交通手段であり、主要な雇用者でもあることから、ほとんどの国にとって不可欠な産業である。しかし、国家財政引き締め・赤字削減の圧力がインフラ設備などの公共投資事業計画中止に至るのではという懸念はある。鉄道部門の回答者のほぼ40パーセントは、鉄道インフラへの投資は縮小すると見ているが、一ノートン・ローズ法律事務所(ロンドン)のゴールドン・ホール、アミー・リンドマン両氏「交通運輸業界、不況脱却のための成長分野」方、43パーセントの回答者は、特に将来の経済成長に必要とされる高速鉄道への投資は増加すると予想している。 |
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立地
調査で意見が一致したのは、景気後退から最も早く回復するのは東南アジアの輸送市場で、僅差で中東、インドが続くという見方である。
内需の増大と景気刺激策が中国の成長をけん引し、中国政府は鉄道整備に6億ドル投資している。
鉄道が通勤の主要な交通機関となっている国の鉄道会社は成功する。
どの景気後退局面でも、勝者と敗者がいる。すべての交通運輸部門のプレーヤーは、生き残るために機転を利かさなければならない。 |
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ゴードン・ホールは、ノートン・ローズ法律事務所のロンドン・バンキング・パートナー。
アミー・リンドマンは、ロンドン・バンキング・アソシエイツ。 |
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