2010年01〜03月 第38号 |
■ITFサマースクール |
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サマースクールの成功
結束は力
労組活動は、時に非常な困難を伴う。だからこそ、互いの知識や経験を共有することが重要なのだ。
ITFのサマースクールは、国境をまたぐ共通の問題について解決策を見つけ出すためのツールの一つである。2009年には、23カ国・31労組を代表する35人の参加者が、英国で実施されたサマースクールに参加した。
プログラムのテーマは、交通運輸業界のリストラが労組に及ぼす影響と、ITFのグローバルな組織化プログラムとの連携である。多くの労組が、民営化や自由化、労働者のリストラを通じて新自由主義的な政策の影響を経験している。サマースクールの目的は、労組の連帯を強化することによって、これらの課題に一致団結して当たることである。
サマースクールでは、実際的なケーススタディを検討することによって、キャンペーン、組織活動、コミュニケーションスキルを磨く。例えば、英労組「ユナイト」のオルガナイザーは、イングランド北部の自営タクシードライバーをどうやって組織化したかについて説明した。地元の自治体は、認可タクシーの上限撤廃を提案した。これは、十分な需要がない市場に、新規のドライバーがあふれる可能性を意味する。「ユナイト」は、この問題について組織化活動を実施し、ドライバーが自らのメッセージを伝えるために、タクシーで道路を封鎖してデモ活動を行うという直接行動に出た。
サマースクールに出席した組合員は、多種多様な環境で活動をしている。しかし、参加者は、お互いの共通点も見い出している。それは、正社員のパートタイムへの切り替え、外部委託、若年層の組織化の難しさなどである。
組合員の減少は一般的な趨勢だが、労組の力が強化されている地域も少なからずある。また、自営の交通運輸労働者を組織化すべきかどうかという問題も、熱く議論された。利益相反になると主張する者もいれば、新規の組合員は歓迎すべきとする者もいた。
サマースクールの参加者は、異なる国や地域、業種、活動内容、労組沿革を背景としている。多様な政治的、組織的、文化的経験をお互いに分かち合うことは、正式な教科カリキュラムと同様に、非常に貴重な学習経験となる。
ITFのアラーナ・ディブ教育部長は、「ITFのサマースクールは、参加者がお互いの経験から学び、自らの労組活動に新たなスキルと発想で取り組むことを援助する。各参加者は、多種多様な環境で活動をしているが、組織化に伴う課題は世界共通である。だからこそ、ITFは、このように労組の活動家達を一堂に集め、サポートしあう機会を設けている。世界中の労組が互いの経験を語り合い、絆を育んでいけば、素晴らしい成果につながる」と説明した。
ITFのサマースクールは、フリードリヒ・エーベルト財団(FES)から助成金を受けている。2009年、英国とアイルランドの加盟組織も、多額の寄付金を提供した。次回のITFサマースクールは、2010年末にフランス語で開催予定だ。 |
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ITFサマースクールで役に立ったことは?
オズレン・ケレストルコ統一交通労組(BTS)
私にとってサマースクールで最も重要なことは、ここで経験したことを持ち帰って、実際の労組活動の現場で使えることです。
トルコでは、11月25日のゼネストに向けたキャンペーンが行われていました。サマースクールで学んだことは貴重でした。なぜなら、国際連帯とサポートが得られたからです。それ以来、ITFとETF(欧州運輸労連)とは連絡を取っているので、必要に応じて質問したり、実体験によるアドバイスをしてもらったりしています。サマースクールに参加することによって、一国レベルの闘争をグローバル化する方法を見つける機会を得ることができます。
ジュリアン・ハンテバルバドス労組(BWU)
たくさんの国々の労組の仲間と会い、協力し、友人になる機会を得られるという点で、ITFサマースクールでの経験に勝るものはありません。
社会正義実現のための闘争における各自の課題や対応、成功、混乱について突っ込んで話し合い、繁栄に対する脅威は、いずれも同じであるという原則が確認できたことは、非常に重要でした。いろいろな経歴の人たちが集まっていることも、お互いを分かつより、結束させる要因の方が多いことを示しています。
私は毎日のようにITFの「ツールキット」を引用し、戦略的立案や任務の委任を通して他者に権限を与えること、一致団結による問題克服への信念について、教訓を実践しています。 |
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サマースクール、開講10年で60カ国から400労組活動家
サマースクール開講以来、10年間に、60カ国から400人を超える労組活動家がITFのサマースクールに参加した。このスクールは、労組のリーダーや活動家を対象に、交通運輸労組の国際的視点を強化することを目的としている。ITFは、過去10年間の参加者に、サマースクールについて意見を聞いた。以下は、回答の一例である。
「参加したことで、知識と実際的なツールが身についた。他の組合員との結び付きも強くなり、友情も生まれた。労組が、より強力になった。ありがとう」
「素晴らしい環境で、モチベーションが高い仲間を集め、質の高い訓練を提供してくれた。国際的な労組の活動は、研修と意識改革で始まる」
「労働者は、自分が取り組んでいることを共有することができる。置かれている状況はそれぞれ違うが、抱えている問題はほとんど同じだ。サマースクールに参加して、多くを学んだ」 |
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サイモン・ウェラー英国、鉄道運転士労働組合(ASLEF)
今年のITFサマースクールの開催場所となったのは、荘厳な旧邸宅で威圧感があったが、英国の田園風景での中でのどかだった。サマースクールには、全ての大陸の労組活動家と幹部が多数、集まった。
効率的な組織化活動とキャンペーン戦略を重点的に学ぶ、重要な教育の場であった。もう一つ、私にとって重要なことがある。我々は、ともすれば、教育と組織化活動の区別をあいまいにしてしまうが、両者は全く違う分野なので、それを踏まえて取り組むべきだ。
自信を高め、キャンペーンへの戦略的アプローチを強化すること以外に、サマースクールで得た個人的な収穫は、一言で言うと理解が深まったということだ。理解は、世界中の労組活動家と協力し、共通の目標を持つことによって得られるものだ。ここで出会った人の中には、もう2度と会えない人もいるかもしれないが、その人たちから得た友情や知識は永遠に自分の一部となるだろう。参加できて光栄だった。 |
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労組、2009年
以下は、2009年のITFサマースクールに参加者を派遣した労組である。ITFロンドン、アジア・太平洋、リオ、東京の各事務所からも参加した。
英国専門職国家公務員組合(Prospect)
ネパール独立交通運輸労組(ITWA)
インド・チェンナイ南部鉄道マズドゥール組合(SRMUC)
コスタリカ開発港湾管理委員会従業員持株組合(STJ)
全日本海員組合(JSU)
ウクライナ海洋労組連合(UMTUF)
ケニア航空労働組合連合会(AAWU)
英国/オランダ・ノーチラスインターナショナル
英国ユナイト労組(交通セクション)
スウェーデン・サービス及びコミュニケーション従業員のための連合(SEKO)
バルバドス労組
南ア交通運輸連合労組
レバノン船員組合
スウェーデン交通運輸労組
マレーシア航空会社システム従業員組合(MASEU)
トルコ交通運輸労働組合連合(BTS)
インド・ムンバイ交運港湾労組
ヨルダン航空交通運輸・観光一般労組(GTUWATT)
チュニジア全国交通連合会(FNT)
オーストラリア鉄道・軌道・バス労組(RTBU)
ロシア鉄道・輸送・建設労組(TURWTCW)
インド中南部鉄道従業員労組(SCRES)
全インド鉄道労連(NFIR)
ガイアナ事務・商業労組(CCWU)
英国鉄道運転士機関士組合(ASLEF)
オーストリア鉄道労組(VIDA)
インドネシア・ジャカルタ国際コンテナターミナル労組(JICT)
エストニア交通運輸道路労組(ETRWTU)
ウガンダ鉄道労組(URWU) |
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