2010年01〜03月 第38号 |
■都市交通運輸での組織化 |
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都市交通輸送の組織化
ヨハネスブルグの新交通輸送システムには、強い反発もあるが、労組と労働者に明るい未来をもたらす
南ア・ヨハネスブルクの幹線快速バス(BRT)システム、リア・バヤは、より手頃な運賃で、信頼性の高い輸送と適正な賃金の就業機会を提供する。バスシステムは、労働者、乗客双方にとって有利な状況を作り出すようだ。この計画が具体化するに伴い、新たにバスドライバーが採用され、労組が組織化する絶好の機会が生まれた。
残念ながら、交通輸送労働者は、本プロジェクト反対派の矢面に立っている。一部の個人タクシー組合は、この新しい輸送システムに反対している。タクシー事業者は、今後も路線に関与し続けるが、これまで以上に拡大した役割や利益を獲得しようと期待している組合もある。地元の報道によると、ドライバーと乗客の双方から負傷者が出た発砲事件など、BRT導入に関連する暴力事件が多発している。
南ア運輸合同労組(SATAWU)は、新しい輸送システムを最大限に活用することに強い意欲を示している。SATAWUは、長い間、タクシー労働者の組織化に取り組んできており、今後もその方針である。同時に、労組は、タクシードライバーに対して、新しいBRTシステムのバスドライバーの求人に応募するよう、勧奨している。
タクシードライバーは、現在のように臨時労働者として働くより、賃金・就業条件がはるかに良い雇用の機会がある、新しい輸送インフラから大きな恩恵を受けることができる。
SATAWUにとって、新しい輸送システムは、組織化の機会を提供する一方で、公共輸送や組織化に反対する側からの数々の課題に直面することになる。 |
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タクシードライバーの組織化
オウパ・オールドジョンは、SATAWUのタクシードライバー部門の全国議長である。タクシードライバーとして15年の経歴を持っているので、タクシー業界で労働者が経験する問題に精通している。
他のタクシードライバーと同様、オールドジョンは、組織化に賛成しているため、個人タクシーに狙われている。その結果、この2年間、仕事をしていない。オールドジョンがBRTシステムに強い意欲を示し、BRTの仕事に就業させるためにタクシードライバーを雇って訓練するという計画を打ち出したため、彼は、タクシードライバーの暗殺者リストに載せられている。しかし、オールドジョンの労働者としての大義に対する決意は揺るがない。
タクシードライバーの組織化は困難である。労働者は、短期の臨時雇用である場合が多く、組織労働者は個人タクシーから不当に扱われている。労働者に利益となるはずの規則は、執行されていない。
タクシー事業者は、法的義務があるにも拘らず、失業保険の掛け金を支払っていない。その結果、失業したタクシー労働者は、他の労働者が付与される6ヵ月間の失業手当の資格要件を満たすことができないでいる。
多くの使用者は、労働時間・残業・休暇などの規則や業界の最低賃金を、全く無視している。当局による監督・執行は、存在していない。
こういったことが原因で、オウパは、タクシードライバーを新しい仕事に就かせようと熱心に取り組んでいる。BRTでの雇用は、より高い賃金と、より良い労働条件を提供する。 |
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新たな機会
BRT導入に伴い、組織化活動の環境は一変した。新たな仕事は、余剰の個人タクシーやその労働者を業界から撤退させる計画実現の可能性へとつながる。
BRTはすでに、BRTシステムに取って代わられた経路のタクシードライバー(60人)を採用し、バスドライバーとして再訓練している。現在、28台のバスが運行中で、勤務表は、8時間交代で組まれている。かつてタクシードライバーだった労働者も採用され、バスの発車係や監督として勤務している。さらに、約250人の停留所アンバサダー(お客係)、清掃係、警備員、「臨時アルバイトのボランティア」達が働いている。
運行距離120キロメートルをカバーする新しいシステムの第一段階が終了すると、新システムでは143台のバスが運行され、575台のタクシーが置き換えられると見込まれている。第一段階で、約700の正規雇用が創出される。新システムが300キロメートルの幹線ルートまで完全に拡大されると、5,415人が雇用されると試算されている。この推計には、インフラ建設に携わる数千人は含まれていない。
組織化における問題の一つとして、補助要員が短期契約社員として下請業者に雇用されているという状況があるが、SATAWUは、これに立ち向かう構えだ。
ヨハネスブルクの市議会は、新しいバス路線の影響を受けたタクシードライバーを対象に調査を実施した。労組は、同調査に参加するようドライバーに促した。この調査は、自らのスキルレベルや将来の選択肢に適合するために必要な訓練と、タクシー業界に求められる基準の改善について、ドライバーに意見を述べる機会を提供するものである。
ヨハネスブルクにおいて最近実施された会合で、労組幹部は、個人タクシーがBRTシステムに反対しているため、労働者が調査を支持することに恐れを感じていることを知った。しかし、労組のサポートを受け、調査から良い反応が得られることを労働者は期待している。これは、明らかに前進と言える。 |
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将来の公共交通輸送
適正な公共交通輸送は、労働者、乗客双方にとって重要である。ITFが、SATAWUの新交通システムにおける組織化の取り組みを全面的にサポートするゆえんでもある。極めて重要なことは、労組がインフォーマル経済のタクシードライバーと協力しながら公共事業のインフラ整備も支持しているため、ここに至るまでの成功を収めてきたということだ。エディー・ディクソンは、「これら2つの目標は、必ずしも衝突しない」とし、「適正な投資により、労働者と乗客は、正しく機能する公共交通輸送システムを享受できる。強力なSATAWUの指導者は、システム改善のために精力的にキャンペーンを展開しながら、インフォーマル労働者の組織化に的確に焦点を合わせている」と述べた。
労働者を組織化し、明確な政治的要求を策定することが、よりよい未来のための最善の選択肢である。 |
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幹線快速バス(BRT)とは…
幹線快速バス(BRT)は、基本的に、路上をゴムタイヤで走行する安価な地下鉄に代わる輸送システムと言える。
BRTシステムの主な特徴は、鉄道輸送に近いが、車両はゴムタイヤで走行するという点だ。例外を除いて、通常は、道路中央の専用車線を走行する。
チケット「ステーション」には囲いがあるので、乗客はバスの乗り降りがスムーズにでき、時刻表は、混雑していない時間でも、乗客を10−15分以上待たせないように組まれている。
ヨハネスブルクは、南アの8都市の中で、この輸送システムを最初に導入した都市である。リア・バヤと呼ばれるこのプロジェクトは、都市の公共輸送開発というより、大規模な都市計画の一部を成す。
プロジェクトの第一段階は、2013年に終了予定である。南アのシステムは、中南米で成功した類似の計画をベースとしている。ブラジル・クリティバのシステムが、その顕著な例である。クリティバでは、幹線快速バスシステムの導入によって、高い自家用車保有率にも拘わらず、自家用車の使用が激減した。 |
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自分の幸運が信じられない。
新規加入労働者へのインタビュー(聞き手、エディー・ディクソン)
バスドライバー1
名前(匿名希望)
この労働者は、発砲事件のターゲットとなったバスのドライバーだった。事件では誰も起訴されなかったが、個人タクシーは現在、路線の利用者争奪戦を繰り広げており、襲撃の背後にいた、と見られている。
「11年間、タクシードライバーだった。今はバスのドライバーだ。その待遇の違いは信じられないほどだ。タクシードライバーだった頃は長時間勤務で、タクシーのオーナーからは、いつもプレッシャーを受けていた。今は、規則的なシフトで働き、月末には賃金が支払われる。自分の幸運が信じられない」
バスドライバー2
アイザック・ドゥミサニ・シャバララ
タクシー業界で22年間働いた後、BRTシステムに取って代わられたタクシードライバーに提供された、バスドライバーとしての訓練機会を手にした。シャバララは、タクシー業界を離れるとき、何の手当ても補償も支給されなかった。
他のタクシードライバーと同様、シャバララの訓練期間は4週間である(SATAWUは、これでは短すぎると感じている)。彼は現在、BRTドライバーとして、6カ月間の試用期間中である。特別の運転テストに合格し、健康診断を受けなければならなかった。健康診断には、HIV検査も含まれていた。陽性と判明すれば、適切な医療保護の紹介を受けられる。シャバララは、他の交通輸送システムがどのように機能しているかを学ぶため、使用者から外国を訪問する機会が得られるかもしれない、と語った。
シャバララは、「タクシードライバーとして働いていた時より、給料も上がって、とても満足している。このバスを運転できて、心から嬉しく思っている」と述べた。 |
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