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2007年10〜12月 第29号
■持続可能な海
 
欧州は持続可能な海を作り出せるだろうか?

欧州委員会が新たな総合海事政策を討議している中、フィリッペ・アルフォンソライラ・カスタルドが、欧州船員労働力に対する投資の事例をここに示す。

6月末、欧州委員会は、欧州連合(EU)の今後の海事政策に関する1年に及んだ公開諮問期間を終えた。
これまで、この課題について欧州委員会が組織した中で最も幅広いものとなった議論には、何百人もの関係者が参加した。諮問期間中に、われわれの海の今後に関する議論にこれだけ多くが熱心に参加したことは、利害関係者が総合海事政策の行方をいかに重要なものとみなしていたかを示している。
業界団体、産別組合、NGO、政府、政策決定者の、あらゆる地位の人々から、EUと欧州経済水域(EEA)の海に対しては、より包括的でより連携のとれたアプローチが望ましいとの意思表明がなされた。
2007年10月、欧州委員会は、海事政策をより具体的に進展させるため、行動計画を発表した。委員会は、審議の間に示された懸念や要望を考慮し、組み入れていく骨の折れる作業に取りかかる。
ITFの欧州地域組織である欧州運輸労連(ETF)は、包括的文書を提出して、審議過程に貢献した。文書は港湾労働者、船員、水産労働者代表の意見をまとめたものである。
われわれは、欧州委員会が今のところ、社会的・環境的な考慮より、自由競争の重要性を優先していると指摘している。EUの開発計画(リスボン戦略として知られる)は、2000年に開始されたが、「いかなるコストを払ってでも、効率的で競争力を持つことが必要」と言っているかのように見受けられる。
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規制緩和に対する挑戦

海事産業において、人間的要素を顧慮することなく規制緩和や柔軟な措置を認めてしまうと、労働条件や生活条件が悪い影響を受けることになる。ETFは自由な市場を強要し、全ての保護主義的な規制を廃棄すると、EUの海事基準は改悪されてしまうと見ている。
社会的ダンピングと賃金カットは、欧州が維持してきた海事分野の専門性の維持に危機をもたらす。既に10年前に、組合は船員を絶滅危惧種に指定していた。今状況はさらに悪化している。
EUの船員数の深刻な減少、特に下級船員と外航分野の船員の減少に歯止めをかけるために、欧州委員会は本気になって解決策に取り組まなければならない。もしこれを怠れば、EU船は最低賃金より安価な賃金で働く外国人船員に席巻されるか、EU規制や国際規制を回避する目的で、より「便利」な国に船を置籍しようとする海運会社に席巻されることになるだろう。
ETFはEUの船員労働力を維持し、若者が船員としての職業生活を開始するよう奨励していく政策が、欧州委員会の未来への取り組みの中核に据えられなければならないと考える。問題はそれが如何に可能なのかである。
まず、船内の労働環境と生活環境を改善することで、学校を出てすぐの若者に魅力的なキャリアの道筋を指し示し、国籍の如何を問わず全ての船員に対して、十分な社会的保護を保証する法的枠組みを提供することにより、これは進められるだろう。
居住する国の経済力にもとづき賃金を支払うといったEU船員に対する差別をなくすことは可能であるし、他の産業部門には適用されている社会的法制の恩恵に船員も浴することが出来るようにすべきである。
一方で、例えば第三国の国民を雇用して安価な労働力を求めるのではなく、欧州の船籍を維持し、EU船としてEU船員を雇用乗船させる企業に対しては、EUに再置籍したり、その利益をEUに投資したりするための経済的インセンティブが与えられなくてはならない。
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減少傾向に歯止めを

船舶をEUに再置籍し、欧州の海で運航される基準以下船の数を減らすよう奨励していくための国のガイドラインが作られているが、これによっていくらかの前進が見られるようになっている。中でも、船主が人的資源や訓練に投資するよう促す政策は強化される必要がある。
こうした状況下、交通運輸労働者の利益を求める闘いの新たな政策や戦略を作り上げる目的をもって、支部レベル、国レベル、地域レベル、国際的レベルの指導者教育、組合員教育プログラムを進めることが、グローバルな組織化に伴って考えられなければならない。
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調査、キャンペーン、ネットワーク作り、連帯の支援

交通運輸産業の労組が自らの戦略的立場を利用していくためには、情報収集と分析、キャンペーンの実行、ネットワーク作りの過程が絶えず続けられなければならない。この過程が組織化にフィード・インされ、組織化作業をより強化していくためには、労働者や組合員が積極的なかかわりをもつ必要がある。
先週金曜日、ポーランドで開催された船員のビジョンに関する会議の際、ETF海事局の副部長ダイエター・ベンツは「グリーン・ペーパーが成功するためには、EU船員の訓練や雇用の長期にわたる減少傾向に歯止めをかける必要がある」と述べている。
何度も言うように、海事業務に携わる労働者が他の産業部門に雇用される労働者に比べて保護されておらず、船員と海運産業が欧州の社会・労働法制の枠組みから制度的に排除されている実態を終らせるため、闘いを続けなければならないという事態は嘆かわしいと、ETFは考えている(たとえば、‘労働者のポスティング制度’指令は、暗黙のうちに、船員を二流の市民として位置づけている)。
社会的ダンピングが増加しつつある一方で、「欧州間のフェリー業界の労働条件を規制する“配乗指令”が2004年に提案されても合意されなかったことから、何らかの形の管理が従前にもまして緊急に必要とされるようになっている」とETF書記長のエドアルド・チャガスは言う。
それでは、欧州委員会から何を期待すればいいのだろうか?中核的な社会法制度から船員が排除されている事態を是正していくことが望ましいとわれわれは思う。海運業務が拡大し、EU労働力の雇用が促進され維持される一方で、欧州以外の国の乗組員も公正で平等に取り扱われるような政策が進められなければならない。
ETFは、EU船員の雇用が進むよう大規模なキャンペーンを行って欧州議会への陳情を進めている。モットーは、「もっと多くのより良い海の仕事をわれわれに」である。
われわれは、欧州議会議員に対して、EUの海事産業が潜在的にもっている雇用機会増加の可能性をもっとさぐる必要があると訴えている。
ETFキャンペーンでは「便宜置籍について語ることはもう止めよう。‘優良な産業’について語ろう」と謳っている。これが欧州の海の新しい、社会的に持続可能なビジョンを生み出す底力となる原理である。
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フィリッペ・アルフォンソとライラ・カスタルドは、ブリュッセルのETF海事産業部門の指導者である。
 
 
INDEX
自由は実現する
イラン人組合活動家のマンスール・オサンルーが投獄前に語ったこと
持続可能な海
欧州の船員政策
西アフリカ労働者の権利を求めて
団体協約締結に向けた取組み
信頼と協力の新たな機会
パレスチナとイスラエルの労組間合意
情報は力なり
POCデータベースの潜在力
HIV-エイズ
カリブ地域の組合の取り組み
風に抗して飛ぶ
トルコ航空労組の闘い
勤労生活
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一般
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論説:何の意味もないイラン人活動家の拘束
読者の声:港の船員福利サービス
 
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