2007年10〜12月 第29号 |
■情報は力なり |
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情報は力なり
オーストラリア海事組合(MUA)のロッド・ピケットがPOCデータベースの潜在力について語る。
2006年に便宜港湾(POC)キャンペーンが立ち上げられて以来、ITF加盟港湾労組は労働権や安全衛生に関する国際基準の設定に強い関心を寄せている。
POCキャンペーンの開始前にITF港湾部会書記局は各地域で戦略セミナーを実施し、キャンペーンで取り上げるべき問題や、2006年8月のダーバン大会で正式な承認を目指す戦略について、加盟組合の意見を聴いた。その結果、カジュアライゼーション(非正規雇用化)、競争、グローバル・ネットワーク・ターミナル(GNT)、民営化、労働組合権の5つをキャンペーン・テーマとすることが合意された。
オーストラリア海事組合(MUA)は、2006年2月にバンコクで開催されたアジア太平洋地域の戦略セミナーで、POCデータベースの開発を提案した。そのコンセプトは、加盟港湾労組の組合員が世界のどこからでもアクセスでき、オルグやキャンペーン活動に役立つ情報、統計、ネットワークなどを提供することだった。
MUAのこの提案はセミナー参加者およびITF書記局から強く支持され、MUAのパディー・クラムリン委員長はプロトタイプ(見本)の開発を約束した。
データベースの開発はPOCキャンペーン戦略と共に2006年8月のダーバン大会で承認され、MUAはITFと共同で、データベースのアップロードやメンテナンス手続きの開発に取り組むこととなった。財源やその他の資源は両者の負担だ。
技術的な作業はオーストラリアの親労組の業者に委託し、MUAがまず、APMターミナルとドバイ・ポート・ワールド(DPW)の情報・データを提供することとなった。
これら2つのGNTオペレーターを選んだのは、両者の国際的な重要度が特に高いからだ。DPWは、P&Oポートの買収をきっかけに、ITFが関与を開始した。APモラー・マースク・グループのAPMターミナルは、ITFマースク・ネットワークとの関係から、当初から有力な候補者だった。 |
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主な特徴
このデータベースは加盟港湾労組の職場代表や組合員が簡単にアクセス・利用できるように設計されており、組合のオルグ・キャンペーン活動に役立つ情報が掲載されている。
ITFのホームページ上の港湾部会のエクストラネットからログインする。特別な技術は全く必要ない。インターネットにアクセスできれば誰で利用可能だ。
組合のオルグ活動を支援するのが目的で、幹部から一般組合員まで、あらゆる階層の活動家の実践ツールとして設計されている。言語は英語のみだが、GNTの進出港湾・ターミナルに関する情報や、利害関係者(ターミナル・オペレーターが単一の企業に所有されていない場合はその関係など)の情報が掲載される。 |
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組合の運動に活用
ITFはこのデータベースによって、加盟組織のGNTに対する理解が深まることを期待している。ある組合が特定のGNTと交渉中、あるいは問題をかかえている場合、このデータベースを利用して、当該GNTが関わっている他の輸送モードやロジスティクスが何であり、それがどこにあるのかを把握することができるほか、そのGNTの世界ランキング、取扱量、進出港湾など、組合の運動にとって、潜在的に重要な情報を得ることができるのだ。
また、あるターミナルあるいは港湾がどこの組合に組織されているか、特定のターミナルオペレーターが関与している港湾はどこか、その従業員を組織している組合はどこか、組織率はどの位かなども知ることができる。
コンテンツは徐々に充実させていく。最終的には他の関連情報、例えば、特定の港湾に関する団体交渉、争議、キャンペーン、ネットワーク等の情報も掲載していく。団体協約、労使関係の歴史、組合のキャンペーン、企業のホームページへのリンク、年次報告書、調査なども盛り込む計画だ。
コンテンツは閲覧、検索、印刷が可能で、データをスプレッドシートでダウンロードして、表やグラフに加工することもできる。 |
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加盟組合の協力が不可欠
データベースは入力情報、つまりコンテンツがあってこそ生きたものとなることを忘れてはならない。情報・データの入力、更新、モニタリング作業は、このデータベースが加盟組織にとって有益なものとなるためには不可欠な存在だ。
ITFが統括するこの作業には加盟組織の支援と協力が欠かせない。MUAは自らの支援・協力を約束するとともに、全加盟組織、特に資源豊富な組合に、率先して協力するよう呼びかけている。
まずはDPWとAPMのデータで立ち上げた後、他の加盟組織が協力に名乗りを上げ、他のGNT・ターミナルオペレーターの情報の充実を図る。2008年末までに上位20のGNTの情報を掲載するという目標の達成を期待する。
ITF港湾部会のエクストラネットのパスワードを所有する人なら誰でもアクセスできる。ITF港湾部会書記局はこのデータベースに関する研修の実施やマニュアルの作成も計画している。 |
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質問はITFのシャロン・ジェームズ港湾部次長()まで。 |
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ロッド・ピケットはMUAのコミュニケーション・リサーチ部長。 |
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