国際運輸労連-ITF
メニュー トランスポート インターナショナル バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

2007年10〜12月 第29号
■風に抗して飛ぶ
 
風に抗して飛ぶ

トルコ航空の組合員は、反労働組合法制と脅しに団結して立ち向かい、スト権の投票に行き着いた、とケマル・ウルケルは報告する。

本稿執筆時点で、トルコ航空(THY)の争議は、およそ11,500人のパイロット、客室乗務員、技術者、整備工、その他地上職員などのTHY従業員とTHY整備労働者を無期限ストライキの瀬戸際まで追いこんでいる。世界中で発生した航空産業労働者による争議の中で、最新のものである。
航空部門の争議には、それぞれ固有の特徴があるが、航空会社の労働者はその中で一様に、航空会社が進めるグローバル化への対応に直面する。航空会社はこの動きの中で、賃金や労働条件を圧迫し、生産性を上げ、組合に所属しない低コスト企業へ仕事を外注している。
THYとTHY テクニカル社の経営者との交渉は3月16日に始まったが、両社の幹部とも、雇用条件に関する労働者側の基本的で欠くことのできない要求について話し合うことを頭から拒否した。さらに、仲裁の過程でも、経営側は賃上げ提案を最期の会議まで公開しようとさえしなかった。
THYとTHYテクニカルの経営側は、基本的問題に、3月まで気乗りしない態度を意図的にとり続け、トルコの反労働組合法制の保護に頼ろうとした。トルコの法律では、ストライキ行動を遅延させたり禁止したりするために、どんなことをやっても許される。
▲ ページトップへ
ストライキ権への深刻な制約

トルコでは、連帯スト、ゼネスト、順法闘争、職場の占拠は禁止されてきた。団体協約が守られなかったことを理由にしたストライキも同様に禁止されている。ストライキ権も、団体交渉の手順の中で厳しく拘束されている。つまり組合は特定の手順を踏むことが強要されている。
まず団体交渉が、最長60日間続けられなければならない。それから、公的な仲裁過程が、最長21日間続けられる。公的な仲裁人から報告書が労使双方に送られた後、組合は6労働日待機して、スト決行に関する決定を行う。スト決行が決まった場合にも、使用者に対して、6労働日前までにその旨予告する必要がある。
トルコでは、国家安全保障や健康、公共の安全を理由に、ストライキを最長60日間見合わせるよう求める権限が法律で政府に認められている。組合は、国の審議会に対して、このスト見合わせをとりやめるよう要請することが出来るが、要請が却下された場合、60日間の期間が終われば、拘束力を持つ仲裁裁定に入らなければならない。
使用者側にとって不幸なことに、トルコの組合Hava-Isは、組合の意気喪失を狙って作られたこの過程を、組合員の圧倒的な支持を得つつ、全て完了させることが出来た。
▲ ページトップへ
馬鹿馬鹿しい提案

経営側から土壇場になって出された賃上げ提案は、記録的な本年の利益に照らし、全く馬鹿げたぐらい微々たる上げ幅であった。9・11後の景気悪化の後、THY労働者は自主的に給料の10%カットを受け入れた。それ以来、会社は順調に利益を出し続け、2006年には、売り上げは22%増加、純利益は28%増えた。本年第1・四半期の実績からみて、2007年は恐らく史上最も利益の多い年度になると見込まれる。
Hava-Is 組合員は、自らの賃金の心配のみならず、労働条件も懸念している。なぜなら、それは、直接的、間接的に飛行の安全につながるからである。組合の指導的メンバーのパイロット、アティラ・カヤは、交渉で、THY労働者の労働負担は、日ごとに重くなっていると語った。
「国際的に航空乗員の1日の最長労働時間は14時間と定められている。しかし、これはTHY従業員にとって、通常の労働時間である。われわれは、国際的な安全衛生基準の限界で、日々働いていることになる」と彼は話している。
7月20日、THYとTHYテクニカルの労働者は、無期限ストに入る意向を通知した。交渉で何ら合意も無く、組合が設定した2週間の期限が経過したことからこの決定がなされた。会社及び経営側は先例のない非妥協的態度をとり続け、問題を解決する意向のないことをあからさまにした。その結果、組合は、2週間の最後通牒を発せざるを得なくなったのである。
▲ ページトップへ
脅し

交渉が決裂したため、THYとTHYテクニカルの経営側は、脅し戦術を開始した。THYテクニカル経営陣は、1,000人以上の従業員の解雇を公にした。これと平行して、彼らは、THYテクニカルの閉鎖も口にした。
7月23日、事態はさらに悪化し、3人のHava-Is幹部が、合法的な組合活動を行っていたにも拘わらず、数時間拘束されるという事件が発生した。ITFは即刻トルコ大統領とTHY役員に連絡を取り抗議した。しかし警察は、Hava-Is 幹部をさらに何度か拘束することを繰り返し、THYとTHYテクニカルの経営者はこれを黙認した。
7月24日、THYの経営者は、組合代表と会った後、ロックアウトを宣言した。協議の間、経営側は、雇用条件について譲歩することを拒み、賃上げについてわずかな譲歩を示したのみであった。
さらに、経営側は、ストライキ投票を求める要請に、労働者の署名を集めはじめた。7月23日、組合は、非合法的なスト投票の要請に関して、経営陣を相手取った訴訟を起こした。
現在の法的枠組みでは、(労働者による民主的な決定として)全ての労働者がストライキ投票を要請する権利があるが、これは労働者の自由意志に基づくものでなければならない。法律に基づけば、使用者は、スト投票をごり押しすることは出来ないし、ましてや従業員を脅して投票させることは許されない。組合員の中でスト投票の要請に署名した何人かは、THYの経営幹部から会議室で、まとめて署名するよう迫られたと訴えている。
しかし、経営側が全労働者の25%から署名を集めることに成功したとしても、その票決でストが支持されることに、組合は十分自信があった。そして、結果はわれわれが正しかったことを証明した。
▲ ページトップへ
基本的要求

原則的に、労使協約の必須要件は賃金であるが、労働条件に関する管理条項も、賃金と同じく重要である。我が組合とTHY及びTHYテクニカル経営側が合意できなかった主要な部分は、この管理条項であった。
例えば、二つの会社では、従業員は二つまたは三つのシフト制で働いており、超過勤務に対しては、割増賃金が支払われる。しかし、その金額は少額で、とても消耗度に比例しているとはいえない。
「労働者一人当たり複数業務」を課す政策は、複数の職務に就かせるために労働者を雇用しようとする政策で、争議の別の理由になった。客室の安全に携わる労働者は、清掃もしなければならない。負担は、日ごとに増えていった一方、財政的・社会的な給付は、悪化していった。
仕事を同時期に同じ立場で開始した労働者の間で賃金に格差があることは、経営者側が、政治的で人気取りに偏した政策を行ったためであるが、これも、大きな問題である。Hava-Isは、基準を作ろうと決心したが、会社側は分断して支配する権力を維持するために、この要求を拒否した。
8月9日、THYとTHYテクニカルの労働者は、労働条件の改善と賃上げを要求するキャンペーン推進の帰結として、無期限ストを決行することについて投票を行った。THY労働者の54%、THYテクニック労働者の57%がそれぞれストライキに賛成票を投じた。非組合員である1,200 人以上(トルコの拘束的な法律により組合員になれない中間管理職)が、一括反対票を投じたが、賛成票は実際のところ、THY労働者の61%以上に達していた。
票決は注目に値する。なぜならビジネス及び政治的なサークル、マスコミの大部分がこぞって労働者と組合に対する批判的なキャンペーンを行っている最中でも、この結果が得られたからである。
スト投票の結果が夜間に公表されるや、THYの取締役会会長のカンダン・カリテキンは、記者発表の声明を出してTHYとTHYテクニカル労働者と組合への脅しを繰り返した。
悪意に満ちた攻撃と誹謗を組合員と組合に対して浴びせかけながら、THYとTHYテクニカルの経営陣は、マスコミの主流と政界の支持は変わらないと見ていた。マスコミを広告宣伝費で買収しているからである。実際、テレビ・コマーシャルの3分の1が、THY関係の広告で占められている!
組合に対抗する連合軍が結成され、100%正当な賃上げ要求を「気狂い扱い」し、「ストのためのストを進めるイデオロギー・キャンペーン」に組合員を「追い込んでいる」と受け入れがたい宣伝を進めた。カンダン・カリテキン自身、実際はこれが事実でないと十分承知のうえで進めたのである。
こうした事実歪曲に責任があるのは、カリテキンのみではない。スト投票の過程で、二つの会社の経営者チームは、労働者と組合に対して、脅しやさまざまな脅迫戦術に訴え、無法行為を繰り返した。こうした攻撃にも拘らず、組合員はひるむことなく、スト支持の投票を行ったのである。
▲ ページトップへ
ケマル・ウルカーは、Hava-Isの教育部長である。
 
 
INDEX
自由は実現する
イラン人組合活動家のマンスール・オサンルーが投獄前に語ったこと
持続可能な海
欧州の船員政策
西アフリカ労働者の権利を求めて
団体協約締結に向けた取組み
信頼と協力の新たな機会
パレスチナとイスラエルの労組間合意
情報は力なり
POCデータベースの潜在力
HIV-エイズ
カリブ地域の組合の取り組み
風に抗して飛ぶ
トルコ航空労組の闘い
勤労生活
西アフリカの運転士
一般
ニュース
論説:何の意味もないイラン人活動家の拘束
読者の声:港の船員福利サービス
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.