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2007年10〜12月 第29号
■信頼と協力の新たな機会
 
信頼と協力の新たな機会

イスラエルとパレスチナの交通運輸組合の間で達成された時代を画する合意について、スチュアート・ハワードが報告する。

握手と抱擁は熱烈で暖かかった。リアルで興奮に満ちた達成感に包まれた。会議の議長役を務めたITF会長のランドル・ハワードの「労働者が隣り合って共存できる平和な世界に向けた小さいけれど極めて重要な一歩」という言葉は、単なる会議の終結を超えるもっと大きな可能性を示唆していた。
会議の手はずは決してやさしくなかった。ロンドンのITF本部で開催しようとした当初の計画は、パレスチナ代表が英国ビザを入手できず、土壇場になって頓挫した。とはいえ、弾みがついたときに実施するのが得策である。デビッド・コックロフトITF書記長の訴えに、キプロスのITF加盟組合FTPAW-SEKのパンティス・スタブローが応え、急な話ではあるが、会議を主催したいと申し出た。
そこで7月31日から8月1日までの間、イスラエルとパレスチナの交通運輸労組の代表が、リマソルの夏の灼熱の中、一堂に会して交通運輸労働者が直面する諸問題を協議し、共通の基盤を見出そうとした。双方は、会議の最期になって協定に合意した。この中で、双方の組合は定期的に協議をもつこと、困難で注意を要する問題のいくつかに取り組むために協力することを約束した。特に、イスラエルの軍事検問所を通過しなければならないパレスチナのトラック運転手とタクシー運転手にきわめて実際的な仕組みを作り、彼らが直面している問題に対処しようとしている。
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第一歩

二つの組合の協力関係を樹立しようとする考えは、2006年6月、私がITF書記次長としてヨルダン川西岸地区とイスラエルを訪問したときに、最初に浮上したものである。しかし、レバノン紛争のため、双方の組合指導者がダーバンのITF大会で会う計画は実現しなかった。2006年11月になって、パレスチナ労組のナセル・ユーネスとヒスタドラト交運労組のハイム・シャイブがロンドンのITF本部でデビッド・コックロフトITF書記長及びランドル・ハワードITF会長立会いの下に会談し、2007年7月に、より範囲を広げた地元代表同士による会議を開催することについて、またその会議で扱われる問題について、提案をまとめた。
リマソルに集まった代表団の最終的な顔ぶれは、組合指導者だけではなかった。パレスチナ側の団長はナセル・ユネス、ヒスタドラト交通運輸労組は新会長のアビ・エドリと代表団メンバーに留まっていたが、アシュドッド地域のヒスタドラト議長となっていたハイム・シャイブ、他の代表団メンバーには、西岸地区とイスラエルの特定の職場や町の組合代表が含まれていた。彼らが参加していたことで、結果を草の根の組合員に即時に伝えることが可能になった。
パレスチナ側は、500箇所を超えて設置され、二つの共同体を分断している軍事境界線の検問所や障害のため、毎日労働者として働く際に遭遇する圧倒的な困難について語った。さらに仕事が少ないために発生している失業問題や移民問題についても語った。イスラエルの労働者は、交通運輸企業が民営化され、どんどん仕事が非組合員に外注化されていく状況を語った。そのため、組合員数が減少しつつあることが懸念されている。また、民営化の過程で、公共の資産が一握りの富裕層の手に集中していくことへの懸念を語った。さらに、団体交渉、賃金支払いの遅延、年金、組合員のリクルート問題、訓練、安全など共通の課題も幅広く話し合われた。
避けがたい緊張の場面もあった。現在の情勢や問題については、双方それぞれ確固たる見解を持っており、時にそれらはぶつかり合うことになった。それでも、会議を通じて印象的であったのは、意見の相違は避けがたいとの認識と共に、それぞれパレスチナ、イスラエルの交通運輸労働者を代表して活動する労組が、協力という最終目標のために、いくつかの相違を乗り越えていこうという、その姿勢であった。
一時は、それぞれお互いが向かい合って座るのではなく、座席を互い違いに混ぜて座ろうとさえした。
会議冒頭から両代表団団長は、ただ心地よい声明を出すためだけにわざわざやってきたわけではないことを明らかにした。ヒスタドラト運輸労組のアビ・エドリ会長は「われわれは真剣に取り組んでいる。単に何枚かの文書に署名しようというのではない。署名したことは本気でやるということだ」と強調した。パレスチナ一般交通運輸労組のナセル・ユネスは「組合員に何か具体的に実りのあるものをもたらさない限り、取り組みは全く信頼されないだろう」と警告している。
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誓い

2日間の会議の最期に、双方の組合は合同連絡委員会を立ち上げ、交通運輸労働者が直面している実際の問題に対処するため、またイスラエルとパレスチナの組合の間に信頼感を醸成するため、仕組みを作ることに合意した。一連の過程の仲介役を果たしたデビッド・コックロフトITF書記長は「イスラエルとパレスチナの交通運輸労働者が協力し合うはじめてのメカニズムのため、そのイニチアチブと体制が作られた。実際に機能するかは組合の努力にかかっている。ITFは、この過程で必要とされる支援を提供する用意がある。今回会議では、双方に本気で取り組もうとする姿勢が強く感じられた」と語った。
合同連絡委員会は、それぞれの組合から同数の代表で構成され、二人の指導者も加わる。労働者間に信頼を確立するため、定期的に会議を開催し、プロジェクトを進めていく。たとえば、相互訪問や合同教育セミナーなどが考えられる。特にパレスチナ交運労働者が遭遇している最も緊急性の高い、困難な問題、すなわち軍事検問所での問題に何とか取り組もうとしている。
イスラエルのヒスタドダット交運労組は、安全保障の問題に差支えがないようにしながら、可能な限り手助けする約束をした。まず、パレスチナ労組が電話のホットラインを設立し、運転手が検問所の問題を訴えることが出来るようにする。適切な場合、イスラエル労組が調整に乗り出し、問題に対応する。またイスラエルの警備当局に接触し、検問所や防壁などの問題が協議される場合は、彼らの参加も求めていく。どんな場合に西岸地区の運転手に深刻な問題がおこるか特定し、問題を解決するため、合同委員会が実際的に機能することが期待される。
われわれはこの協力関係が特定の交通運輸の問題をはるかに超えた良い影響を生み出していくことを望む。ランドル・ハワードによれば「参加者の成果達成への意欲は目覚しく、彼らはその努力が交通運輸労働者に実際の便益をもたらすとともに、小さな形でも、両国間に幅広い信頼と協力関係を作り出す力となると信じていた」という。
取り組みに対する公約は、双方の組合とITFによる宣言への公的な署名という形で表されている。宣言は、英語、アラビア語、ヘブライ語で作成された。
ナセル・ユネスは宣言を歓迎して「新たな取り組みにおける優先課題は、交通運輸労働者の問題に対処することである。われわれは組合員に、この取り組みが機能することを証明しなければならない。協力し合うことができれば、組合員に実際の改善をもたらすことは可能である」と述べた。
アビ・エドリは「われわれは本気で協力していく。一緒に取り組めば、必ずや成果がある」と付け加えた。
両組合の指導者は、ITFが会議招集に果たした任務に感謝した。そのうえで、ITFに引き続きこの取り組みに対する支援を要請した。デビッド・コックロフトは、ITFはこの合意への署名者として、宣言の実行にしかるべき役割を果たしていくことを約束し、これから1年以内に両組合を訪問する意向も明らかにした。
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スチュアート・ハワードは、ITFの書記次長である。
共同声明文

イスラエルのヒスタドラト交通運輸労組とパレスチナの交通運輸一般労組(PGFTU)は、ITFの支援の下、2007年7月31日から8月1日の間、キプロス、リマソルにおいて協議し、

交通運輸産業が、全ての国の経済と社会の安寧に中心的な役割を果たしており、交通運輸労働者の国際的連帯が、今日のグローバル化した経済においては、なお一層必要とされていることに留意し、

ITFに加盟する二つの組合の指導者間で、2006年以来、対話が継続されていることに留意し、

イスラエルとパレスチナの交通運輸労働者の雇用、労働条件、及び安全の確保には、二つの組合の協力が不可欠であることを宣言する。
また、組合間の問題は、交渉と協議を通じてのみ解決が可能であることから、全てのITF加盟組合に対して、この過程への支援を要請する。

さらに、イスラエルとパレスチナの交通運輸労働者が直面する諸問題への実際的な解決を得るために、各組合から同数の参加者を得て、共同議長のもとに、定期的に協議をもつ目的で、交通運輸組合合同連絡委員会を設立することに合意する。

委員会で扱われる問題には、次が含まれる:

■パレスチナ労働者が直面する検問所と境界線の防壁の問題

■交通運輸労働者の安全確保

■道路の安全と職業上の健康問題

■ 年金問題

■国境を越えて提供される組合のサービス

■女性交通運輸労働者の問題

ヒスタドラト交通運輸労組は、合同委員会で検問所や国境線の防壁などの警備上の問題が議題に上るときは、イスラエルの警備隊に接触して、代表を任命して出席させるよう要請することに合意する。

また、合同委員会は、特定の問題に取り組むために、小委員会やタスクフォースを設立することに合意する。

共同議長の要請があれば、交通運輸の問題に関して情報を収集するなど、ITFが委員会の作業への参加を約束したことを歓迎する。

パレスチナ交通運輸労組は、交通運輸労働者が緊急性の高い問題に遭遇した際利用できるホットラインの設立など、問題に迅速に対応するメカニズムを確立することを合意する。パレスチナの組合はイスラエルの組合と連携しながら、関連する問題の処理にあたる。

最後に、両組合は、イスラエルとパレスチナの交通運輸労働者のより緊密な協力と理解の促進についてつとめることを合意する。
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