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2004年1月 第14号
■シックエアクラフトをどう治療するか
 
シックエアクラフトをどう治療するのか

目に見えないが非常に重要な健康問題に関する認識を高めるため、組合が行なってきた取り組みについてジュディス・ムロウスキーが報告する。

6日間の長距離フライトから戻ったばかりの客室乗務員デビー・Dは、その湿疹だらけの顔と腫れぼったい眼を見た主治医から、「まるで農薬中毒の出稼ぎ農園労働者だ」と言われた。
アビオニクス産業で働くスティーブン・Cは、コンピュータにアクセスしようと航空機の内壁パネルをはがした際、強烈な悪臭を感じた。その後、帰宅途中の車の中で寒気がし、激しい腹痛に襲われた。3日後、舌が炎症を起こして腫れ上がり、呼吸困難に陥った。清掃スタッフのカレン・Sも、客室の床にこぼれた化学物質を紙で拭き取った後、同じ症状に悩まされた。
機内で石油煙の悪臭がすると言ったあるパイロットが、会社としては彼が今後も悪臭を嗅がない環境を保証できないという理由で、最近解雇された。会社側の主張は、悪臭ではなく、このパイロットの「神経質さ」が問題だというものだった。
米国からA330の大西洋便に搭乗した複数の客室乗務員と乗客が、急なめまい、失神、筋肉の弛緩に悩まされたと最近報告していたが、この報告書は抹消され、原因が究明されることはなかった。
大抵の人は、こうしたケースはごく例外的だと思うかもしれない。客室やコックピットの空気の量や質に関しては、きちんとした基準が設けられているはずだと考えるし、きちんとした検査もせずに乗客や客室乗務員を再度搭乗させる直前に、客室を農薬づけにしているなどとは夢にも思わないからだ。
しかし、航空産業の労働者は、従業員の安全衛生に関しては、原則的に企業の自主規制しかないという現実をよく心得ている。地上では、換気が悪いことは(あるいは汚染空気の室内への流入は)、シックハウス症候群の原因になると言われている。しかし、シック・エアクラフト(航空機)症候群という言葉はめったに聞かない。
航空機メーカーやその下請け業者と同様に、航空会社もまた、化学負傷や化学疾患に悩む労働者が仮病を使っていると主張し、単なる勘違いだと決めてかかる。航空機メーカーも、換気システムは完璧に作動しているのだから、ストレス、脱水症状、乗り物酔いなどが問題の本当の原因だという見解を示している。
さらに悪いことには、すでに航空産業は様々な問題で手一杯なのだという暗黙の了解があり、また産業の財政問題も労働者の安全衛生面での保障の削減傾向に拍車をかけている。機内の空気の質向上をうるさく騒ぎ立てる労働者や労組に構っている余裕は無いのだ。
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足並みのそろった対応

1990年代に入ると、ITF加盟組合の安全代表どうしがコミュニケーションを密に取るようになり、世界中の客室乗務員から報告される症状の類似性に焦点を当てるようになっていった。問題は、1社の航空機に限って起きたわけではなく、航空機のタイプも1つに限定できなかった。情報交換と行動主義の原則を具現化するために、ITFが支援して航空機内の空気の質に関する国際作業部会を設置し、1999年6月にその第1回会議が開かれた。世界中から集まった参加者が議題に上げた事項は驚くほど類似していた。
作業部会の最優先事項は、航空労働者や乗客が、機内の空気に関する様々な問題を簡単に報告することができる統一の報告用紙を作成することだった。航空会社や規制当局は報告書を提出してもらいたいと進んで思うはずもなかった。データが何もなければ、問題もないことにすることができるからだ。ITFによる報告用紙は2001年初頭に完成・発行された。それ以来、ITFは、オンラインでも報告システムを開始し、ユーザーはこのオンライン報告用紙(www.ashdi.com)を使って安全・衛生・保安関係の様々な問題について報告できるようになった。
作業部会メンバーがまず始めに取りかかったのは、航空機の機内空気に関する問題点を定義し、足並みのそろった問題の解決法を見出すという作業だった。換気不足、基準以下の酸素供給、空気汚染、毒物への曝露に関して政策方針書を提示した。要するに、従業員の健康を保つためには、清潔で豊富な空気が不可欠であり、そのためには一定の変化を起こすことが可能であり、起こさなければならないと分かった。
 目下の活動の焦点は、オンライン報告システムの拡充だ。問題が起きた時、我々はすぐ報告してもらいたいと考える。
作業部会の政策方針書に提示した特定の勧告を実施するため、作業部会の米国メンバーは、機内空気の質の基準設定を目指す非政府委員会に参画している。これは初めての試みでもある。権力を使って不当にこうしたプロセスに影響を及ぼそうと試みる大企業との闘いもまだ勝利半ばだか、すでに一定の成果も上っている。設定された基準は拘束力のあるものにはなり得ないが、客室乗務員の意見も反映されているため、規制当局がモデルとして採用する可能性はある。第一草案は2004年後半に完成予定だ。最終的に基準が出来上がるまでには、まだ何年もかかるだろう。
一方、欧州では、機内空気の質に関する研究が産業側の援助で行なわれているが、これは組合や現場の意見を反映したものではないため、その動向を注意深く見守っている。同研究の結果は、欧州連合圏内を拠点に運航する航空機に適応される「準基準」のたたき台となる。
客室乗務員や乗客の安全衛生と快適さを犠牲にして、航空会社、航空機メーカー、下請け業者のそれぞれがコストを削減し、切り詰めるというこの世界中で横行しているシステムを変えることは容易ではない。
規制当局は、基準以下の機内空気が健康に及ぼす影響を長期にわたって観測しようとはしない。航空会社は機内空気の観測をしない。一方、従業員は機内空気が原因で気分が悪くなったという報告自体を見る権利を有していない。また、医者の間でも機内空気が原因で起きる病気については認識が不足しており、誤診が起こりやすい。従業員の賠償問題になれば、決まって航空会社側の有利に事が運ぶ。こうした困難な局面にあり、航空労組は、マスコミや関係議員の協力を得て、問題を定義し、認識を高めるという点では大きな進歩を遂げた。
客室乗務員が頭痛やめまいに悩まされている場合、ストレスや過労、脱水症状が原因だと思い込んではいけない。機内の空気の質が原因で発生する健康被害は実際に存在するもので、健康を蝕み、時には深刻な結果を招き得る。航空労組は、ITFの作業部会に参加し、情報を得て、どんなに小さな問題でもオンラインのデータベース(www.ashdi.com)を通じて報告を行なうことで組合員へのサービスを強化することができる。
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ジュディス・ムロウスキーは客室乗務員協会の産業衛生士。シアトルAFL-CIL出身。機内空気の質に関する作業部会に参加を希望する場合は、ITFのホームページ(www.itf.org.uk/aviation)を参照するか、ITF民間航空部会(+44 20 7403 2733)に連絡を。
航空機内の空気の質の問題   被曝した際の影響
機外の清潔な空気の供給不足   集中力低下、疲労、疲労感、頭痛、
伝染病感染のリスクを高める
機内の酸素不足   唇と爪が青みを帯びる、胸の締め付けと痛み、めまい、集中力低下、失神、疲労、頭痛、判断力低下、鼻血、嘔吐、虚脱感
防氷液または排気ガスによる給気の汚染   胸の痛み、めまい、鼻・喉の痛み、頭痛
オゾンによる吸気汚染   息切れ、目・鼻・のどの痛み、胸の圧迫感・痛み
加熱油と作動液による機内空気の汚染   平行感覚障害、寒気、記憶喪失、口内炎、筋肉痛、痙攣、発作、激しい腹痛、刺すような痛み、震え、めまい、視覚障害、その他「酸素不足」の項目と同じ症状
農薬被曝   アナフィラキシーショック、咳、呼吸困難、めまい、眼と喉の痛み、疲労感、頭痛、免疫・神経システム障害、肺損傷、鼻血、湿疹
上記の問題複数の組み合わせ   未研究のため不明
未解決の問題
コックピットは、客室に比べ外気が混入する割合が20倍も高いが、基本的に一旦入ってきた空気は再循環して使われない。
大半の航空機が吸入した空気の約半分を再循環させている。機内では、乗客の吐く息が唯一の水分になる。
オゾンガスは、免疫機能を低下させる強力な刺激物だが、飛行高度では自然に大気中に存在するもので、機内供給用の空気に混入する可能性がある。
最高飛行高度では、機内の酸素量は地上の75パーセントになってしまう。
機内に煙が発生するようなことがあると、一酸化炭素に曝露する危険性があり、酸素の供給量がもともと減少していると殊に深刻だ。
燐酸トルクレシル(TCP。エンジンオイルや作動液に添加物として含まれることが多い)に曝露することにより、脳や神経の細胞が損傷を受けた場合は、「機内での発煙事件」から数週間経って初めて症状が現れる可能性がある。
一部の航空機では、乗客と客室乗務員が搭乗する前や飛行中に、機内の農薬消毒が行われているが、月経中の女性、妊婦、乳幼児を含め、乗客に対する一切の予告なしに消毒を行なっている。免疫機能が低下している人は、特にリスクが高い。
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INDEX
港湾労働者の勝利
欧州港湾指令却下
航空経済
2004年の航空産業の
展望と課題
シックエアクラフトをどう治療するか
目に見えない健康被害の認識を高める労組の闘い
アルゼンチン鉄道の行方
中南米の鉄道民営化事情
遺棄されて:救いの手を差し伸べてくれるのは誰?
船員が遺棄されたらその責任は誰が取るのか
利益を求めた威嚇行為
FOC船に乗組むラトビア人船員の苦難
赤信号がともされた自由化プロセス
WTOカンクーン閣僚会合でつまずいたロジスティクス会社
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