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グローバルユニオン

2006年1〜3月 第22号
■トラックを運転する女性たち
 
トラックの運転スキル向上のためのスコットランドの取り組みについて、ヤスミン・プラビュダスが報告する。

「いつもトラック運転手になりたいと思っていた。ただその機会がなかっただけ」と2005年にスコットランドで実施された試験プロジェクトの一部に参加し、大型貨物自動車(LGV)の運転スキル訓練を受けた15名の女性の1人、リンダ・ジャクソンは言う。
英国の貨物ロジスティックス業界のためのスキル向上協議会「スキル・フォー・ロジスティックス」が考案した「運転する女性」プログラムは、トラック運転手の不足とジェンダー不均衡の解決を目指している。同プログラムを支えているのは、運輸会社と労働組合(ロジスティックス産業で15万人を組織する英国運輸一般労組(TGWU)もその一つ)である。2004年には、試験プロジェクトがスコットランド政府の助成で一部立ち上げられ、女性のLGV運転手としての訓練と雇用に関連する問題を調査する研究プログラムが実施された。
「スキル・フォー・ロジスティックスの戦略目標は、単にLGV の運転手についてだけではなく、ロジスティックス産業全般に見られるジェンダー不均衡を正すことだ。我々の調べでは、スコットランドのLGV 運転手に 女性が占める割合はわずか1割であり、トラック運転手不足の状況が、女性に運転手という職業を優先的に考慮してもらうことを促す動きにつながっている」とスコットランド「スキル・フォー・ロジスティックス」のシェイラ・マッカロー政策顧問は述べる。
「我々の最近の調査から、スコットランドでは、4,000〜5,000人のLGVドライバーが不足しており、状況はさらに悪化しつつあることが分かった」
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固定観念の払拭

「個人的には、ロジスティックス産業がその可能性を最大限に実現するためには、特に若い女性にこの業界への進出を考えてもらうことが不可欠だと思う。そのためには、女性がロジスティックス産業の職種に対してもっている誤った固定観念を払拭し、また、使用者に対しては、もっと女性にやさしい労働条件や雇用慣行が必要だと認識してもらわなければならない」とマッカロー政策顧問は述べる。
「スキル・フォー・ロジスティックス」がスコットランドで実施したドライバーの訓練プログラムは、マッカロー政策顧問によると、試験プロジェクトの教訓を生かして実施されており、スコットランドの中部ベルト地帯で女性ドライバー限定の職を40用意した。さらに15人以上の女性がハイランドやスコットランドの島々で実施される訓練に参加することになる。
リンダ・ジャクソンは、公営の造園企業で輸送部長をしていた際に、LGV コースについて知った。ジャクソンは既に2級免許を取得しているため、トラック(トレーラーではない)を運転できる。トレーラートラックの運転も可能になる1級免許取得のための訓練の終了も目指している。現在、ジャクソンは他のドライバーの補佐を務めているが、もっと頻繁に運転したいと考えている。
「依然として男性優位の世界。トラックを運転する女性がもっと増えれば、状況はずっと良くなるだろう。私は以前、バスを運転していたが、長い間、女性は私1人だった。でも今では女性がバスを運転するのは珍しいことではなくなった。トラック業界も時代とともに改善されればと思う」
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技術革新

キャロライン・スターリングもまた、夫が運輸業に勤めていたことをきっかけにこのコースについて知り、参加した。「私は、他のドライバーの補佐という立場でトレーニングを受けた。運転は大好き。女性がトラックを運転するのを見て驚く人は多い。トラック業界も最近やっと女性を受け入れるようになってきた。華やかな世界だと思ってこの業界に入ってくる女性は少ないだろう。女性用トイレとか、女性のための設備が存在しないこともある」とスターリングは言う。
「業界の中には、トラックの運転を女性ができる仕事だと考えない人もたまにはいるが、概して、男性の同僚たちは協力的だ。技術革新により、以前よりずっと、力仕事よりも機械操作が増えてきているため、今は女性がトラック業界に入るにはいい時期だ」
ドライバー不足はスコットランドだけの問題ではない。同様の問題を抱えている国は他にもある。スキル・フォー・ロジスティックスのメンバーでもある、TGWUのロン・ウェブ商業陸上輸送担当全国書記は、英国のドライバー不足について次のように述べている。「英国のロジスティックス産業は、2005〜2006年の会計年度で約4万6千人のLGVドライバー不足に見舞われるとことが予測される」
しかし、英国では、新たに産業に入ってくるドライバーもいる。英国ミルトンキーンズ市のスキル・フォー・ロジスティックスは、昨年9月に女性ドライバーの新規採用に焦点をあてたイベントを開催した。一方、英国北東部では、TGWU、訓練・スキル向上委員会(職業訓練を担当する英国政府の機関)、欧州社会基金によるパートナーシップ・プロジェクトが立ち上がり、移民労働者のトッラク業界への就職を促している。
「ロジスティクス産業におけるスキル面での格差を縮小するには、労働組合は労働条件を改善するだけでなく、様々な手当を手厚くしてより多くの人々にこの業界で働きたいと思ってもらう努力をする必要がある。さらには、採用の対象を広げ、女性やこれまであまり考えられてこなかったグループの人たちを含めていくべきだ。変わり行く労働力のニーズを満たすためには、柔軟な労働条件と適切な設備を確実に備えなければならない」というのがロン・ウェブの結論だ。
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ヤスミン・プラビュダスはITFオンラインの編集長。
大型貨物自動車の女性ドライバー
(労働人口全体に対する割合:%)


米国:5.3
英国:2.0
フランス:0.5
セリア・マザー調べ

ドライバー不足

カナダ:毎年37,000人が不足
カナダ・トラック人材委員会とカナダ人材スキル開発調べ(2004年)
インド:毎年、150,000人の熟練ドライバーが不足
トラック・ファイナンスのシュリラム・グループ調べ(2004年)
英国:2005〜2006年末までに46,000人が不足
スキル・フォー・ロジスティックスの『LGVトラックドライバー不足調査』
米国:2015年までに54,000人が不足
全米トラック協会、『米国トラックドライバー不足調査:分析と予測(2005年5月)』
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