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2006年1〜3月 第22号
■ケニア鉄道の新たなるスタート
 
オチェング・オドゴ

ケニア鉄道公社(KR)のコンセッション(民間委託)の日取りが近づく中、KR従業員の運命が大きな問題となってきた。南アフリカが中心となって形成する渓谷鉄道コンソーシアムが今年始めにケニアとウガンダの鉄道営業契約(25年間有効)を獲得すると、6,200人いる正規従業員のうち、約3,000人(日雇い従業員を含めると5,500人)が整理されることになる。
争点の一つとなっているのは、これほどの人員整理を計画するに至ったその根拠だ。ケニア鉄道労組のジョン・チューモ書記長によると、ケニア政府は削減する従業員数をどう算出するかについて、コンセッションの競争入札前に十分な説明を一切してこなかったという。
「政府が口を閉ざしたため、コンセッション全般に関する政府の信頼性を疑問視する声が出るようになった」とチューチモ書記長は言う。
今回、大量人員削減が提案されているが、2002年にも、約12,000人いた従業員が現在の6,200人にまで削減された。チューモ書記長の話では、KRは営業利益の7割を従業員の給料の支払いに費やしており、このままでは持続不可能だと主張している。今回の人員削減により、従業員の給与月額を1ヵ月あたりの営業コストの3割にまで抑えることができるため、持続可能であり、残りの従業員の雇用を維持できるとしている。
組合は、今回の人員削減計画は、政府が発行した「2003〜2007年富と雇用の創設へ向けた経済回復戦略」に矛盾していると主張している。人員削減は、受託企業が将来的に安価な非正規雇用労働者を導入するためのコンセッションの準備段階であると疑う声もある。
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組合の要求事項

組合は大量人員削減策と今後も闘っていく一方、コンセッションが実施された場合の要求事項リストも作成した。
「政府がどうしてもこのコンセッション計画を実施するのであれば、役職や正規か非正規かの別に関わらず、全従業員に対し、勤続1年につき3ヵ月分の給与を支払うことを要求するつもりだ」と組合のスポークスマンは述べる。
組合はまた、10万ケニアシリング(約1,360米ドル)の解雇手当の支払いと、解雇される従業員が鉄道住宅に居住している場合、立ち退きまでに少なくとも3ヵ月の猶予を与えることを要求している。また、解雇者の次の職場と自宅の間の交通費についても全額KRが負担することを主張している。
「受け取るべきものをしっかりと受け取るまで、誰も鉄道住宅から立ち退かされることがあってはならないし、引越しのための十分な時間も与えられるべきだ」と組合のスポークスマンは言う。
KRのジュディー・シディー・オドヒアンボ広報担当部長は、政府による具体的な計画の発表はないが、組合のもう一つの要求である解雇された労働者への再訓練とカウンセリングの提供も満たされるであろうと述べている。「今回は前回とは異なり、人間的にやるつもりだ」とオドヒアンボ広報担当部長。世界銀行の鉄道再編プログラムも通常、こうした計画の実施を許容しているが、代替の雇用がはっきりしていなければ、ほとんど役に立たない。
同様に重要なのが、コンセッションのプロセスが始まる前から従業員の不安の種であった退職手当の問題である。組合の主張では、前回解雇された6,000人のほとんどが未だに退職手当やその他の諸手当を受け取っていない。KRは、今回は、プロとして責任を果たす決心があると述べ、しきりと労働者を安心させようとしている。
2006年1月以降、2005年10月に設立されたケニア鉄道公社(KRC)従業員退職金制度が年金関係の責任をKRから引き継ぐことになる。新たに設立されたこの年金制度は、KRからは独立した法人となり、理事会により個別に管理される。
オドヒアンボ広報担当部長は「KRは退職金当局(RBA)の要件を全て満たすつもりであり、制度の運営にも干渉しない」と述べた。最低年金額は引き上げられ、年間支給額の増額も保障されるとともに、累計12億6,450万ケニアシリング(約1億7,000万米ドル)の未払い金も支払われると主張する。
「これらの支払いは、政府が準備金として積み立てていた余剰流動資金および資産の特定によって賄われる」というのが政府の主張だ。
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組合の不安

こうした政府の保証にも関わらず、組合は依然として懐疑的だ。KRの資産特定による新年金制度の支払いが実現するには時間がかかるだろうと組合は懸念している。
根本的に人員削減は必要ないと考えるチューモ書記長は、「実際にコンセッションが実施されてしまうとこの問題の追及は難しくなる」と説明する。
KRが赤字を出しているのは、人員を大量に抱えているからではない。チューモ書記長の意見では、現在、従業員はむしろ少ないくらいで、非は政治的意図をもった無能な経営者にある。KRはモンバサ港から上がった貨物の輸送の8割をケニア港湾局から割り当てられているにも関わらず、実際は12パーセントしか輸送していない。
1978年の設立以来、KRの業績は悪化の一途をたどった。1983年にはKRが輸送した貨物量は430万トンだったが、2004〜2005年の会計年度では、これがわずか189万トンに落ち込んでいる。
KRはこの業績の悪化が交通運輸市場における鉄道のシェアにマイナスの影響を与えたと認めている。KRの「鉄道を軌道に戻す」と題する報告書には、「その結果、国際・国内貨物の増加にも関わらず、1970年代には7割だったKRのシェアは1980年代には5割に、さらに2000年には2割にまで落ち込んだ」と書かれている。
KRサービスの非効率さゆえに、ほとんどの企業が貨物輸送手段を鉄道から道路輸送に変えていった。道路輸送される貨物の量が増加し、その結果、道路が急速に劣化し、補修コストがかさんでいる。また、道路事故の急増や、他の交通手段との競争が減ったことに起因する道路貨物輸送コストの急騰なども顕著になった。
現在、KRは毎月、2億2,000万ケニアシリングの赤字を出している。財政的に非常に厳しく、重要なスペア部品の調達や保守作業も不可能で、基本購入品の支払いもできず、従業員の給料やいずれ毎月の支払い期限がくる年金の支払いすら保障できない状態にある。現在、KRが抱える累計債務は205億ケニアシリングに膨れ上がっている。
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再生への努力

KRの経営再建のための努力、特に1980年代後半になされた努力は全て徒労に終わった。1988年には、政府が短期行動計画(STAP)を実施し、新しいクラス94の機関車と、機関車や貨車の基幹部品の購入を助成した。
同プログラムはまた、公社の再編とビジネス志向組織への転身を図った。
1992年の公営企業改革プログラムのもと、KRは、リストラは行うが、その後も国営に留まるべき戦略的国営企業に分類された。また、このプログラムのもとで1992年には2万2千人いた従業員が2002年には1万2千人にまで整理された。
設備の保守サービスの外注化を通じて、民間企業の参加もあった。マガディ・ソーダ社(訳注:アフリカ最大の工業用炭酸ソーダ製造会社)が自社のネットワークの一部で列車を運行するようになった。しかし、KRの業績は悪化し続け、政府も助成を打ち切った。
こうした一連の失敗を受けて、政府の政策も変化し、全面的なコンセッションを実施することで、KRに新しい息を吹き込めると期待している。
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オチェング・オドゴはナイロビをベースに活躍するフリージャーナリスト。
最大の打撃を受けるのは女性

ケニア鉄道労組のグレース・アルワ財政副部長が語る。

人員削減の影響を受けるのは主に女性だ。女性従業員の大半が事務処理部門で働く事務スタッフだ。買収先の企業が一番欲しいのは技術スタッフであることも明白だ。そして技術スタッフに女性はほとんどいない。例えば、5人の事務スタッフがいたとすると、4人が削減されることになる。残った1人がコンピュータを使って作業する。
私が働く輸送部門の人事部には、女性スタッフ4名と男性スタッフ1名がいる。この4名の女性たちは、家事との両立は容易ではないが、自分たちは長時間労働に耐えているとお互いにいつも話している。しかし、1人だけでも4人分の仕事をこなすことは可能だと彼らは言う。そしてその1人とはもちろん、女性ではあり得ない。女性スタッフの多くがシングルマザーだ。私たちは単純にどうすればいいのか分からない。
政府の人員削減計画によると、勤続1年ごとに給与月額が支給されるということだが、家族のいる身としては、そんなわずかな額はないも同然だ。政府はまた、55歳になるまで年金は受け取れないと言う。本当にどうしていいのか分からない。
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海難救助で船員は犠牲を強いられている
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