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グローバルユニオン

2006年1〜3月 第22号
■主要課題になったHIV/エイズ
 
HIV/エイズとの闘いでアフリカの労働組合がもたらした進歩についてケマル・ウルカーが再考する。

2005年9月、HIV/エイズの問題を組合活動の中で主要課題化(メインストリーム化)することを目指す5日間のITFセミナーが開催され、アフリカ18カ国から25名の交運労組の指導者や活動家が参加した。
セミナー開催国としてウガンダを選んだのにも理由がある。かつて、ウガンダはエイズの蔓延率で世界最悪の状況にあったが、エイズと闘うため、意識の向上と医療の改善に国を挙げて強力に取り組んだ結果、新たな感染率が大きく減少したことで知られている。
労働組合にとって、HIV/エイズ問題の主要課題化とは、HIV/エイズに関連する問題を組合のあらゆる戦略計画、プログラム、日常の活動に組み込むということだ。ITFセミナーは、最善慣行のガイドラインや関係国の国内法の枠組み、手本にできる職場の政策や団体協約の条項などを利用しながら、主要課題化のプロセス促進を目的に開催された。最も重要なのは、この問題に組合の指導者と幹部が長期にわたり、組織的に本気で取り組むことの必要性を強調した点だ。
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現実を直視する

労働組合内部でHIV/エイズ問題を主要課題化させることが当面難しい場合、労組は政府の指導者たちをこの問題に向き合わせることを目指すべきだ。大抵の国の労組は恐怖心からくる政府の無関心を克服しなければならない。それは、外国の投資が来なくなるかもしれない、あるいはその国のエイズの状況が明らかになれば、観光客離れが起きるかも知れないといった恐怖心だ。
エイズ問題に真剣に取り組んでいる国でも、政府が労働組合や市民団体と協力体制をつくり、そのスキルやノウハウを利用することが重要だ。
エイズの蔓延は貧困とジェンダー不均衡により加速していき、またエイズが貧困とジェンダー不均衡をさらに深刻化させるという悪循環が生じる。HIV/エイズは、患者・感染者の生産性と一般的な生産性の双方に悪影響を及ぼす。
一部には、HIV/エイズが国の経済や、さらには社会全体に及ぼす影響が既に明白かつ深刻なレベルに達してしまった国もある。特にサハラ以南のアフリカでは、女性がしばしば無防備なセックスを強要され、男性よりも女性の間で感染率が高くなっている。エイズにまつわる恥辱のイメージや治療のために家族にかかる負担の増大などの問題も深刻だ。労働組合がジェンダー平等確立の面で進歩をもたらす覚悟をもつことが明らかに重要である。
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組合の準備は進む

残念ながら、アフリカで事業展開する企業の多くが、依然としてHIV予防政策を策定していないという事実がセミナーで明らかになった。労働組合と協力して職場政策やプログラムを作成することなしには、企業の現在の利益、賃金レベル、諸手当のレベルなどは中期的に持続可能でないという議論が強力に推進されているにも関わらず、この現実がある。現在、最も生産性の高い年齢層の労働者が失われているが、これはエイズが最終的に企業、経済、社会に及ぼす悪影響のほんの始まりの兆候に過ぎない。
長年の努力の末、まず会社を説得してエイズに関する職場政策を導入させ、つぎにこれを団体協約に盛り込ませた組合もある。ストライキを実施する他に方法はないと決断し、一定の成果を上げた組合もある。
現在進行中の世界貿易の自由化と生産のグローバル化により、継ぎ目のない複合一貫貨物輸送システムが出現し、主要な交通回廊で機能している。このような動向が、HIV/エイズの影響を受けやすい交運労働者にもたらす影響は、国内レベルに止まらず、小地域、さらにその外へと広がっていく。この現実は、地域レベル、小地域レベルで実施されるプロジェクトを交運労働者が積極的に支援し、参加してくれていることからも明らかだ。
ITFのHIV/エイズ最善慣行セミナーでは、アフリカの交運労組のHIV/エイズ問題への対応が新たな局面を迎えていることが、参加者の発言から明らかになった。交運労組の指導者は政策課題としてエイズ問題に真剣に取り組むようになった。また、以前よりも多くの一般組合員を動員することもできるようになった。大きな成果が上がっているが、アフリカ大陸の交運産業におけるエイズ蔓延の規模を考えると、より強力で持続的かつ効果的な努力がエイズとの闘いには不可欠だ。
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ケマル・ウルカールはITFのHIV/エイズコーディネーター。
前向きなストーリー

マダム・ラングイダ

マダム・ラングイダはルワンダのASSETAMORWA(長距離トラック労組)に加盟していたオートバイタクシー運転手の未亡人。検査の後、2004年9月にHIVに感染していることが判明した。


エイズ蔓延の責任は、ドライバーとその妻のどちらにあると思いますか?
ドライバーだと思います。特に大型トラックを運転するドライバーは、家族から離れて夜を過ごすことが多いので。

家族から離れて夜を過ごすことが妻以外の女性と性的な関係をもつことの十分な理由になりますか?
それは男性に聞いてみてください。「雄牛の放浪を止めることはできない」という諺もあるくらいで、そういったことを奨励する文化があります。

HIV/エイズを予防する上で、女性の役割とは?
未亡人としての私の役割は、子供たちにキリスト教徒らしい行いを守り、婚前交渉をしないように教えることです。

エイズ検査を受けたり、自分がエイズであることを公表したりする勇気を出せずにいる女性にどのようなアドバイスをしますか?
まず、検査を受けなければなりません。検査を受けることではじめて自分の健康状態を知り、次に何をすべきか分かります。第二に、陽性であると判明したら、定期的に医者に行き、医師の助言に従うべきです。第三に、個人的な経験を話すことで、多くの人がHIV/エイズの現実と深刻さについて認識するようになりますから、勇気をもって声を上げるべきです。第四に、HIV感染が判明し、抗レトロウィルス薬を処方されている場合は、新薬の開発を待ちつつ、既存の薬を指示に従って服用すべきです。
 
ニホバブカ・エスペランス

ニホバブカ・エスペランスは1994年に死亡したトラック運転手の未亡人で、15年間、 HIV/エイズとともに生きてきた。


感染に気づいたのはいつですか?
1990年、名前はもう忘れましたが、ある団体がやってきて、無料でHIVテストを実施したのです。当時私は妊娠中で、近所の大半の家庭と同様、エイズが何か知りませんでした。妊婦は優先的に検査を受けることができました。検査の前に2時間かけ、HIV/エイズとは何かについて、生まれて初めて講義を受けました。

検査の結果とその時の気持ちを教えてください。
赤十字が書かれている紙を一枚渡され、すぐに自分が感染していることが分かりました。自分の人生が終わったかのように感じました。

次にどうしましたか?
帰宅すると、私はこのことを夫に話しました。夫は怒鳴りながらきっぱりと否定し、(後日、自分の責任を認めましたが)私が誰か他の人間から感染したのだと言いました。その夜は夫を拒絶し、次の日、一番近い診療所にアドバイスを求めに行きました。そこでコンドームをいくつかもらったので、夫が求めてきた時は常にそれを使うようにしました。1994年初めに夫は深刻な病に倒れ、2ヵ月後、亡くなりました。

夫の死後、どのようにウィルスと付き合ってきたのですか?
HIV/エイズ患者・感染者のグループに入りました。カウンセリングや仲間の冗談などに癒されました。最初の3年間は、ドイツからきたボランティアが手伝ってくれて、抗レトロウィルス剤を処方されていた人もいました。2002年に私たちのグループとケア・ルワンダが協力し、引き続き援助を提供してくれました。ケア・ルワンダのおかげで私の子供も全員学校に行っています。
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アフリカ・フランス語圏のためのITF・HIV/エイズプロジェクト・コンサルタントのジュヌビエーブ・ムカンデケッジによるインタビュー。

組合活動家、HIV/エイズとの闘いを語る。

民営化の影響

アンドリュー・バンダ(ザンビア運輸労組(NUTAW)副書記長)
ザンビアでは、民営化が90年代初頭に始まった。組合は大規模な外注化と大量解雇を経験してきた。サービスの外注が不可能な場合は、残った労働者が以前よりも条件の悪い新たな雇用契約を結ばされた。
走行距離や積み荷量に応じたシステムのもとに勤務するドライバーがその典型的な例だ。長時間労働を強いられ、家族から離れている時間も数週間、時には数ヵ月と長くなるからだ。こうした労働環境が疲労を蓄積させ、道路事故の多発は避けられない。
このような悪状況下では、例えば、売春目的のセックスワーカーと無防備なセックスをするなど、ドライバーが切羽詰った行動を取る傾向が高まる。これによって確実にHIV/エイズの蔓延率は高くなる。民営化後に感染率が急増したと聞いても驚かない。現在、企業は、従業員の賃金に加え、治療費や死亡給付という形で、経済的にその犠牲を払わざるを得なくなっている。

変化のためのストライキ

アブナール・タビュディ・ラマグコロ(南アフリカ運輸合同労組(SATAWU)所属。ITF小地域コーディネーター)
南アフリカで陸上貨物輸送産業の取り組み「エイズと向き合うトラック輸送」が1999年に立ち上がった際、路上に10ヵ所の健康センターが設置され、同時に2つの移動式健康センターも用意された。
約14万人に意識向上教育を提供し、300万個のコンドームを配布し、5万人のエイズ患者が健康センターを訪れた。
しかし、このプロジェクトを今日の状況までもってくるのは決して容易な仕事ではなかった。1993から1999年にかけては、自らが犯したのではない原罪の責任は取れないと主張し、HIV/エイズについて語りたがらない使用者と激しい交渉を展開した。1999年、最終的に組合員を動員し、スト実施の準備を進める決意をした。ストの前夜、緊急に陸上貨物輸送使用者協会と運輸大臣の会議に参加するように呼ばれ、その会議が終わる頃には、エイズ政策の実施に関する原則合意が調印された。
最近では、運輸会社はこのプロジェクトの擁護者だと主張している。これが当プロジェクトを開始することになったいきさつだ。各社が雇用する従業員数に比例して支払う税金という形で、使用者も従業員と同じ額を負担し、プロジェクトに必要な資金をまかなう。また、エイズ政策の実施に関する原則合意は拘束力をもつもので、強制的に実施させることもできる。

遺児を支えて

モヨ・シブシシウェ
(ジンバブ鉄道合同労組 地域組織化担当部長)

私たちの組合では、組合費の一部を拠出して遺児救済基金という基金を設立することにした。この基金は、元来、終末期にある交通運輸労働者とその家族(遺族)を支えるためのものだった。しかし、子供たちこそ未来であるとの考えから、現在、活動の重点を遺児救済に置いている。救済の手を差し伸べなければ、遺児たちはエイズが理由で学校を中退せざるを得ず、教育を奪われることになる。子供が両親(または片親からでも)愛や思いやり、導きや知識を得ることができなければ、世代から世代へと伝授される知恵が途絶えてしまう。私たちはこの基金を継続することと、交運労働者の遺児たちのための活動を拡大することを決意した。

権利の協約を確保する

ムゲニ・オウマ・ナプタル
ウガンダ運輸一般労組(ATGWU)

1999年にFNVの助成を受け、ITFが実施した試験プロジェクトに続いて、わが組合でもHIV/エイズに関する職場政策の策定に成功した。今日まで、この職場政策を20の個別の団体協約に盛り込むことができている。また、地域社会内での意識向上を図る4つの地元密着型の団体の設立にも貢献した。これらの団体は、休憩に立ち寄る長距離トラックの運転手にも活動の範囲を広げている。
中には、HIVに感染していることを公表した組合員に無料で抗レトロウィルス薬を提供している企業もある。情報の秘匿性はもちろん守られるべきだが、これについても組合が交渉の末、団体協約に盛り込むことに成功した。組合は、職場がどこであれ、職場のHIV/エイズに関する職場政策をあらゆる協約に含めることを重視してきた。また、必要な資金を確保できれば、連絡事務所兼休憩所をブシアとマラバの2つの国境地点に設立することも目指している。

ラゴス‐アビジャン回廊(コリドール)プロジェクト

ナチ・カボール
ITFフランス語圏・小地域コーディネーター

これは、HIV/エイズと闘う意欲のある国々、すなわちニジェール、マリ、カメルーン、トーゴ、コートジボワール、マダガスカルのITF加盟組合のための地域プロジェクトである。これらの国々の交通運輸労組の大半が組合員の行動様式を変化させることを目指した活動を既に行っている。
目下の重点活動分野は、意識向上を継続的に促進すること、職場政策の策定への使用者の参加を促すこと、団体協約交渉である。団体協約には治療や介護、患者・感染者の支援、差別の撲滅と恥のイメージの払拭についての条項も盛り込まれるべきだ。このプロジェクト初の活動が間もなくスタートする。

ジェンダーの側面を考えることが不可欠

ジュヌビエーブ・ムカンデケンジ
ITFフランス語圏・HIV/エイズプロジェクト・コンサルタント

HIV/エイズの問題を考える際、ジェンダーの側面を考慮することが不可欠であり、このことは最善慣行セミナーの全ての参加者が確認した。交運労組の指導者は、社会において男女双方が果たす役割がエイズのあらゆる側面に関係していることをよく認識している。通常、女性は安全なセックスをしたいと交渉することは難しく、その結果、感染し、社会的な恥辱のイメージに苦しめられることになる。また、家族の世話をするのは主に女性であるため、家族に患者・感染者がいれば、その家庭の女性の負担が増えることになる。
女性の中でも特に若い女性は、ジェンダー差別的な暴力を受けやすく、またセックスを強要されやすい。こうした理由から、女性の感染リスクが高くなっている。ジェンダー主要課題化の最善慣行について情報を共有したセミナーの終了時には、参加者全員が自身の活動の中でジェンダー問題を主要課題化させる決意を表明した。ジェンダー平等に関して前進することが、全世界的に見て、エイズの広がりや蔓延の程度を抑えることにつながる。未来は希望に満ちている!

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ケマル・ウルカーによるインタビュー。
 
 
INDEX
ITF協約の恩恵
自動車船の労働条件に関する国際調査の結果を報告
トラックを運転する女性たち
女性のための運転技術向上プログラム
非難される救助
海難救助で船員は犠牲を強いられている
世界銀行の思惑
交通運輸改革に直面する労働組合への助言
人間らしい働き方を目指して
歴史的なゲートグルメ争議
HIV/エイズ問題の主要課題化
エイズとの闘いに組合はどれだけ成功しているのか
誰でも使える都市交通?
欧州公共サービス自由化の影響
ケニア鉄道の新たなるスタート
大量人員整理は必至
世界貿易はいつ約束を果たせるのか?
「WTOは香港閣僚会議で開発を最優先させるべき」とガイ・ライダー
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