組合活動家、HIV/エイズとの闘いを語る。 民営化の影響 アンドリュー・バンダ(ザンビア運輸労組(NUTAW)副書記長) ザンビアでは、民営化が90年代初頭に始まった。組合は大規模な外注化と大量解雇を経験してきた。サービスの外注が不可能な場合は、残った労働者が以前よりも条件の悪い新たな雇用契約を結ばされた。 走行距離や積み荷量に応じたシステムのもとに勤務するドライバーがその典型的な例だ。長時間労働を強いられ、家族から離れている時間も数週間、時には数ヵ月と長くなるからだ。こうした労働環境が疲労を蓄積させ、道路事故の多発は避けられない。 このような悪状況下では、例えば、売春目的のセックスワーカーと無防備なセックスをするなど、ドライバーが切羽詰った行動を取る傾向が高まる。これによって確実にHIV/エイズの蔓延率は高くなる。民営化後に感染率が急増したと聞いても驚かない。現在、企業は、従業員の賃金に加え、治療費や死亡給付という形で、経済的にその犠牲を払わざるを得なくなっている。 変化のためのストライキ アブナール・タビュディ・ラマグコロ(南アフリカ運輸合同労組(SATAWU)所属。ITF小地域コーディネーター) 南アフリカで陸上貨物輸送産業の取り組み「エイズと向き合うトラック輸送」が1999年に立ち上がった際、路上に10ヵ所の健康センターが設置され、同時に2つの移動式健康センターも用意された。 約14万人に意識向上教育を提供し、300万個のコンドームを配布し、5万人のエイズ患者が健康センターを訪れた。 しかし、このプロジェクトを今日の状況までもってくるのは決して容易な仕事ではなかった。1993から1999年にかけては、自らが犯したのではない原罪の責任は取れないと主張し、HIV/エイズについて語りたがらない使用者と激しい交渉を展開した。1999年、最終的に組合員を動員し、スト実施の準備を進める決意をした。ストの前夜、緊急に陸上貨物輸送使用者協会と運輸大臣の会議に参加するように呼ばれ、その会議が終わる頃には、エイズ政策の実施に関する原則合意が調印された。 最近では、運輸会社はこのプロジェクトの擁護者だと主張している。これが当プロジェクトを開始することになったいきさつだ。各社が雇用する従業員数に比例して支払う税金という形で、使用者も従業員と同じ額を負担し、プロジェクトに必要な資金をまかなう。また、エイズ政策の実施に関する原則合意は拘束力をもつもので、強制的に実施させることもできる。 遺児を支えて モヨ・シブシシウェ (ジンバブ鉄道合同労組 地域組織化担当部長) 私たちの組合では、組合費の一部を拠出して遺児救済基金という基金を設立することにした。この基金は、元来、終末期にある交通運輸労働者とその家族(遺族)を支えるためのものだった。しかし、子供たちこそ未来であるとの考えから、現在、活動の重点を遺児救済に置いている。救済の手を差し伸べなければ、遺児たちはエイズが理由で学校を中退せざるを得ず、教育を奪われることになる。子供が両親(または片親からでも)愛や思いやり、導きや知識を得ることができなければ、世代から世代へと伝授される知恵が途絶えてしまう。私たちはこの基金を継続することと、交運労働者の遺児たちのための活動を拡大することを決意した。 権利の協約を確保する ムゲニ・オウマ・ナプタル ウガンダ運輸一般労組(ATGWU) 1999年にFNVの助成を受け、ITFが実施した試験プロジェクトに続いて、わが組合でもHIV/エイズに関する職場政策の策定に成功した。今日まで、この職場政策を20の個別の団体協約に盛り込むことができている。また、地域社会内での意識向上を図る4つの地元密着型の団体の設立にも貢献した。これらの団体は、休憩に立ち寄る長距離トラックの運転手にも活動の範囲を広げている。 中には、HIVに感染していることを公表した組合員に無料で抗レトロウィルス薬を提供している企業もある。情報の秘匿性はもちろん守られるべきだが、これについても組合が交渉の末、団体協約に盛り込むことに成功した。組合は、職場がどこであれ、職場のHIV/エイズに関する職場政策をあらゆる協約に含めることを重視してきた。また、必要な資金を確保できれば、連絡事務所兼休憩所をブシアとマラバの2つの国境地点に設立することも目指している。 ラゴス‐アビジャン回廊(コリドール)プロジェクト ナチ・カボール ITFフランス語圏・小地域コーディネーター これは、HIV/エイズと闘う意欲のある国々、すなわちニジェール、マリ、カメルーン、トーゴ、コートジボワール、マダガスカルのITF加盟組合のための地域プロジェクトである。これらの国々の交通運輸労組の大半が組合員の行動様式を変化させることを目指した活動を既に行っている。 目下の重点活動分野は、意識向上を継続的に促進すること、職場政策の策定への使用者の参加を促すこと、団体協約交渉である。団体協約には治療や介護、患者・感染者の支援、差別の撲滅と恥のイメージの払拭についての条項も盛り込まれるべきだ。このプロジェクト初の活動が間もなくスタートする。 ジェンダーの側面を考えることが不可欠 ジュヌビエーブ・ムカンデケンジ ITFフランス語圏・HIV/エイズプロジェクト・コンサルタント HIV/エイズの問題を考える際、ジェンダーの側面を考慮することが不可欠であり、このことは最善慣行セミナーの全ての参加者が確認した。交運労組の指導者は、社会において男女双方が果たす役割がエイズのあらゆる側面に関係していることをよく認識している。通常、女性は安全なセックスをしたいと交渉することは難しく、その結果、感染し、社会的な恥辱のイメージに苦しめられることになる。また、家族の世話をするのは主に女性であるため、家族に患者・感染者がいれば、その家庭の女性の負担が増えることになる。 女性の中でも特に若い女性は、ジェンダー差別的な暴力を受けやすく、またセックスを強要されやすい。こうした理由から、女性の感染リスクが高くなっている。ジェンダー主要課題化の最善慣行について情報を共有したセミナーの終了時には、参加者全員が自身の活動の中でジェンダー問題を主要課題化させる決意を表明した。ジェンダー平等に関して前進することが、全世界的に見て、エイズの広がりや蔓延の程度を抑えることにつながる。未来は希望に満ちている!