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2006年1〜3月 第22号 |
■世界貿易はいつ約束を果たせるのか? |
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「世界中の貿易関係者には、彼らが貧困撲滅に真剣であることを証明する責務がある」とガイ・ライダーは言う。
もしそれがディーセントワーク(人間らしい仕事)と貧困撲滅を目指しているとするなら、世界貿易機関(WTO)交渉の現ラウンドは間違った方向へ進んでいる。
WTOドーハラウンドの成否は、それが世界中の貧困者や搾取されている人々に何を提供できるかにかかっていると世界中の市民は考えている。2005年10月、45カ国から集まった労働組合の指導者は、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国際労働機関(ILO)とともに、雇用創出とよりよい労働条件という目標をどうすれば達成できるかを話し合った。
労働運動が貧困撲滅にどう貢献できるかを世界の労働組合の指導者たちが考え始める一方、2005年12月に香港で行われるWTO閣僚会議に参加する政府の交渉者の肩には、ドーハの議論を再び前進させることを考えなければならないという責任がのしかかっている。さもなければ、ドーハラウンドは貧困撲滅の目標達成どころか、今後も悪化の一途をたどり、交渉の不透明性はますます増していくことだろう。ドーハラウンドで成果を出さなければならないことは誰もが分かっている。しかし、一体誰のために成果を上げるべきなのかという問題が残る。 |
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前進への障壁
途上国の激しい抗議にも関わらず、いわゆるスイス・フォーミュラ(途上国が自国の経済政策を自国の有利に決定することをより困難にする可能性のある提案)が未だに議題に上っている。途上国が経済を工業化させ、雇用を創設しようと努力しているまさにその時に、関税を急激に大幅に引き下げるというリスクは無視されている。
「我々は繊維および衣料品の自由化に関する合意の終了が引き起こした工場閉鎖や失業、経済ショックから何の教訓も学ばなかったのか?」と国際自由労連(ICFTU)アフリカ組織のローレンス・イーグルは貧困に関するILOフォーラムの席上で述べた。
「労働者は、経済再編の猛攻撃に耐えることを強いられながら、一方で、貿易がディーセントワークを提供し、貧困のサイクルを断ち切るきっかけを作ってくれるなどということを信じることはできない。WTOはその政策の結果、労働者が切り捨てられることがないように、適切な支援のしくみを設立すべきだ」とイーグルは語る。
サービスに関する交渉では、一部の先進国が依然として「提案のベンチマーキング(比較)」を押し付けようと躍起になっているが、これが自国政府による直接的な支配が最も必要と考えられている医療、水道、教育、交通運輸、通信などの分野における市場開放のために利用される可能性がある。
世界中で3,000万人の市民が貧困撲滅のために一つになり、前代未聞のキャンペーンを実施したその翌年に、不公正貿易の影響を最も強く受ける後発開発国のアフリカ諸国やカリブ海諸国の声に、世界の主要貿易国が以前よりもかたくなに耳を閉ざしてしまうようなことがあれば、これほど残念なことはない。これらの国々は、またしても体よくWTOの交渉から除外されてしまっているため、これらの国々の労働者は状況を変えるための真剣な取り組みがなされなければ、敗北せざるを得ない。 |
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ガイ・ライダーは国際自由労連(ICFTU)の書記長。 |
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ドーハラウンドを解明する
ブレンダン・マーティン
みなさんがこの記事を読む頃には、香港で開催された世界貿易機関(WTO)の第6回閣僚級会議の決着もつき、それぞれの視点により、成功、失敗、勝利、惨敗など様々に解釈されていることだろう。 WTOはその半世紀前に設立されたGATT(関税と貿易に関する一般協定)を引継ぎ、1995年に設立された。148カ国が加盟する、モノとサービスの貿易自由化の促進を図り、また貿易ルールを策定・実施させる機関でもある。
2001年以来、WTOはいわゆるドーハラウンド(新多角的貿易交渉)を妥結しようと試みてきた。ドーハラウンドはまた、貿易を通じて経済的、社会的発展を支援することを想定しているため、「発展のラウンド」とも呼ばれている。
様々な問題が議題として取り上げられ、複雑な一連の委員会、会議、その他2年ごとに開かれる閣僚会議の間に開催される様々な組織で議論される。WTOは、ドーハラウンドを今年中に終結するため、香港閣僚級会議において、農産物および非農産物の関税引き下げ、サービスの自由化で大きく前進することを期待していた。
しかし、ドーハラウンドはもともと、メキシコのカンクンで2003年に開催された第5回閣僚級会議で妥結する予定だった。1999年にシアトルで第3回閣僚級会議が開催された際には、激しい抗議運動と暴力沙汰が発生し、WTOが初めてニュースの一面で取り上げられたのだった。カンクン閣僚級会議では、そのような抗議行動は起こらなかったが、それでも交渉は決裂した。
ITFもその一部をなす国際労働運動は、12月の香港閣僚級会議の準備期間や現地香港においても、貧困撲滅、公共サービスの保護、労働基準の促進などの一連の要求事項を掲げ、激しいロビー活動を展開した。また、WTOの意思決定における透明性と民主性の改善も求めて継続的なキャンペーンを行ってきた。
ITFは独自の活動に加え、国際自由労連(ICFTU)や貧困撲滅のためのグローバルコール(GCAP)関連のより広範な市民団体と協力し、活動を展開してきた。
本誌の次号には、香港閣僚級会議の結果とそれが交通運輸労働者と交運労組にとってもつ重要性についての分析が掲載される予定。 |
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