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2008年1〜3月 第30号 |
■勤労生活 |
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過酷な環境で働くアフガニスタンのトラック運転手
クリス・サンズは、アフガニスタンの過酷な地域でトラックの運転業務に従事しつつ、警官や暴徒の暴力的攻撃から身を守ろうと苦闘している運転手たちに話を聞いた。
アバド・カーンは、世界中で、おそらく最も美しい、しかし最も過酷な地域でトラック業務に携わりつつ、人生の大半をアフガニスタンの道路で過ごしてきた。
30才になったカーンと彼の同僚は、仕事を通じて、めったに人が経験できないし、聞くこともできないアフガニスタンの実像にふれることになった。それは、あまり見たくはない姿であった。
「われわれは、警官の制服を着た犯罪者に賄賂を支払わなければならない」「日中、彼らは警官の制服をスマートに着こなしている。しかし、夜になるとタリバンに豹変し、運転手の鼻や耳をそぎ落とす。本当のタリバンだったら、こんなことはやらない」とカーンは語る。
トラック運転手は、この地域の状況を示す重要なバロメーターである。業務を通じて、国中を回っているからである。
タリバンが最初に権力を手中に収めた1990年代半ばには、アフガニスタンの道路は、無法地帯となっていて、軍閥の違法な検問所があちこちに作られていた。タリバンは、こうした状況に対応して力を握ったのである。 |
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悪質な攻撃
当時アフガニスタンを移動することは、ギャンブル以外の何物でもなく、交通運輸産業に携わる人々は、ムラー・モハメド・オマールの軍閥に頼ろうとした。品物を運ぶのに、治安の安定が絶対に必要だったからである。
今日のトラック運転手の話を聞くと、歴史が繰り返されている危険がある。
「タリバンが政権を握っていた当時と今では、陸と空ほどの違いがある」と、61才のハジ・モハメッド・アミンは言う。
「今われわれは、生きることが嫌になっている。生きることを嫌がっているのに、どうやって人生を楽しめというのだ。われわれにとって、人生とは何なのか?当時は、生きることに意味があったが、今は何もない」。
今年、アフガニスタンの国中に暴力が拡大し、カーンやアミンの仲間が犠牲になった。
首を切断されたトラック運転手の死体が捨てられているのが、南部ザブール州で見つかっている。また、東部ナリスタン州では、少なくとも3人のトラック運転手が鼻と耳を切り落とされた。
役人は、これはタリバンの仕業だというが、トラック運転手たちは暴徒たちがやったとは思っていない。万一そう認めたとしても、運転手の生活と安全に対する大きな脅威は、警官だと主張する。
カーンとアミンは、自爆攻撃が過去に何度か起こったカブールのジャララバード道路脇で、昼食を取るために仲間と一緒に座っていたが、居合わせた者の全てが、警官を忌み嫌い、恐れていた。
ラフラと呼ばれるそのうちの一人は、たった一晩の間に、しかもわずかしか離れていない地点で、3度もそれぞれ違う警官に賄賂を払わなければならなかった経緯を紹介した。外国軍へ貨物を運ぶ際、暴徒たちに襲われることはあっても、アフガニスタンの生活はタリバンに支配されたほうがはるかにまし、と彼は主張する。
「私の夢は、政府がタリバンによって掌握されることだが、アフガニスタンはアメリカの財政援助を必要としているから(難しいだろう)」と、5才の子供を持つ彼は言う。
パキスタンに拠点を置き、アフガニスタンに補給品を運ぶトラック運転手は、増税と道路上のゆすり・たかりに抗議して、今年、ストライキを決行した。23才のパキスタン人、アンワール・アリは、スト開始の前に、私に話しかけた。
彼は、民間企業で働いていることを示す偽造書類を携行しているが、実際は、頻繁に米軍に物資を運搬している。暴徒がトラックに火をつけるのを目撃しており、危険は冒したくないのだ。しかし暴徒たちは実際のところ、心配の種にはならない。
「タリバンが問題なのではない。警官が最大の問題である」とアリは言う。 |
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賄賂
運転手たちは、賄賂として1ドルから60ドルの賄賂を支払う。彼らの話では、警官は燃料トラックを片側に寄せ、その燃料から自分の車のガソリンを満たす。さらに、運転手仲間の身体を暴力的に扱い、車のミラーを割ったり、ウィング・ミラーを壊したりしている。
アシフ・ヘマートは、タリバンの標的になっていると知り、外国軍への補給物資の運搬を中止した。しかし今や彼は、守ってくれるはずの制服を着たアフガニスタン人について悩まなければならない。
「今が、私の人生で最悪のとき」と27才の彼は語る。 |
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クリス・サンズは、2005年8月以来アフガニスタンに住む英国のフリー・ジャーナリストである。 |
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