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グローバルユニオン

2006年10〜12月 第25号
■ITF世界大会、よりグローバルな活動を約束
 
ITF世界大会、よりグローバルな活動を約束

8月に南アフリカのダーバンで開催された第41回世界大会において、ITFはますますグローバル化する世界で、活動をさらに拡大していくことを約束した。

大会はITFの最高の意思決定機関である。8月2〜9日に行われた議論を通じ、全世界387組合から集結した1,194人が、向こう4年間に「グローバルな組織化へ:権利のための闘い」と題する戦略的プログラムを実施していく権限をITFに託した。関連する3本の決議とともに採択された同プログラムは、特にグローバル・サプライチェーンの中で交通運輸労働者が果たす重要な役割を考慮しながら、国際連帯の力をさらに強化・拡大していくことをITFに約束させている。
「グローバルな組織化へ」プログラムにより、特定企業や戦略的サプライチェーン、戦略的交通ハブ、特定産業を対象にした新たなキャンペーンと組織化プロジェクトが開始される。この中で重要なのが、既に始まっている組合の組織状況のマッピング(勢力地図づくり)と組織化の対象となる地域を突き止める作業になる。同プログラムには、民営化や自由化の代替案を考案し、地域経済ブロックの台頭に対応するための戦略を構築することを通じ、組合に国際金融組織と対決する力を備えさせるという役割もある。
同プログラムはまた、新自由主義的グローバル化とその人権や労働権面での影響と闘う広範な市民運動と協力することもITFに託している。ここでは、組合が自らを適応させ、新しい労働者を組織化するために実践的に行動することが想定されている。ITFと加盟組合は、教育活動やキャンペーンにおいて、戦略的使用者や、インフォーマル労働者、日雇い(カジュアル)労働者、自営労働者など、これまで組織化の対象から外れてきた主要な労働者グループに注目していくことになる。
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その他の決定事項

ITF内部組織の強化を目指す決議では、グローバル組織化戦略がITFに及ぼす影響も考慮され、戦略を実施するにあたり、資源の重複を最小限に抑え、資源を最大活用し、全組織的にその進捗状況を評価することを目指した組織の見直しも求められている。
世界大会では、世界中の港湾で人間らしい労働条件を確保するためのキャンペーンも立ち上がった(25〜28ページ参照)。また、大会代議員は、全会一致でHIV/エイズと闘う世界キャンペーンの立ち上げを承認した。このキャンペーンは、2006年12月1日の世界エイズデーから実際に動き出すことになる。
世界大会が実施を決定した取り組みは以下のとおり:

南アフリカ運輸合同労組(SATAWU)のランドル・ハワード書記長がITF新会長に選出された。
グローバル交通運輸産業の主要問題について加盟組合に情報を提供する電子情報サービス「私のITF」が立ち上げられた(5ページ参照)。
アフリカ大陸全体を対象とした初の民間航空枠組みプログラムが承認された。
民間航空産業における疲労に関する12ヵ月研究プロジェクトが支持された。
大会当時継続中であった中東紛争を非難し、即時停戦を求める緊急決議が採択された。同決議はまた、人道面の取り組みを支持し、レバノンの交運労組が破壊されたインフラを再建・復興する上での支援をITFに求めている。また、中東の恒久的平和は国連決議と、「平和への道程表(ロードマップ)」を通じ、イスラエルとパレスチナの二国共存による解決を完全に実施することを通じてしか実現し得ないと述べている。
イランバス労働者の権利侵害に抗議するITFと国際自由労連(ICFTU)のキャンペーンを支援し、逮捕されたテヘランバス労組のマンスール・オサンルー委員長の解放を求める緊急決議も採択された。大会閉会の10分前に、オサンルー委員長解放のニュースが会場に届いた(5ページ参照)。
若年労働者に関する動議の中で、ITFは若年労働者のための活動を開始すると約束した。
国際労働運動に大きな貢献をした人々に金バッジが授与された(「尊き活動家たち」を参照)。最終日の全体会議では、ムンバイ、ロンドン、マドリードにおける一般市民を標的としたテロ攻撃が糾弾され、緊急救援サービスや交運労働者のプロフェッショナルで勇敢な対応への賞賛も寄せられた。

その他、以下を求める決議が採択された:

加盟組合が人権や労働組合権を尊重する企業に投資することを支援する。
ITFと加盟組合が女性の参加に優先的に取り組む。
ITFは、中国の交運労働者との連絡をさらに強化する。
パキスタンで労働組合権を強化する取り組みを実施する。

再選されたコックロフト書記長は、閉会の挨拶の中で、「今大会は、ITF歴史上、参加者が最も多く、最も効率的かつ最も多くの組織から代表者が集った大会となった。100カ国以上から一堂に会した参加者は、ITFがより実際の行動を重視する組織になるよう求めている」と述べ、ホスト組合のSATAWUに謝辞を述べた。
「ITFは、組織化と労働組合権のための闘いに備え、決断した。これにより、世界中の交運労組が強化されることになろう」と書記長は語った。
−産別部会へ付託された決議を含む大会に提出された決議の一覧は、www.itfglobal.org/congress/resolution.cfmで閲覧できる。
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ランドル・ハワード、新会長に

アフリカで開催された初の世界大会は、ランドル・ハワード南ア運輸合同労組(SATAWU)書記長を初のアフリカ出身のITF会長として選出し、幕を閉じた。
会長就任の挨拶の中で、ウムラオマル・プロヒット前会長から会長職を引き継いだランドル・ハワード新会長は、「SATAWUはITFの国際運動が労働運動にとって戦略的重要性をもっていることを認識している。グローバル資本に最も効果的に対抗する方法は、グローバルな組織化とグローバルな組合活動であることを認識している」と語った。
ハワード新会長は、ITFとITFよりも小規模の国際運輸労連である国際労連(WCL)の交通運輸部門(FIOST)の間で現在進行中の統合のプロセスにも言及し、「この動きにより、単一組織のもと、世界レベルで交通運輸労働者がより大きな声を上げることができるようになる。その結果、より効果的に使用者と対抗できる」と述べた。
「新たな加盟組織が加わり、またITFが特に女性や若年労働者の組織化に重点を置くと決意したことから、ITF がさらに拡大することを期待している」
ハワード新会長は、8年の任期を終え、退任する全インド鉄道員連盟(AIRF)のプロヒット前会長が果たした重要な役割についても言及し、「プロヒット前会長は、優れたリーダーシップを発揮し、代議員が率直に議論できるよう取り計らった。ITFは一様な組織ではないため、前会長の寛容に満ちた議事裁きが実に重要だった。ITFは、難問を話し合う能力をもつ必要があり、また、問題に対し、実効性ある解決法を見出す必要もある」と語った。  
新会長の優先事項には、ITF女性プログラムの支援も含まれる。「女性の進出について、もっと計画的に議論を進める必要がある。女性が組合の活動、ITFの機構、主導的地位などにより多く参加できるようにしなければならない」と述べた。
新会長は、ITFがHIV/エイズと闘うための世界キャンペーンへの取り組みを約束したことについて次のように述べ、就任の挨拶を締めくくった。「大会で採択されたHIV/エイズに関する決議は、ITFのこれまでの取り組みを拡大するものであり、我々は活動をさらに強化しなければならない。2010年の大会は、成果が上がらなかった理由を話し合う場ではなく、過去4年間で上げてきた実績について報告する場にしなくてはならない。ITFはHIV/エイズとの闘いへの投資をできるだけ効果的に行っていかなくてはならない」
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労働運動統合の新たな動きを歓迎

今大会では、ITFよりも小規模の国際運輸労連である国際労連(WCL)の交通運輸部門(FIOST)の加盟組織をITFの加盟組織として受け入れることが全会一致で承認された。
国際自由労連(ICFTU)、国際労連(WCL)、複数のナショナルセンターが統合し、新たな国際労働組合センターを設立する動きは、労働組合運動の統合へ向けた重要なステップと見なされている。
ITFのデビッド・コックロフト書記長は、「FIOSTとITFの両組織は自由な交通運輸労組を代表している。ITFはFIOSTをITFの仲間として受け入れたい。ITFは国際金融機関や国連諸機関などとも常に連絡を取っている。労働組合の声が一つにまとまれば、物事はよりスムーズに進むことになる。労働運動が攻撃にさらされている今、我々は反撃に出なければならない。その上でも団結は大きな力になる」と述べている。
また、FIOSTのマイケル・ボビー会長は、「我々は遂に労働者を結束させる方法を見出した。結束こそが組合を弱体化させるのではなく、強化させるための原則であると考えるべきだ。ITFとFIOSTは交通運輸労働者として共に闘うためのグローバルプログラムを実施する必要がある」と述べた。
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貢献者たち

世界大会の閉会式では、ITFに最も貢献してきた組合活動家と職員の表彰が行われた。彼らのこれまでのITFへの貢献を称え、11名に金バッジが授与された。受賞者には、退任するウムラオマル・プロヒット前会長とこの12月に退任予定のベン・ウドク・アフリカ地域部長も含まれた。
その他の受賞者は下記のとおり:

■ピーター・バラノスキ(ドイツ、ヴェルディ労組)
■ディータ・ベンツェ(ドイツ、ヴェルディ労組)
■ジョン・バワーズ(米国、東海岸港湾労組)
■ケース・マーギス(前ITF港湾部長)
■デーブ・モーガン(ニュージーランド、海事組合)
■ビル・モリス(英国、運輸一般労組)
■ピーター・サンド・モーテンセン(デンマーク、3F労組)
■フランシス・マングルー(トリニダードトバゴ、SWWTU)
■リチャード・ロッサ(英国、TSSA)
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献身的な国際主義者

ウムラオマル・プロヒット(上写真右)は、ダーバン大会でコックロフト書記長から記念横断幕を贈呈された。プロヒットは、過去50年以上にわたり、インドの労働運動に積極的に関わってきた。インドの鉄道員として組合活動を始め、1958年、30歳でインド西部鉄道職員労組の書記長に就任した。1962年には、全インド鉄道員連盟(AIRF)の書記次長に選出された。
1985年からは、インドのナショナルセンター、インド労働者連盟(HMS)の会長も務めている。また、1980年にAIRF会長に就任し、現在に至っている。ITF活動にも40年関わってきた。1998年のニューデリー大会でITF会長に就任した。バンクーバー大会では、再選され、ITF会長職を二期務めた。
多くの賛辞がプロヒットに寄せられた中、ICFTUのガイ・ライダー書記長は、プロヒットを「卓越したITF会長で、インドの鉄道労働者の偉大なる指導者、かつ献身的な国際主義者」と賞賛した。
以下は、プロヒット前会長が労働者の連帯について語った挨拶からの抜粋である:
「インドでも世界各国でも、労働者は長らく労働運動の統一を求めてきた。労働運動の統一とは、労働者を説き伏せ、意思に反して一つの労働組織に加入させることではなく、同一の価値観と原則をもつ組合同士が組合員の権利を擁護・促進するため、ともに活動し、これまで以上にしっかりと使用者や政府と対決していくことを意味する」
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