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2006年10〜12月 第25号
■ともに脅迫と闘う
 
ともに脅迫と闘う

オチエング・オゴドは東アフリカの路面交通運輸労働者組合の間で広がる国境を越えた新たな動きを伝える。

一人の長距離トラック運転手が、ナイボリ−ナクル高速道路沿いのサルガでブレーキをかけ、大型で埃だらけの長距離貨物トラックがゆっくりと止まる。しみのついた服を着たやつれた風体の運転手が車から出てきて、モンバサ港から陸路で12時間に及ぶ運転の後に休憩する場を求めてあたりを見渡す。
モンバサは東アフリカと北方輸送回廊における海運の主要玄関口にあたる。港と東アフリカ地域の国々をつなぐ鉄道と陸路のネットワークがここから始まる。
この道は遥か遠く、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ共和国(DRC)、北タンザニア、南スーダンまで貨物を運ぶトラック運転手を迎える。間もなくエチオピアもこの中に加わろう。ここで生計を立てていくのはきつい。賃金は通常低く、雇用は不安定であるし、労働者にはほとんど権利も福利もない。
運転手は絶えず警察官や、国境警備官のいやがらせ、脅し、ゆすりに遭う。長旅の間の休息や気晴らしといった類のとり決めはまず無く、例えばトラックへの重量制限を越えた積荷というような危険な労働慣行をしばしば使用者から強要される。
しかし、長距離トラック運転手協会と労組はITFの支援を受けながら、状況改善に役立つ協力的な取り組みを新たに作り上げつつある。
 
回廊での協力

1980年代に、ケニア、ウガンダ、タンザニアは、地域の貨物と旅客が円滑に流れるよう途上の障害物を根絶することを目的として北方回廊輸送協定を締結した。回廊は全長7,000キロに及ぶが、今やコンゴ共和国のキサンガニにまで達している。この回廊はここを利用する運転手の労働条件改善にむけた共同作業の目下の焦点になっている。
ITFはケニア長距離トラック運転手協会(KLDTDA)、ウガンダ交通運輸・一般労働者合同組合、ウガンダ長距離・重量トラック運転手協会、タンザニア通信運輸労組などの組織との間で新しい取り組みに合意した。
今年6月、これら組織はナイロビでITFと米国労働者連帯センターの共催により合同作業部会を開催し、政府、使用者、労働者が回廊においてどの程度中核的労働基準を遵守しているかを評価していくこととした。
作業部会の後参加者は、長距離トラック運転手の労働条件を改善する闘いにおいて、相互の関係と協力を堅固にしていくことを目的とする覚書(MOU)に署名した。
目指す目的の中には、国境警備所において長々と続く通関手続きを撤廃することが含まれている。例えばケニア−ウガンダ国境にあるマラバとブジア、ケニア−タンザニア国境にあるナマンガ、ルワンダ−ウガンダ国境にあるガチア、ウガンダ・コンゴ共和国の出入り地点のカセセなどの国境警備所において、通関は異常な遅延と腐敗を助長してきた。
「遅延は運転手の社会的行動にも影響し、何かやることがないかとその場を離れがちになり、たとえばその場限りのセックスに身を任すことになる。そのため多くの運転手とその家族がHIV/エイズに罹患する結果となった」とITFアフリカ地域副部長のジョセフ・カテンデはいう。
覚書は、労働条件の改善が確保されるよう、また加盟組合員の人権と労働権が尊重されるよう協力し合うことを明記している。
この枠組みで関連組織は例えば腐敗行為を加盟組合員が見つけた場合には合図することを約束している。さらにまたお互いに更に協力し合って、今や業界にとって危機的問題となったHIV/エイズについて運転手を教育し、かつ彼らに情報を提供していく努力を行っている。
劣悪な労働条件と行程に配備されている警察官の虐待行為に抗議して数多くのデモが平和裡に進められてきた。これら虐待行為は関連当局が問題に目をつぶっている限りは続く。
ITFアフリカ地域事務所は10月9日から15日までのITF路面交通運輸行動週間を使って幅広くキャンペーンを行い、トラック運転手と彼らのサービスから便益を得ている人々に対して、労働者の権利とその現状についての理解を訴えた。
「われわれは運輸についてのデモ、ラジオの討論、テレビの公開討論、一般の人々への講座を計画してきた。目的は人々への情報発信である」とカテンデはいう。
この構想に参加している全ての組合は今までと同様に、行動日にそれぞれ個別にまたは共同で活動を行うことを支持している。例えばウガンダでは、国境警備員、警察、運転手、一般代表を一緒に国境地点に連れて行くことを望んでいる一方で、国境を越える同僚たちを支援する途を探し出しだそうともしている。
ウガンダの運輸・一般労働者合同組合の書記長デビッド・バリレインが次のとおり指摘するように、新しい動きには既に相互支援の積み重ねの歴史がある。すなわち、「昨年、我々は共同行動週間を実施し、国境に集まった。わが組合の代表はナイロビまで車で出かけ、ケニアの組合を労組として承認するよう訴えた活動を支援した」。
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共同歩調の早急な必要性

制度的な諸問題に取り組むためには、地域のトラック運転手労組同士の協力関係で新たな力を醸成していくことが早急に必要である。雇用契約の不在とあいまって、個々の問題に組合が代理で対応することがきわめて困難になっているからである。
組合は例えばモンバサからキサンガニやブジャンブラへの行程に不必要に多くの警察の検問所があるとしているが、そこは非公式な通行料支払い所となり、警察官はトラック運転手から賄賂を脅し取ろうとしていると見ている。
そこに計量台がある限り、どんなに規制を実施してみても腐敗が横行する。トラックには意図的に雇用者が重量制限を超えて積載し、運転手には警官が見てみぬ振りをするようにあらかじめ賄賂用のお金が渡される。これによって運転手はタイヤ破裂という深刻な身の危険にさらされることになるし、また規則違反を強制されることにもなる。
運転手は運ぶ積荷の量について何も言う権限を持たない。しばしば何を運んでいるのかさえ知らないのだから、重量など知る由も無い。
国によって運輸規則が違うこともまた悩みの種であり、運転手は時に知らずに法律の誤った理解をしてしまう。運輸規則の違反をとがめられ、もしくはもっと深刻な問題だが、積荷の虚偽申告を問われても、運転手は法的な代理人を得ることはないし、事故にあった場合も、医療保険にも死亡保険にも加入していない。
協力関係にある組合と協会は、現在それぞれの政府に対して陳情を行い、地域の運輸規則と法律の標準化を求めている。
これに関連して、回廊における均一の雇用政策の不在からくる差別待遇の問題がある。ウガンダのバリレインが言うように、「労働政策の不公正さを是正するには、均一なかつ地域全体を網羅する政策が必要」なのである。
例えばウガンダのトラック会社は、平均の月別賃金が10,000万ケニアシリング(138米ドル)という安い労働力を提供するケニア人運転手を好む。同時にケニアの会社ではもしもっと安い賃金を受け入れてくれるならタンザニア人かひょっとしてウガンダ人の運転手でも歓迎である。地域のいずれの国であっても外国人運転手は雇用者にとって魅力がある。なぜなら通常彼らはより低い賃金で我慢するし、自国運転手の同僚なら休憩無しに18時間から20時間もぶっ通しで働くことをよしとしないのに対し、これに文句を言う傾向は多分もっと低いからである。
同様にトラック所有会社が運転助手を解雇し、運転手一人に荷物を運ばせようとする最近の傾向に関しても、それを受け入れていく可能性が高い。このことにより運転手はトラックのタイヤ交換など通常は二人で行う作業を一人でこなさなければならなくなるだけでなく、強盗に襲われたりしたときにはより弱い立場に立つことになる。強盗は道路の隆起したところとか小高い丘といった攻撃目標でコンテナを略奪する目的で襲ってくる。
運転手たちは特に自国以外において、手ひどい差別待遇を受ける。事故や犯罪的な攻撃にあった場合でさえ、とがめ立てから逃れるためには高額の賄賂を支払うものと共通して期待されている。事故の後、運転手が不可解な状況下で死亡した事例が、地域の組合には何件も記録されている。
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地域ぐるみの保護のために

1980年代にITFは、 故郷から離れ、それゆえ自らの国の組合からも離れて働く運転手を助けようとする各国組合間の協力を促進するために、国際運転手身分証明書を作った。しかし、この制度は多くは組合間の調整と事務管理に伴う困難さから利用されなくなってしまっている。
協力体制の新たな時代を迎えて、運転手が国境をまたがって働く際、地域にある組合から助けを得るのに役立つ身分証明書やそのほかの仕組み作りの新たな機会がめぐってきている。しかしそのためには、組合の加入状況を改善し制度を改善し、さらにまた組合間の連携を強めていく必要がある。カテンデが言うように「制度が機能するためには、運転手たちはより十分に組織化された加入者の多い組合に加入する必要がある」のである。
一方において、覚書に署名した組合は可能な限り、事故や嫌がらせその他の問題にあっては、お互いの組合員を(彼らが組合や協会の組合員証を携行している限り)、援助しあうことが約束されている。
ITFの地域事務所は「組合が団結しこれらの問題に取り組んでいくために、技術的・精神的支援」を提供する決意を表明している。
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オチエング・オゴドは、ナイロビを拠点とする人権、労働権問題専門のジャーナリストである。
事例研究:ケニア、トラック運転手の難所

およそ7万人のケニアのトラック運転手は国の富の12%をもたらす貢献をしている。しかし、彼らが耐え忍ばなければならない労働(運転)条件は世界で最も過酷なものの一つといわれている。賃金は月当たり150米ドルが平均であり、アフリカ大陸のどこの運転手にとっても最低の部類に入る。しかもこの10年、これら運転手は労働組合の法的代表権を奪われ続けてきた。
ケニアの道路は、わずか18%が良好な状態に保たれているに過ぎない。残りをまともな状態にするには10億米ドルがかかるといわれているが、これは現在予算措置されている額の10倍に当たる。一方で道路上の交通事故は年16%増加しており、昨年は2,500人が亡くなった。
ほとんどの道路はろくに舗装されておらず、余りにも多くのこぶや割れ目やくぼみがあるので、運転手は絶えず速度を緩め、いったん停止しなければならない。長距離トラック運転手にとって運転時間がいつも余計にかかることを意味するし、盗賊に暴力的攻撃の機会を与え続けていることになる。
回廊の主要近郊地域やその先のひっそりした広がりの中では、最近になって道路上の保護区に駐車したり、仮設休憩設備を作ることが認められるようになったとはいえ、快適なトイレとか宿泊所のような設備を持った指定駐車場には恵まれていない。
政府から労組として認められていないケニア長距離トラック運転手協会(KLDTDA)のニコラス・ムブガは「われわれは組合を今日必要としているのであって、明日では遅い」「結社の権利はわが国の憲法で保障されている」と述べる。
しかし組合の地位は無いものの、KLDTDAは、ケニアに組合権を求める動きに同調してきた地域の他の組合や協会との協力関係から受益もしてきている。
ケニア人トラック運転手がウガンダ国境のマラバを通過する際、2006年6月のワールドカップサッカー用に運輸・一般労働者合同組合(ATGWU)が作ったレクレーション施設を利用することができる。
これは当初は米国連帯センターの資金で作られ、強く望まれていた休息の場所を提供することになった。ワールドカップの試合が行われている間に運転手も、警察官も、国境警備員もテレビの周りに群がり試合を見守ることとなったため、地域共同体の関係強化を果たすことにもなった。ATGWUは、このセンターを開設し続けるため、新たな資金提供先を探しつつある。
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