国際運輸労連-ITF
メニュー トランスポート インターナショナル バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

2009年10〜12月 第37号
■被雇用者自由選択法
 
米国労働者の権利のための闘い

被雇用者自由選択法の制定により、米国企業による組合潰しや脅し行為がなくなるだろうか?

米国のニュージャージーでスクールバスの運転手をしているテレサ・ガレスと仲間は、最近、運輸労組に加入しようとした。現在、最低限の手当しか貰っていないが、これを改善したかったからだ。彼らには、病気休暇や休暇を取ることは許されない。家族全員を対象とする保険に毎月200ドルから500ドルを支払っているが、非正規労働者であるため、保険の恩恵もフルに受けることができない。毎月数百ドルもの保険料を支払っているにも関わらず、多額の医療費負担を求められる労働者は多い。つまり、組合に入れば少しは状況が良くなるかもしれないと思って組合の門を叩いたのだ、とガレスは言う。
しかし、使用者のダラム・スクールバスは、彼らが組合に加入しようとしている事をかぎつけると、毎週のように彼らを会議に呼んで組合加入をやめさせようとした。ある日、就業後にバスから降りると、ガレスは事務所に呼び出され、反抗的な態度を取ったとの理由で解雇を通告された。数日後、組合を擁護していた他の労働者も解雇された。
現在、ガレスは、この解雇は違法だとし、本件を全国労働関係局(NLRB)に提起し、闘っているが、一方で、収入や医療手当を貰わずに生きていかなくてはならない。
「大会社が私たちのような非力な労働者を踏みつけにするのを止めさせなければならない」とガレスは言う。
現在の米国の労働法では、労働者が組合に加入したいと考えた場合、労働者の過半数の賛成が得られた場合に投票を行わずに組合を承認する、いわゆるカードチェック方式を会社が許可しない限り、長々としたNLRBの組合承認投票を経なければならない。カードチェック方式によれば、職場の労働者の51%がその組合が労働者を代表して会社と交渉することを承認すれば、組合に入ることができる。
しかし、ダラム・スクールバスのような会社がカードチェック方式を承認する可能性は低い。カードチェック方式を許せば、延々と続く組合承認選挙の過程で労働者に嫌がらせをしたり、脅したり、といった時間稼ぎができなくなってしまうからだ。ガレスやガレスの仲間も認識しているが、NLRBの選挙プロセスは公平なものとは言えない。組合に支持票を投じたら仕事を失うかもしれないという恐れを労働者が抱いたり、あるいは労働者を怖がらせるために会社が言いふらす嘘八百を彼らが信じてしまうことにより、労働者が投票で組合加入を否決する可能性が高くなってしまう。
▲ ページトップへ
米使用者の度を越した嫌がらせ

国際労働組合総連合(ITUC)が行った労働組合権の侵害に関する第一回調査では、ダラム・スクールバスが連邦法に違反している事実が指摘された。例えば、「全国労使関係法(NLRA)のもとに保障されている権利を労働者が行使しようとした際、同社がこれに干渉し、会社に従うよう強要した」と書かれている。しかし、このように労働者を脅したり、嫌がらせをしたりする米国企業はダラム・スクールバスだけではない。コーネル大学の学者、ケート・ブロンフェンブレナーは、労働者の組合結成活動を数え切れないほど観察してきたが、彼女によると、米民間企業のうち:
■78パーセントが、職場の監督者との一対一の会議に出るよう従業員に強要し、組合敵対的な話をしている。
■51パーセントが、NLRBによる組合承認選挙が実施されたら、工場を閉鎖する、と言って労働者を脅している。
■75パーセントが、コンサルタントあるいは組合潰し担当者を雇い、組合結成の動きがないかを探らせている。
同様に、3月に発表された研究によると、労働者が組合結成権を行使しようとした結果、労働者が違法に解雇された事例が5件に1件以上は見られることが分かった。経済政策研究センター(CEPR)のこの研究では、2001年以降、組合結成運動が労働者の違法解雇につながる可能性は4件に1件以上である、と述べている。2007年までには、組合結成運動が少なくとも一人の労働者の解雇につながる割合は、3割近くに達した。2001年から2007年の間に、組合への支持を表明していた労働者が組合結成運動の中で解雇された割合は、26%に及ぶ。これは、1990年代後半の16%から見ると大幅な上昇である。
独立NGOのヒューマンライツ・ウォッチは、「米国労働法とその適用においては、企業が事実上何の罰を受けることもなく、労働者の権利を侵害する文化が形成されている。多くの企業が、組合結成活動を理由に解雇した労働者の未払い給与の支払いをお決まりのビジネスコストと見なすようになってきた。組合結成の指導者を排除し、組織化の取り組みを頓挫させるために必要なコストだ、と考えている」と報告している。
▲ ページトップへ
組合潰しと汚い手口

米国では、組織化を阻止しようとする会社に様々な支援が提供されている。実際、米国では、組合潰しは40億ドル規模の産業となっている。一群の労働者が組合を結成したいと訴えてきた時、米国の企業はしばしば、組合潰し専門業者にアドバイスを求める。これらの企業には、法律の内外で様々な汚いやり口をアドバイスする企業弁護士が、法外な報酬で大勢雇われている。
英国ハートフォードシャー大学の労使関係の専門家、グレゴール・ガル教授は、昨年米国を訪れたが、労働者が組合を結成しようとした際の米国企業の極端な反応についてこう語っている。「労使関係会議に出席するため米国に行ったが、米国に何故これほど組合敵対的企業が多いのか、理解に苦しんだ。組合敵対行為ということでは英国の会社にも酷いところがあるが、米国企業は完全に度を越している」
被雇用者自由選択法の反対陣営は、同法律を阻止しようと、2億ドルを費やして反対運動を展開している。このような反対運動は、組合真相センターなどといった一見無害な名前の団体を通じて行われたりする。一方、米国製造業協会や商工会議所、大企業は、巨額の広告費を支払い、テレビコマーシャルや主要新聞各紙で激しい被雇用者自由選択法批判を展開し、世論が同法に反対するよう仕向けようとしている。もっと重要なことだが、こうした企業は国会議員を頻繁に訪ねては、同法が今年議会で検討される際、これに反対するよう圧力をかけている。
米国で多額の資金を持つ大企業が組合の結成を阻止しようとしているというのは、何も大げさな話ではない。「In These Times」の最新号でアート・レバインが、組合潰しに大きく関っているジャクソン・ルイス弁護士事務所から派遣された2人の弁護士がラスベガスで行ったセミナ−に参加した経験を、詳細に報告している。「組合回避」と呼ばれる組合潰し産業に関わっている弁護士は、2,500人ほどだ。
団結し、組合を結成してより良い暮らしのために交渉するといった、法律で労働者に許されている権利を労働者が行使しようとした場合にこれを頓挫させる手口を、上述のセミナーで講師を務めた弁護士はくどくどと伝授した。ジャクソン・ルイス弁護士事務所の弁護士は、従業員の組合を形成する自由を否定するためには会社が積極的に立ち回れ、とアドバイスした。セミナーでの発言を、レバインは下記のようにまとめている:
■「職場主任が組合を形成したがっている労働者に同情するようなら」と言い、セミナーの講師を務めた弁護士の一人がネクタイを首のところまで押し上げ、「絞首刑」を意味するジェスチャーをした。
■「組合を組織し、ストを行ったために代替要員に職を取られ、失業した労働者の話を従業員にしよう。そう話すのは法律違反ではないからだ。この話がうそで、ストが行われたり、代替要員が準備されたりしたなどという事実がなかったらどうなるのか?それでも法律には違反していない。第一、全国労働関係局(NLRB)は、誰かがうそを言っているかいないかなど気にしていない」
■「現行の労働法では、組合をつくりたがっていることを理由に従業員を解雇することは違法なので、組合支持者を辞めさせる場合は他の理由を考えるようお勧めします」
▲ ページトップへ
組合潰しのグローバル化

ロンドン大学LSE校の元教授、ジョン・ローガン氏は、米国で数十億ドル規模に成長した組合潰し産業を研究しているが、この産業が国外に進出し始めていることを指摘し、次のように述べている。
「米国では、労働者の組合結成を阻止することだけに特化した産業が存在する。こうした産業で活躍するコンサルタントの一部は既に海外へ進出しており、英国や他の欧州諸国へビジネスを拡大しようとしている。このような組合潰し産業が、大西洋を超えて欧州で繁栄することは阻止しなければならない」
国際的な組合潰しに対して、より調整の取れた形で対抗するため、アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)とイギリス労働組合会議(TUC)が、両国で営業する組合潰し会社について情報を共有している。2008年2月には、AFL-CIOのジョン・スウィーニー会長とTUCのブレンドン・バーバー書記長が協力し、組合を結成して家族のために生活の向上を目指す労働者を企業が威嚇する行為を排除するための協定を結んだ。組合潰し会社の活動を制限し、組合潰し行為に関するデータベースの共有化を図り、「組合潰しの潰し」のための訓練資材なども作成するため、両団体は共同で各国の政府や関係する国際組織にロビイングしている。
被雇用者自由選択法はもともと2005年に米議会に提出され、続いて2007年と2009年にも提出された。2007年に同法案が投票に付された際は、党派を超えた支持を得て下院を通過した。この法案は、今秋、議会で再び検討されることになる。被雇用者自由選択法が成立しなければ、米国における組合潰しは急速に広がっていくだろう。全ての産業と同様、組合潰し産業もグローバル市場へ広がり、その産物を売り歩いていくことになるだろう。同法が成立しなければ、米国の労働組合員にとって大きな危険となるが、危険にさらされているのは米国の労働者だけではない。
▲ ページトップへ
リチャード・トルムカは米国のナショナルセンター、AFL-CIOの財務局長。本稿執筆中、アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)の会長選挙を闘っていた。(訳注:2009年9月のAFL-CIO大会でトルムカは会長に選出された)
本稿は雑誌「インターナショナル・ユニオン・ライツ」に掲載された記事の編集版。
被雇用者自由選択法とは

■被雇用者自由選択法により、労働者は組合に加入しやすくなる。
■同法案は2005年、2007年、2009年に議会には提出された。
■2007年に提出された際に同法案は幅広い超党派的な支持を得て、賛成多数で下院を通過した。
■今秋、米国議会は再度、同法案を検討することになる。
▲ ページトップへ
 
 
INDEX
船員の犯罪者扱い
声を上げるインド船員連盟
被雇用者自由選択法
米国の組合潰しと闘うAFL-CIO
旧態依然の経済危機
交通運輸フォーラムからの特別報告
気候変動
コペンハーゲンまでのカウントダウン
民間航空部会
創設60周年
暴力反対!
増加する職場での暴力に対する組合の対応
連帯の醸成
ITF加盟組織の国際的な相互支援活動
HIV/エイズと船員
HIV/エイズと闘う船員を支援する新プロジェクト
コチン港の闘い
コンテナターミナルの労働者の権利を守れ
一般
ニュース
勤労者生活:ノルウェー人漁船員アン・ジョルン・オルセン
論評:本号では・・・
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.