国際運輸労連-ITF
メニュー トランスポート インターナショナル バックナンバー
HOME
ITFについて
ITF−所在地
リンク
ITFニュースオンライン
>> 最新号はこちら
その他ITF情報
>> 最新号はこちら
 
国際運輸労連(ITF)機関誌
トランスポート
インターナショナル >>
最新号はこちら
シーフェアラーズ
ブルテン >>
最新号はこちら
 
ITFニュースオンラインバックナンバー
ITFニュースオンラインバックナンバー
東京事務所
〒108-0023
東京都港区芝浦3-2-22
田町交通ビル3階
地図はこちら
TEL:03-3798-2770
FAX:03-3769-4471
mail:mail@itftokyo.org
>> 詳しくはこちら

グローバルユニオン

2009年10〜12月 第37号
■暴力反対!
 
暴力反対!

増加する職場での暴力に対する組合の対応は?
クレア・クラークが報告する。


旅客部門の仕事は、やりがいがあり、適正賃金が確保され、安全であるべきだ。しかし、残念ながら、現実はそうではない。
現場の労働者は、悪化の一途をたどる暴力に直面している。民営化・規制緩和がサービスの低下や労働条件の悪化を招いているが、使用者や政府は労働者保護の責任を果たそうとしない。その結果、競合する企業グループ同士の激しい競争が繰り広げられ、現場が戦場と化すケースも現れている。
そして、様々な方面から暴力が発生する。輸送サービスが効率的に機能しないと、乗客は苛立ち、そのイライラの矛先を現場の労働者に向ける。労働者は長時間労働、人員削減、不安定雇用の圧力の中で疲弊しているのに、警察官の中には、法律の履行よりも賄賂に関心を抱いている者すらいる。
英国鉄道労組(RMT)が2008年に実施した調査によると、2007年、鉄道労働者が被害を受けた暴力件数は4,865件で、1日あたり13件に上る。2002年の3,179件に比べて50%増だ。英国以外の状況はさらにひどい。
交通運輸労働者にとって、暴力は日常茶飯事になっている。しかし、そうであってはならない。
▲ ページトップへ
暴力とは?

2003年の国際労働機関(ILO)のペーパーでは「職場暴力とは、従業員が業務に関連して、暴言を吐かれたり、脅迫されたり、暴行を受けたり、その他、攻撃的な行為を受ける事件と定義することができる。暴力には身体的なものも、そうではないものも含まれる。暴行、殺人、暴言、イジメ、セクハラ、人種的嫌がらせ、脅迫、精神的ストレスの付加という言い方もできる」とされている。
職場での暴力には、広義では、自殺やテロも含まれるだろう。セクハラもその一つだが、多くの事件が未報告のままとなっている。被害者は報告することで、仕事を失うことを恐れ、同僚も、残念なことに、事件を「仕事の一部」として、無視してしまう場合がある。
身体的暴力もあれば、精神的暴力もあるし、個別の事件もあれば、組織的な事件もある。また、目に見える暴力もあれば、隠れた暴力もある。
▲ ページトップへ
職場での暴力に立ち向かう

交通運輸労働者は職場での暴力の犠牲者だ。しかし、共に闘うことによって、これを阻止することができる。
まずは、仕方がない、という考え方を改めることだ。交通運輸労働者は組合と共に、暴力反対運動の先頭に立たなければならない。
沈黙が保たれることの多いこの問題を公にし、暴力を許容する考え方・態度を改めるには、意識啓発運動が不可欠だ。暴力や労働者の権利に関する組合の教育活動も大きな意味を持つ。
秘密性が確保された、適切で、明瞭で、かつ効率的な報告システムも重要だ。労働協約の中で、労働者の権利・保護を明確にし、完全に履行させることも必要だ。既存の法律を見直し、必要に応じて、改善することも求められる。
交通運輸労働者の組織化・動員も、職場での暴力反対運動を進める上で不可欠だろう。労働者が一体となり、地域で小規模の行動を重ねることにより、グローバルな運動の一端を担うことができる。組合は、政府や使用者に対して、「我々は一人ではない」というメッセージを発し、この問題に対する政府や使用者の責任を訴え、その上で、対策を講じるための交渉に入るのだ。
▲ ページトップへ
ITFの活動

ITFの内陸運輸部会は、公共交通現場の暴力に関して、2009年から一連の運動を展開している。組合による戦略的対応の構築が目的だ。組合の活動家や教育者が、問題を整理し、解決策を見出すための小冊子も作成した。労働者の意識啓発用リーフレットも近々配布する。
4月に実施した国際鉄道行動日のテーマも「暴力反対」だった。女性の鉄道・路面運輸労働者を対象に、暴力やセクハラに関する調査も実施している。
これらの活動は皆、ITF内陸運輸部会が実施している公共交通現場の暴力に関する運動の一環だ。(www.itfglobal.org/urban-transport/notoviolence.cfm
▲ ページトップへ
あなたができること

■職場会議を開催し、この問題について議論しよう。労働者の実際の経験を話し合うことにより、問題が顕在化する。現場の労働者こそ、リスクを分析し、解決策を見い出すのにふさわしい。
■あなたの組合の活動について、問い合わせてみよう。
■組合を通じて、問題の解決と労働条件改善を求める運動を展開しよう。
■ITFの路面運輸行動週間(10月)、国際鉄道行動日(3月)、世界女性デー(3月)、女性に対する暴力撤廃国際デー(11月)等の行事に参加し、独自の活動を展開しよう。
■公共交通現場の暴力に関するITFの小冊子やリーフレットを注文し、教宣活動、職場の運動、団体交渉等に活用しよう。(www.itfglobal.org/urban-transport/notoviolence.cfm
■女性鉄道・路面運輸労働者を対象にした、暴力やセクハラに関するITFの調査を職場で実施しよう(www.itfglobal.org/urban-transport
■現場労働者の経験や成功事例をITF内陸運輸部会に報告しよう。問題に対する我々の理解が深まり、ITFの運動・戦略強化にもつながるだろう。(http://tiny.cc/survey966
■団結しよう−組合に加入しよう。職場に組合がなければ、他の交通運輸労働者に活発な組合かどうか問い合わせ、そうであれば、その組合のために自分の職場を組織しよう。そういう組合がなければ、地域の労働者組織に問い合わせてみよう。
▲ ページトップへ
クレア・クラークはITF内陸運輸部会のパーソナル・アシスタント
デンマークの鉄道労組
政府・使用者との交渉で解決策を見い出す


デンマーク鉄道労組(DRWU)は、労働者を暴力から守る対策の強化について使用者および政府機関と合意に達した。
車掌への暴行事件が度々発生しているため、会社側は、一列車につき二人以上の車掌をつけることに合意した。
また、サッカーの試合の後など、混雑や集団暴行の恐れがある場合は、警備を委託することも合意した。
通信体制も改善されることになった。特に、携帯電話の不感地帯における、中央指令部との無線システムの改善や監視ビデオの設置により、職場の安全がより確保されるようになった。
また、学校や社会団体、警察を巻き込みながら、社会的行動の意識改革を呼びかける労使共同プログラムも開始された。
2007年には、組合、使用者、政府間の協力協定が締結され、2008年には違反者に対する法的制裁措置が盛り込まれることになった。
この協定は、治安強化のために必要な対策を決定するための委員会の設置を三者に義務付けている。また、事件への対応に関して、明確な手続きを設定し、この手続きの監視を政府の労働監査官が行うことになっている。
DRWUのヘンリク・ホラップ副委員長は、「組合同士の協力、特に、成功事例についての情報交換が必要だ。組合は組合員のために、引き続き、安全な職場確保に向けて努力していかなければならない」と述べた。

インドの鉄道労組
暴力事件のマッピングで、解決策を見い出す


南部鉄道労組(SRMU)が今年初めに実施した調査が、職場での暴力反対運動へと発展した。
職場委員のウマ・デヴィは、ムンバイで実施されたITFの暴力反対セミナーの一環として、チェンナイ地域の鉄道駅で労働者を対象に調査を行った。
調査結果によると、鉄道労働者の抱えている大きな問題は、特に発券システムが故障した時に、乗客から怒りをぶつけられることだった。
特に、女性従業員は被害に遭いやすい。乗客はサービスに問題があると、途端に暴力的になる。ある女性事務員は、列車の運行に遅れが出た時に被害にあった。利用客の1人が発券事務所の窓に石を投げつけ、その後、事務所に押し入り、金銭を強奪し、女性事務員に暴力を振るったのだ。
ある予約係の事務員は、その日の売り上げを会計事務所に運んでいた時に被害にあった。警察は助けてくれるどころか、この事務員を容疑者扱いし、拷問したため、組合が介入し、救助した。
1人の職場委員が実施した小規模の調査が、すばやく問題をあぶり出し、解決策を見い出し、今や、暴力反対運動へと発展している。組合の幹部もこの運動を支持しており、この運動によって、真の安全が確保されることを期待している。
▲ ページトップへ
ITF内陸運輸部次長エディ・ディクソン
暴力反対!

2009年4月28日、37カ国の鉄道・バス・タクシー労組、50組織がITF国際鉄道行動日に参加した。テーマは「暴力反対!」。公共交通現場の暴力に焦点があてられた。
世界各国の組合が、会議、展示会、労使交渉、シンポジウム、ビラ配り、集会、職場集会、演劇、怠業等、さまざまな活動を繰り広げた。行動日のために特別の活動を実施した組合もあれば、長期的な運動の一環として取り組んだ組合もある。全ての組合が、労働者とその家族や、一般市民に暴力が与える影響に焦点をあて、対策の必要性を訴えた。
ドイツでは、GDBAとTRANSNETが合同で17の鉄道駅で全国調査を実施し、3千人以上から回答を得た。両組合は調査結果を政府に示し、治安強化のための投資を訴えた。
ノルウェーでは、ITFに加盟するNJFとNLFが、特に夜間に増加している第三者加害に悩まされている鉄道労働者の窮状を政府と話し合い、刑法の改正を勝ち取った。これにより、鉄道、バス、地下鉄、タクシー等の民間会社の従業員にも保護が拡大された。
ウクライナのTURWTCUは、全国169の鉄道駅で暴力反対の啓蒙活動を実施した。また、職場での暴力の問題について、ITFの行動日や種々の活動に引き続き取り組むための二者協定が国営事業者との間で締結された。
インドネシアのSPKAの女性組合員は、演劇やクイズを実施した。また、女性労働者を対象にしたITFの調査票を配布した。
モンゴルでは、FMRWTUがウランバートル駅の前で、「職場での暴力をなくすために団結しよう!」のスローガンを掲げ、集会を実施し、チラシ4千部を国際便の乗客に配布した。
日本では、JR総連加盟組織が4月28日、暴力反対と安全をテーマに全国規模の運動を展開した。JR総連加盟組織がスローガンの掲載されたチラシ、バナー、べストを用意した。品川駅では、組合員約30人が朝のラッシュ時間帯にチラシ800枚を通勤客に配布した。JR総連は行動日当日、全国で23,000枚以上のビラの配布を計画していた。
ザンビアでは、NUTAWの組合員が運転手に話しかけたり、自由の女神像広場に向かって行進しながら、ビラを配布したりした。
バルバドスでは、バルバドス労組(BWU)が労働者を集めて、職場での暴力の経験について話し合った。また、バスターミナルで乗客や一般市民にビラを配布し、暴力反対を訴えた。
コロンビアでは、Anseinviasが団体協約交渉の際、ITF国際鉄道行動日の出版物を運輸大臣に手渡した。
▲ ページトップへ
www.itfglobal.org/campaigns/safetyfirst.cfm
 
 
INDEX
船員の犯罪者扱い
声を上げるインド船員連盟
被雇用者自由選択法
米国の組合潰しと闘うAFL-CIO
旧態依然の経済危機
交通運輸フォーラムからの特別報告
気候変動
コペンハーゲンまでのカウントダウン
民間航空部会
創設60周年
暴力反対!
増加する職場での暴力に対する組合の対応
連帯の醸成
ITF加盟組織の国際的な相互支援活動
HIV/エイズと船員
HIV/エイズと闘う船員を支援する新プロジェクト
コチン港の闘い
コンテナターミナルの労働者の権利を守れ
一般
ニュース
勤労者生活:ノルウェー人漁船員アン・ジョルン・オルセン
論評:本号では・・・
 
mail@itftokyo.org Copyright (C) 2004 International Transport Workers' Federation TOKYO All Rights Reserved.