2009年10〜12月 第37号 |
■連帯の醸成 |
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連帯の醸成
ITF加盟組織は支援し合い、学び合うことができると、マリアン・パウエルは言う。
2002年に東ティモールが独立した時、同国の労働組合運動の構築という差し迫った必要性があった。そこで、ITFに加盟するオーストラリア海事組合(MUA)は、東ティモールにおける交通運輸労組設立プロジェクトへの支援を申し出た。そして、ITFとMUAは、このプロジェクトに合同で資金を拠出し、管理・運営することで合意した。
ITF加盟組織は、財政力の弱い、新しい組合を支援する様々な活動に加わっている。財政的な支援だけでなく、知識や技術力の供与も同様に価値がある。組合が協力し合えば、双方に利益が及ぶことは明らかだ。
東ティモールのプロジェクトは、様々なITF加盟組織の国際連帯で支えられているプロジェクトのよい例だ。MUAの他にも、Industry Energy(IE)やSEKOが加わっているほか、ITFオフショア・タスクフォース・グループも協力している。教育や組織化に関する資金は、スウェーデンの国際連帯財団であるLO/TCOが賄っている。
地域の政情不安や様々な障害にもかかわらず、このプロジェクトは、交通運輸やエネルギー関連の労働者に対応する新組合の設立に成功した。これらの労働者は、組織化の重要ターゲットとされた。最新の統計によると、この組合の組織人員数は533人で、その半数が組合費を納めている。「オンショア(陸上)のエネルギー施設の組織化は成功しており、現在、オフショア部門のマッピングという難しい作業を実施中だ」とプロジェクト・コーディネーターのマーク・デービスは説明する。 |
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カリブ地域の団体協約
カリブ諸国の組合にとって、労使交渉は簡単ではない。グローバル化の影響で組合員数は減り、多くの技術が失われている。残った組合員もほとんど、あるいは全く訓練を受けておらず、活用できる技術や資源も限られている。
カナダ自動車労組(CAW)には、これらの組合を支援するための知識・経験がある。そこで、CAWはITFとの合同プロジェクトで、リサーチャーのビル・マーニガンを現地に派遣し、CAWがカナダ全国で締結した団体協約のデータベースに関する経験・技術について講義をした。
講義では、このようなデータベースを交渉担当者が利用できることのメリットが伝えられた。
「プロジェクトに参加しているCAWや他の組合の協約を活用して、我々が組織する港湾労働者の協約2つを改善しようとしているところだ」とプロジェクト・コーディネーターのアン・アンダーソン(ガイアナ事務商業労組)は言う。
参加者の多くが、組合の労使交渉に関する責任をより多く担うようになったと言っている。
事後の国内セミナーの開催が、非常にやりがいがあった、という人もいる。プロジェクトで学んだ団体協約に関するテーマが、国内セミナーに出席した活動家や労働者の興味を引いたほか、将来性のある活動的な労働者が組合活動に興味をもつのにも役立ったという。 |
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中南米のプロジェクト
中米の組合は、オランダの3F労組の支援を受けている。3Fは産業部門を問わず、姉妹労組が民主主義の原則に基づいて組合員の利益を追求する力をつけるための活動を実施している。
活動の主要テーマは、ジェンダー平等、女性の権利、賃金・労働条件に関する団体協約、ネットワーキング−意識啓発とコミュニケーション、労働組合の運営管理、ショップスチュワードの研修、安全衛生、職業訓練戦略である。
中米の交通運輸産業の中で、3Fはグアテマラの空港労働者(USTAC)やホンジュラスの港湾労働者(SITRAENP)、ニカラグアの港湾労働者(FTPN)に対する活動を行っている。
3Fのプログラム・コーディネーターのヨルゲン・ホブガードによると、プロジェクトによって、いくつかの組合の能力強化や、中南米地域の組合のネットワークおよびコミュニケーションの強化が達せられたほか、ITFに関する共通戦略も構築された。
「労組教育に関しては、教育活動の計画内容を労働者自身が決め、労働者の要求に見合った活動が実施されるようにしている。また、労働者自身をトレーナーに育てることで、活動の継続性を確保している」 |
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国際活動への参加を
国内的な組合が組合員に対して国際活動のメリットを説くのは容易ではないかもしれない。特に、困難な経済環境においては、組合員のニーズは緊急性の高いものに置かれるだろう。
しかし、国際協力に従事できる組合は成長する、とITFのアラナ・デーブ教育部長は言う。
「他の組合の運動の背景を理解することができる。プロジェクトの中には相互訪問が盛り込まれているものもあるので、他国の組合員と直接関係を築くこともできる。同一産業や同一企業内で、より直接的な労使関係を築くこともできるかもしれない。国際情勢や外交政策に関して、自国政府にロビーイングするのに役立つ情報を入手できることもある」
CAWのアニー・ラバユは、組合費がどのように使われ、なぜそれが重要なのかを組合員に説明することが重要だと主張する。
「1時間で1ペニー、1ヶ月で1.6ドル、つまりコーヒー1杯分の組合費を支払っていることに気付く。そして組合費がまとまったときに、それが何を意味するのかを知ることとなる。組合が国際的にどのような活動をしているのかを知れば、組合のことを誇らしく思うだろう」
英国の組合の中には、共通の問題に焦点をあてながら、アフリカの組合と交流しているものもある。
鉄道労組のAslefは最近、ウガンダ鉄道労組(URU)との交流の一環として、URUのサミュエル・ウマ書記長の訪英を歓迎した。
「ほとんどの組合員が生活にかかわる労使問題に追われている。しかし、このような活動は、組合員の関心分野を通じて開発の問題に取り組む有益な方法だ」とジェームズ・マクゴワンは語る。Aslefの組合員も蒸気機関車の運転士のサミュエルに尊敬の念を抱いており、共通の問題が両者の壁を取り除くのに一役買った。
同様に、英運輸事務職組合(TSSA)もジンバブエ鉄道労組を支援している。TSSA組合員もジンバブエ鉄道労組との共通点を見い出し、アフリカ地域の問題に対する理解も深まった。
「交流は書記長レベルのものだけではない。支部レベルでも交流してほしいし、一般組合員もジンバブエに手紙を書いてほしい。我々の機関誌にも定期的に紹介する」と、政策顧問のニール・デービスは言う。 |
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国際活動の新たな側面
交通運輸のグローバル化が進む中で、国際連帯活動にも新たな意義が生まれている。国境を越えて協力し合える組合は成長・発展を遂げられる。教育やオルグ活動も、裕福な組合が貧しい組合に資金援助するというだけでなく、相互に利益が及ぶものでなければならない。
「ITFも、裕福な組合から貧しい組合への資金援助に止まらない連帯を促進しており、加盟組合同士の関係構築やネットワーキングづくりを目指すITFとの合同プロジェクトを支援している」とデーブ。
ITFは加盟組織の国際協力を手助けしながら、加盟組織自身の国際活動能力を高めることを狙っている。これは、労働運動全体にとっても意義あることだ。 |
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ITFとその加盟組織は教育プロジェクトを多数実施している。組合の能力強化と連帯を促進するために、現在、世界各地で実施されているプロジェクトの一部を紹介する。
テーマ |
組合・組織 |
地域 |
女性交通運輸労働者 |
FNV |
アジア |
タイ−能力強化 |
SASK |
アジア |
南アジアの再編 |
LO-TCO |
アジア |
HIV(南アジア) |
FNV |
アジア |
漁船員の組織化 |
FES |
アジア |
航空−格安航空会社 |
FES |
アジア |
鉄道再編(インドネシア) |
SASK |
アジア |
鉄道再編(南・東南アジア) |
FES |
アジア |
東ティモール−能力強化 |
SEKO |
アジア |
路面交通運輸労働者の組織化 |
SASK |
アフリカ |
鉄道再編 |
ドイツ語圏加盟組織 |
アフリカ |
HIV |
FNV、ACILS |
アフリカ |
マラウィとジンバブエの路面運輸 |
SEKO |
アフリカ |
ジンバブエの鉄道労働者 |
TSSA |
アフリカ |
ケニヤの港湾 |
BTB |
アフリカ |
路面運輸 |
SASK |
米州 |
港湾、航空 |
3F |
米州 |
航空−LAN |
FES、FNV |
米州 |
路面運輸と鉄道-MERCOSUR |
FES |
米州 |
路面運輸、鉄道、航空、女性 |
FES |
アラブ |
オマーンとバーレーンの港湾、航空 |
ACILS |
アラブ |
交通運輸再編に関する教材 |
FES |
世界 |
教育者の能力強化 |
LO-TCO |
世界 |
サマースクール |
FES |
世界 |
HIVと交通運輸 |
FNV |
世界 |
便宜港湾(POC) |
FNV |
世界 |
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