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グローバルユニオン

2009年10〜12月 第37号
■HIV/エイズと船員
 
HIV/エイズに立ち向かう船員

ITFは現在、HIV/エイズの危険と闘う船員を支援する新プロジェクトに取り組んでいる、とマリアンヌ・パウエルは述べる。

2000年にある船員の職に応募したジュマ・カミシは、雇用前の健康診断を受けた際にHIVに感染していることが判明した。カミシは、1975年からケニアを拠点に船員として働いてきた。まだまだ働く体力は十分あるが、カミシが船員として働くことはもはや不可能だ。
カミシは新たな船員の啓蒙プロジェクトの一環として、勇敢にも自らのHIV感染について公表し、そのために仕事や生活がどうなったかを話してくれた。船員は、その労働条件ゆえ、HIVに感染するリスクが高い。残念ながら、職場の対応も依然として十分ではない。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、カンボジア、ラオス、ビルマ、タイ、ベトナム、中国雲南省など、一部の東南アジア諸国において、船員はHIV/エイズの影響を最も受けている職種の一つだ。船員の感染率が、22パーセントに上る国すらある。フィリピンに関するUNAIDS報告書によると、フィリピンの患者・感染者のうち、35%は海外で働く労働者だという。また、フィリピンのHIV感染者の33%は船員である、という報告もある。
海運産業は、船員の間の感染の拡大について、行動を起こさなければならない、との認識を強めている。
今年初め、ITFはHIV/エイズ対策として新たなプロジェクトを立ち上げ、その第一回会合を開催した。海運産業におけるHIV/エイズと移動労働者に関するグローバル・パートナーシップ会議には、船員とHIV/エイズの問題に関心を寄せる国際機関やグローバル・ネットワークの代表者が集まった。産業界と労働団体が、この問題に焦点をあてた話し合いをしたのは、これが初めてだった。
船員に対して効果的な活動をするには共同作業が必要であり、労働組合が果たすべき役割は大きい。
「HIV/エイズは船員の問題でもあるが、海運産業では、これが職場の問題として認識されるには至っていない。船員を対象とし、船員の行動変化を促す調整活動やプログラムを、もっと実施する必要がある。政府間組織やNGO、業界団体と協力することこそ、労働者を守り、感染を食い止める唯一の方法であると考える」とITFのジョン・ウィットロー船員部長は述べる。
組合はまた、HIV/エイズが確実に職場の問題として理解されるように努める役割を果たす。船員は、仕事の性質上、家を離れる期間が長いため、リスクの高い行動を取りやすい。悲しいことに、HIVに感染した船員が新たな職を探したり、現在の仕事を続けたりすることには、多くの障壁が存在する。
上述のグローバル・パートナーシップは来年、フィリピンで試験プロジェクトを立ち上げる計画でおり、地元での協議が進行中だ。フィリピン船舶職員部員組合(AMOSUP)も、HIV/エイズ関連の活動支援に熱心だ。AMOSUPは既に新規採用された船員を対象とする乗船前セミナーの際に、HIV/エイズに関する情報提供も行っている。
「組合には、労働者がロールモデルとして尊敬できる指導者がいる。HIV/エイズ・プログラムの運営には労働者が関わらなければならず、労働組合がパートナーとなるのは自然の流れだ。一般に労働組合は、プロジェクト後のフォローアップもよくしてくれる」とUNAIDSのマリー・エンジェル・パートナーシップ顧問は述べた。
ITFもまた、インスペクターのネットワークを活用して、HIV感染の阻止に努めている。ITFインスペクターは世界中の港におり、問題を抱えた船員が最初に連絡を取る人々だからだ。
最近、イスタンブールで行われたインスペクターを対象とするセミナーにおいて、HIV/エイズは職場の問題であるという情報提供をインスペクターは受けた。セミナーに参加したのは、フィリピン、インド、ウクライナ、ロシアのような船員労働供給国出身のインスペクターだった。ケニヤや南アフリカ、エストニアなど、感染率が比較的高い国や港を拠点に活動するインスペクターも参加した。
教育資材を入手できたことは、HIV/エイズ問題を理解し、船員から寄せられる質問により効率よく答える上で役に立つ、と述べたインスペクターが大半だった。また、全ての船員センターに、HIV/エイズに関する情報を置いておくべきだとの提案も出た。
船員に呼びかけることは、困難を伴うこともある。HIV/エイズが今後も継続的に考慮しなければならない問題であることは明らかであり、この問題は一夜にして解決できるものではない。しかし、船員がよりよい決定をし、団体協約にHIV/エイズに関する条項を盛り込ませるように会社にロビイングをする支援をするという形で、労働組合は強力かつ効果的役割を果たすことができる。
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映画を見よう

ケニア人船員のジュマ・カミシは、シーテレビ(船員を対象とし、DVDへのダウンロードが可能なテレビ番組)という教宣用の映画に出演している。シーテレビは2006年に試験プロジェクトとして立ち上がり、広範囲にわたる健康関係の問題を取り上げている。映画を作製しているハンス・クワットファスに、船員、教育、組合のメッセージについて尋ねた。

労働者の教育という意味で、映画はどれほど効果的か?
教育用の映画を作り始めてから何年にもなるが、常にその効果を目の当たりにしてきた。伝えたいメッセージを感情的に訴えることにおいて、映画ほど効果的な媒体はない。心を動かされた時、人は学ぶ意欲が大きくなり、他者のメッセージをより素直に聞き入れるようになることが経験から分かっている。
しかし、見る人に与える効果を最大限にするためには、映画の中で伝えるメッセージをできるだけシンプルかつ明確にする必要があることは覚えておくべきだ。出来れば、メッセージを誰かの物語に絡めて伝えるのが望ましい。複雑な教育内容の場合は、媒体として映画は適さない。

シーテレビにとってHIV/エイズが重要なテーマなのは何故か?
船員を対象とした一連の番組では、医療関係を含め、様々な福祉問題を扱っている。HIV感染とエイズが、何百人という人々の生命を脅かしている。長期間、家族から離れて働かなくてはならないという仕事の性質上、船員はさらにHIVに感染する可能性が高くなる。したがって、HIV/エイズに関する映画がまず、船員を対象とした番組製作リストのトップに来た。
自分の話をしてくれる船員、さらに全世界の船員社会に対してそれをさらけ出す勇気をもった船員を探すのは困難だった。
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協力する

海運産業におけるHIV/エイズと移動労働者に関するパートナーシップは、今年初めに立ち上がった。HIV/エイズ対策において労働組合が果たし得る役割について、パートナーシップの参加機関に尋ねた。

海運産業におけるHIV/エイズと移動労働者に関するパートナーシップは、国際移住機関(IOM)、ITF、国際船員福祉委員会(ICSW)、国際労働機関(ILO)、国際海員健康協会(IMHA)、国際海運連盟(ISF)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)から構成される。新たなグローバル・パートナーシップの事務局は、スイスのジュネーブにあるIOM事務局が務める。

ILO海事シニアスペシャリスト
ダニ・アパブ

「労働組合は異なる役割をもつ。労働組合は組合員のリスク軽減を支援し、カウンセリングやカウンセリングへのアクセスを円滑にする。また、組合員の権利を擁護する。HIV/エイズ関連の活動は、組合員にサービスを提供するため、政策決定レベルのみならず、現場においても主要なものであるべきだ。ILOは、ITFや労働者には明確な役割があると認識している」

フィリピン職員部員労組(AMOSUP)
エマニュエル・ネポムセノ

「様々なプログラムが実施されているが、障壁も多い。行動や価値観を変化させることが重要だ。エイズは個人の病気にとどまらず、一家全員や地域社会にも影響を及ぼす。船員は、このことを認識すべきであり、そうした情報の提供にあたっては組合が大きな役割を果たすことができる」

国際海運連盟(ISF)
ナタリー・ショー部長

「労働組合は教育面で役割を果たすことができる。会社から情報が提供されても、それは教師が生徒に教えるようなものだ。情報を広めるためには、情報提供に携わる人の数が多ければ多いほどよい」

国際海員健康協会(IMHA)
ネボーシャ・ニコリ会長

「HIV/エイズ予防プロジェクトに関するこれまでの経験から、政府省庁、労働組合、教育者が、共に様々なスキルを混ぜて使うといった、全体的アプローチが必要とされていることが分かっている」

国際移住機関(IOM)移民健康事務所
ロザリン・ボーランド

「船員のような移動労働者のリスクはどんどん高まっている。移動労働者は自分や家族を守る情報や手段を、必ずしも備えているとは限らない。組合は船員の声を代弁できる。提供される情報は現実に即し、有益なものであることが重要だ。数々ある組織の中での、労働組合の主な役割とは、船員に直接アクセスする手助けをすることだ」
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旧態依然の経済危機
交通運輸フォーラムからの特別報告
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勤労者生活:ノルウェー人漁船員アン・ジョルン・オルセン
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