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2009年10〜12月 第37号 |
■気候変動 |
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コペンハーゲンまでのカウントダウン
交通運輸産業運輸労組も12月のCOP15に関与する必要があるとアナベラ・ローセンバーグは述べる。
2009年12月、世界中の政府代表がコペンハーゲンに集結し、温暖化の原因となっている大気中への温室効果ガスの排出をゼロにするか削減する方法に合意するため、話し合う。
1997年に合意された京都議定書は、2012年までの目標を定めていた。コペンハーゲン会議は、ポスト京都議定書の目標を各国政府が設置するための会議だ。この議論に労働組合が参加することは極めて重要だ。
国際労働組合総連合(ITUC)、ITF、その他の国際産別組織(GUF)は国際レベルでの議論に参加してきているが、気候変動や気候変動政策が及ぼす社会的影響への配慮をポスト京都議定書の国際枠組みに組み込みたいのであれば、参加は不可欠だ。
国レベルで既に行動を起こしている組合もあるが、こうした取り組みをさらに加速させ、気候変動への対応策が全ての国にとって平等なものでなければならない。スペインで行われている国レベル、産業レベルでの政労使円卓会議や、英国のグリーン職場プロジェクトなどをより拡大することもできよう。
新たな合意には気候変動に関する明確な目標だけでなく、市民にとっての公正性も盛り込まれる必要がある。すなわち、気候変動の問題発生にほとんど責任のない人々が低炭素社会への移行コストを負担するべきではなく、各国政府は、国際交渉を通じ、「公正な移行」と、そうした考え方をきちんと伝えていく効果的方法が確保されるようにするべきだ。 |
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交通運輸労組に何ができるのか?
交通運輸産業の変革は、気候変動問題を持続可能な形で解決する上で肝要だ。陸運、航空、海運といった交通運輸産業では、近年、全部門において部門ごとの温暖化ガス排出量の増加率が上昇している。先進国における交通運輸産業からの温暖化ガスの排出量は、この20年で30.5%増加した。したがって、交通運輸産業を変化させる方法を提案する必要性は極めて大きく、交通運輸部門の効率を改善する方法や複合一貫輸送を促進する方法を考案し、今現在、交通運輸システムにおいて実際にかかっている社会的、環境的コストを、労働条件、社会的対話の欠如、汚染といった観点から、よりよく内在化させる上で、労働組合は大きな役割を果たすことができる。
国際レベルでは、グローバル炭素税を課すことで、企業が化石燃料の消費を減らそうとする動機づけになるという議論も進行中だが、余り進展は見られていない。だからこそ、組合員を動員して国内レベル、地域レベルで進展を図り、温暖化の問題にグローバルレベルで対処することへの支持を表明するという役割を労働組合が果たすべきだ。
ITFは、コペンハーゲンの会議場で、「働く世界」パビリオンの中でこれら全てを包括するイベントを行う予定だ。このパビリオンは、国際労働組合総連合(ITUC)とデンマーク労働総同盟(LO)が主催し、労働組合が集まって気候変動問題関係の他団体と経験を話し合い、共有する場となろう(詳細はを参照)。
労働組合は、気候変動と気候変動対策が、労働者の世界、生産活動を変革させ、一部の業務廃止につながることは認識している。だからこそ、労働界は「公正な移行」を求めているのだ。「公正な移行」とは、新規雇用機会が共同社会や雇用を失う恐れのある労働者に提供され、斜陽産業の労働者に訓練やスキル向上の機会が提供され、社会的保護が提供されるなど、様々なレベルで必要な変化に関する提案や実施に労働組合が関与できる参加型の公平なプロセスのことである。一方、労働組合は気候変動に対応することで、既存の雇用条件を改善することに加え、「グリーンジョブ」の創設という機会も生まれていることも認識している。 |
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アナベラ・ローゼンバーグは国際労働組合総連合(ITUC)の政策部長。 |
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気候変動に関するITFの立場
グローバル化の主なプロセスとして、世界の交通運輸産業が大きく変化している。貨物輸送のコストは大幅に下落し、総生産費の1%にも満たなくなった。このことから、生産と配送の新たなパターンが生じ、我々の社会経済的生活も大きく変化している。
市場の圧力により、輸送コストは絶えず下落し、このことから、先進国の高い期待とともに、輸送の大部分が不必要とみなされ得ることを意味する。安価な輸送が汚染、エネルギー消費、安全、労働条件、交通運輸労働者の生活水準、都市生活や共同体生活の質の低下という重圧を生んできた。市場主義の原則だけでこの問題を解決することができないことは明らかだ。
エネルギー効率の良い貨物および旅客輸送を促進する方策を取ることが不可欠だ。また、個人のエネルギー効率を向上させることも切り離して考えるべきではない。問題解決のため、自家用車の利用を制限したり、燃費を改善したり、車両税を課したり、混雑税を導入したりする必要がある。また、高速かつ快適で、利用しやすく効率の良い統合型のバス、タクシー、都市鉄道サービスが必要だ。
しかし、そのような交通サービスの促進と財政支援は、国の責任で行われなければならない。また、渋滞、汚染、全般的な健全性、事故、劣悪な雇用条件などのコストは現在、社会全体が負担しているが、交通利用者がこれら全てのコストを負担する必要がある。
気候変動はグローバルな問題であり、一国だけで解決できる問題ではないので、グローバルな規制が必要だ。協力と技術の共有を通じて解決を図らなければならず、これ以上、富裕国が貧困国を搾取することを許容するべきではない。グローバルレベルで持続可能な交通運輸を促進し、各地域の社会経済的な違いと労働組合の優先事項と、目標を内包した解決策を見い出す必要がある。
運賃を下げることで、交運労働者の賃金と労働条件に下方圧力がかり、環境にも悪影響が及ぶ。訓練を受けない非正規労働者が交通運輸産業で働くことは、環境リスクを高める。高度な訓練を受けた労働者ですら、長時間労働を強いられたりすれば、時に事故を起こすことがあり、環境に悲惨な影響を及ぼす可能性がある。
交通運輸産業では、環境面の目標を達成することが公正かつ人間らしい労働の確保と密接に関連する。 |
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デビッド・コックロフト直ちに行動を起こす必要性を痛感
昨今の金融危機と雇用危機により、気候変動の問題を暫し脇に退けてしまった組合が多いように思われる。雇用を守らなければならないというのが喫緊の課題であることは理解できるが、雇用確保と気候変動対策は共に重要であり、両者が密接に関連している。
交通運輸産業は温室効果ガスを最も排出している産業ではないが、最も目を引きやすい産業だ。コペンハーゲン会議の結果によって、取られる対策が交通運輸産業で働く労働者の雇用や労働条件に及ぼす悪影響を、最小限に抑えることを確実にしなければならない。
だからこそ、ITFはグローバルユニオンの一員として、新しい世界への「公正な移行」を求めコペンハーゲンで活動するつもりだ。だからこそ、労働界の共同出資のもと、デンマークのナショナルセンターの主催により「働く世界」パビリオンが設置され、「気候変動と交通運輸」に関するITF主催の円卓会議も開催される。また、世界中の加盟組合から有志を募り、気候変動問題について電子メールで語ってもらうグループを設置し、公共交通の一層の促進と温室効果ガスの排出量を減らす交通モードを優遇し、労働者の尊重を含むあらゆる規制を強化するといった合理的な意見をまとめる上でITF加盟組合に手伝ってもらっているのもそのためだ。
海運、航空を含むあらゆる交通運輸モードがグローバルな解決法に包括されるべきであり、労使がともに解決法を見出すプロセスに参加し、理論上は素晴らしいが実行不可能な解決法を一方的に押し付けられるような事態は避けるよう努力しなければならない。
真にグローバルな問題というものが存在するのであれば、気候変動こそ、まさしくそうであり、このことはすなわち、グローバルな解決が必要であることを示している。ITFと既存の加盟組合はもちろん、未だ強い組合に加入はしていないが間もなく組織化される必要のある労働者を含め、あらゆる労働者がこのプロセスに参加していく必要がある。 |
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デビッド・コックロフトはITFの書記長。 |
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