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グローバルユニオン

No.21/2007
■ニュース
 
荷役

ロッテルダム港で船員死亡

2007年1月、オランダのロッテルダム港に停泊中のアンティグアバーブーダ籍船で、フィリピン人船員が貨物のラッシング作業中に重量8トンのコンテナに押しつぶされ、死亡した。
死亡したグレン・キュエバスは、キプロスを拠点とするマーロー・ナビゲーション社に雇用されていた。
事故は、ドイツのバーント・ベッカー社が所有するユーコン・リーダー号が、ロッテルダム港の近海ターミナルに停泊中に発生したと、オランダのITF加盟組合、FNVは報告する。同船にはIBF協約が適用されており、協約には地元の港湾労組が条項の適用除外を承認しない限り、船員が荷役やラッシングを行うことを禁じる荷役条項が含まれていた。しかし、今回のケースでは、FNVは適用免除について打診を受けていない。
FNVは、これまでも再三にわたり、同船の管理会社に対し、協約の荷役条項について説明してきたが、徒労に終わっていた。
FNVは、この問題が解決されなければ、実力行使に出る覚悟でいる。一方、ITFは、IBF協約で規定されている義務について、船舶管理者がきちんと把握するよう徹底して欲しいと船社に訴えた。
ITFのフランク・レイ港湾部長は、「船員は、海上での長時間労働から生じるストレスと疲労により、船舶の入港段階で既に疲れ切っている。その上、伝統的、また歴史的にも港湾労働者がやってきたラッシングやコンテナのセキュアリングなどの作業をやらされるようなことになれば、今回のような悲劇が起きるリスクは相当に高まる」と述べた。
ITFは、キュエバスの遺族が会社から遺族補償給付を受け取れるよう尽力する。
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団体交渉

インドの組合、巨額の未払い賃金を獲得

ストライキの警告に船主が譲歩したため、インドの船員組合は組合員に対する相当額の未払い賃金を勝ち取ることとなった。
ITF加盟のインド海員組合(NUSI)とインド前進海員組合(FSUI)は、部員と下級職員にしかるべき未払い賃金と船主の利益の分け前を支払うよう要求した。船員は団体協約締結が大きく遅れたため損失を被ったが、臨時救済金として、部員は1500ルピー(32米ドル)、下級職員は2000ルピー(43米ドル)しか受け取っていない。
4月後半に行われた組合とインド全国船主協会(INSA)との話し合いにもかかわらず、使用者側が譲歩したのは、組合がインド籍の船舶全てにおいて8月29日にストライキを決行するとの通告を出してからであった。ITFは南アフリカ、ダーバンで開かれた大会で決議を採択し、ストライキを支持した。ITF書記長デビッド・コックロフトはそれに先立ちINSAに対し、組合側と団体協約を締結するよう要請していた。
INSAは、今や未払い賃金を部員には月当たり1400ルピー(30米ドル)、下級職員には1900ルピー(41米ドル)支払うことに同意している。これは、既に船員が受け取っている臨時救済金に加え支払われるものであり、団体協約が実施されていなかった期間の労働に対しても遡及して支払われる。船員積み立て金や退職引当金も当局に預託される。
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ロシア

単一組合が究極の目標

ロシアの二つの船員組合代表が、一つの組合への統合を目指すことで合意した。
ITF加盟組合のロシア海員組合(SUR)とロシア水運労組(WTWUR)の執行部は、2006年12月にロシアのサンクトペテルブルクで会談した。組合活動全般と水運部門の組合運動の今後について話し合った結果、海員と水運労働者双方にとって単一組合を結成することが必要であるとの結論に達し、統合を進めることで合意がなされた。
合同作業グループが結成された。原案を作り、統合の詳細について作業を進める。作業グループは近く活動を開始する。双方の組合はロシアとCISのITFコーディネーターであるミヒャイル・リャコフに調整役を任すことでも合意した。
ITF書記長のデビッド・コックロフトはこの会合で議長を務めたが、双方の組合の指導者V・ケップとI・パブロフが互いに握手することを求めて会議を締めくくった。彼は「今日、われわれは歴史的な出来事を目撃した。二人の組合指導者は、統合を決意した。この決断は長期的な恩恵を船員にもまた水運労働者にももたらすものとなるだろう」とコメントした。
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未払い賃金

フィリピン乗組員に16万米ドルの未払い賃金支払われる

パナマ籍船エバングリストリア号のフィリピン人乗組員は、2006年9月、ITFの力で未払い賃金の16万米ドルを勝ち取り、これを祝った。
ギリシャの同じ会社が所有する別の船舶で乗組員に対するおよそ4万米ドルの賃金未払いがあったことが発覚したため、このばら積み船もリバプールで検査を受けることになった。ITFインスペクターのトミー・モロイはエバングリストリア号の乗組員は「組織ぐるみの騙し」に遇ってきたという。
乗組員は、現金を手にしたばかりでなく、フィリピンへ帰港するまでの間、彼らにとっていかなる不利な行為も行われないことを保障する署名入りの書簡も獲得した。
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ISPSコード

船員の上陸に関する新システム

2年前に発効した船舶および港湾施設の国際保安(ISPS)コードに規定されている船員の上陸権を拒否している国は、新たに立ち上がったITFの報告システムの標的となる。
近々、導入されるこの新システムでは、船員が上陸権を拒否された、あるいは船から出ることを妨害された場合、ITFインスペクターが記録をつけることになる。これにより、ISPSコードが規定する保安対策強化の影響に関してITFが2005年に発表した調査報告書を基に、包括的な情報データーベースを作成することが可能になる。
調査に回答した船員組合の約58%が上陸を拒否された経験をもつ。特に米国の港の状況は深刻だ。ISPSコードには、船員にとっての上陸の必要性と医療機関などの陸上の船員福祉施設へのアクセスを「十分に認識」すべきだと明記されているにも関わらす、こうした事態が発生している。
ITFのジョン・ウイットロー船員部長は、「海運産業の保安強化は、船員の人権を保護する形で実施されなければならない。これには船員の上陸権も含まれる。新報告システムにより、この問題の深刻度を把握することができ、ISPSコードや他の保安関連対策の適切な実施状況を確認する上で役立つ」と述べた。
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セーシェル

セーシェルに遺棄された乗組員、未払い賃金を獲得

セーシェルの港に遺棄された18人の乗組員は、ITFの介入を得て2006年8月末、裁判所から未払い賃金請求支持の判決を勝ち取った。
セントキッツ・アンド・ネービス籍の貨物船アル・マナラ号に乗船していた乗組員は、2006年2月にポート・ビクトリア港で遺棄された。船がエンジントラブルを起こし、結局セーシェル当局によって港内に曳航された後、これら乗組員は食糧も水も与えられずに取り残されることとなった。船は18日間に亘って漂流していた。
同船はアラブ首長国連邦に住むイラク人の所有であり、石炭を積んでソマリアからドバイへ向かう途中であった。乗組員はエチオピア、インド、スーダンなどの国籍を有している。
ITFから連絡を受けた船主は、乗組員の福祉には関心がないと伝えられた。しかしながら、カトリック船員司牧(AOS)とITFの援助により乗組員の当座の必要を満たすことができた。国際船舶登録のある船籍国セントキッツ・アンド・ネービスは、ITFからの圧力で、AOSに対し拠出することに同意した、
2006年6月、乗組員はITFの支援を得て、また彼らを代表する弁護士も指定してもらい、未払い賃金支払い請求の訴訟をおこした。8月18日、セーシェルの裁判所は、乗組員が合計十万七千米ドルを未払い賃金として受け取るべきとの判決を下した。
ほとんどの乗組員は、即刻本国送還された。二人が時価55万8千米ドルと評価される本船が2006年9月末に売却されるまで船内に留まった。未払い賃金は、本船の売却益から支払われることとなる。
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オーストラリア

便宜置籍スキャンダル

オーストラリア籍船のFOC化に伴う船員の解雇をめぐり、2006年7月に発生した労使紛争が妥結に至った。
貨物船ストルト・オーストラリア号のオーストラリア人乗組員は、船上で抗議活動を行い、彼らの職を海外の安い労働力に置き換え、また船舶を税金回避のためケイマン諸島籍に登録替えしようとする提案に反対した。
しかし、ストルト社とITF加盟のオーストラリア海事組合(MUA)との間で合意された協定では、本船がシンガポールでドライドック入りし、オーストラリア人乗組員がシンガポールから送還されるまで現職に留まることとなる。
その後、乗組員は本船の管理会社であるASP船舶管理社 所有のオーストラリア船団のどこかで再雇用される予定である。新たな労使関係法に基づく、裁判と乗組員に対する罰金の脅しは取り下げられた。
そのほかの主要分野についてもいくつか合意がなされたが、その中には、ストルト社がMUA、ナショナルセンターACTU、ITFと協力し、今後もオーストラリアのライセンスを有し、オーストラリア人を乗船させるよう努力する約束も含まれている。
MUAの全国書記長、ITF副会長兼ITF港湾部会議長のパディ・クラムリンは次のようにコメントしている。「ハワード政府の新労働法に基づき巨額の罰金や懲役刑を課せられ兼ねない状況下で、乗組員が勇気ある態度を示し得たことを祝福したい。彼らはオーストラリア海運業と船員のため、立場を守り、幅広いメディアの報道、地域共同体、政府からの支援も勝ち取った」
オーストラリア籍の船舶はハワード政府のもとで78隻から52隻へと半減した。平均して毎年2隻ずつ便宜置籍船へと登録替えされている。
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安全衛生

ITF、使用者及び各国政府に対し疲労問題に取り組むよう要求

カーディフ大学の職場及び健康心理学センターの報告書は、疲労のために乗組員、船舶及び海洋環境が危機に瀕している不安に満ちた海運産業の現状を紹介している。
ITFの委嘱によって作成された報告書「適正な乗組み定員と疲労:国際的展望」は、2007年1月、ロンドンで開かれたIMO(国際海事機関)のSTW(訓練当直基準)委員会に提出された。
この報告書では、海運産業のこの問題への取り組みが、他の産業に比べて如何に大幅に遅れをとっているかが明らかにされた。報告書は、最近の国際的調査によるデータ及びその他の交通運輸セクターにおける疲労問題に関するアプローチを検討し、展望を拡大・深化させている。
報告書では、海事業務に特有の疲労が存在することを示す圧倒的な証拠が列挙されているが、海運業界は疲労を予防・監視するための人的・財的投資を渋っている。
報告書が注目しているのは、例えば民間航空においては、ICAO(国際民間航空機関)によって飛行時間が規制されており、1ヶ月間の飛行時間の限度は70時間から100時間となっている。(各国の規則によって飛行時間の限度は異なる)これと比較して、海事関係規則が認めている限度は、1週間につき98労働時間である。
2006年8月、新しく開始した海上における疲労に反対するキャンペーンの一環として、この報告書はITFの委嘱によって作成された。海上における疲労問題に取り組むために、新たな規則の必要性にITFは重点を置いているが、この問題の責任の大半は乗組み定員の不足にあると見ている。ITFの目標は、IMOによる措置を実現するために十分な数の各国政府を説得することである。

裏切られた期待

ITF船員部次長のジョン・ベインブリッジはキャンペーンの発足にあたって次のように語っている。「多くの海難事故の主要な要素が疲労にあることを、今まで以上に多くの国々が認識しているにもかかわらず、現行規則の実施状況をみれば、全く失望を感じざるを得ない。疲労の原因となる非現実的な乗組み定員の最も明白な事例は『単独当直制度または船橋当直の2交替方式』だ」
「増大する仕事量や入出港時間の短縮によって船員が直面する諸問題を、海運企業の多くがよく承知していた。しかし、残念なことだが、船員への悪影響を無視して、競争力維持の観点から乗組み定員を決定している船籍国や海運企業が余りにも多い」とベインブリッジ部次長。
また、部次長はITF加盟組合に対し、疲労に関連した船員の事故あるいは負傷の事例を、ITFに報告するよう求めている。
船員業務は長期にわたって家庭を離れねばならず、船員という職業が長期的に健康に悪影響があることが明白であり、疲労と事故の間には明らかに関連があるにもかかわらず、ITFの委嘱による報告書によれば、海運産業における労働時間の規制・強制の実施に関する前進は、ほとんど見られない。

憂慮すべき状況

この報告書では、船内の安全と健康に悪影響を与える圧力に屈服した船員による、虚偽記録の作成の事例も強調されている。報告書は、現実的な乗組み定員と規制に向けた確固たる姿勢に基づいた船内の安全文化の構築を奨励するとともに、海事産業における疲労について全体論的な取り組みを促進するよう求めている。
この調査で明らかになった実情に関連して、ベインブリッジは次のようにコメントしている。「この報告書は、我々がすでに知っていることを再確認したものだ。船員は、自己の生命や海洋環境に悪影響を与える可能性のある、過大な長時間労働に日常的に従事している。今こそ船員を危険にさらすことを止め、他の産業の最良の事例に学ぶべき時だ」
「適正な乗組み定員と疲労:国際的展望」は下記のITFホームページから入手可能。www.itfglobal.org/press-area/index.cfm/pressdetail/1133.を開き、Related Documents”をクリックされたい。
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クルーズ船

高くついたオランダ港への寄港

2006年のオランダ、アムステルダムのクルーズ専用港への最初で最後の寄港を、クルーズ船モナリザ号(上写真)の所有者は容易に忘れることはないだろう。
ロッテルダムで行われたITFコーディネター、ルート・タウベンによる定期検査の結果、ギリシャ船員組合(PNO)と船主との間のITFクルーズ船協約が守られていないことが判明した。
主にインドネシア人とフィリピン人の甲板部と機関室の乗組員は、規定賃金のやっと三分の一しか受け取っていなかった。AB船員の場合、協約で定められた1550米ドルではなく、575米ドルに過ぎなかった。
経営者とPNOに即座に通告が入り、全52人の関係乗組員に代わり、賠償請求がなされた。

総計は

請求額は、わずか数か月分でも総計で10万米ドル近くに上った。ここには、離職時支給額は含まれず、契約満了時に清算されることになっている。2週間後になって、ドイツ、クスハーベンの港で支払いが行われ、タウベンが立ち会った。
本船はドイツのホリデー・クロイツファーテン社により用船され、バルト海でクルーズしているが、夏季の間はノルウェーの海岸に係留される。
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キャンペーン

欧州船における労働条件改善キャンペーン開始

ITFとその欧州の組織である欧州運輸労連(ETF)は欧州船に乗船する船員が直面する劣悪な労働条件と差別に取り組む主要キャンペーンを開始した。
キャンペーンは2006年11月にベルギーのブリュッセルで欧州17カ国から労働組合運動家、使用者側、欧州委員会担当官、欧州議会議員が参加して開催された欧州フェリー総会において立ち上がった。関係者は欧州フェリー産業の不確実な未来について話し合うため集まったものである。
欧州労連(ETUC)の書記長ジョエル・デカイオン、欧州議員や他の政府関係者もこの取り組みへの全面的な支援を表明した。
代表者たちはキャンペーンの主要点に焦点を当てつつ、一部のEU籍船に見られる差別的な賃金や労働条件について話し合った。また、EUの海事技術の基礎が失われる可能性や陸上労働者を守る社会的規制の適用があってはじめて船員にとってまともな労働条件が確保される点などについて議論を行った。
「政策立案責任者たちに非正規雇用化の影響で欧州船員の労働条件が損なわれていくことについて何度も警鐘を鳴らしてきたが、組合は忍耐を失いつつある。ソフトなやり方が功を奏さないのであれば、より強い手法を検討することになろう」とETFの書記長のエドアルド・チャガスはいう。「我々は船員が三等市民であるとする一般認識を排除しなければならない」
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バルト海

未払い賃金の回収

2006年10月9〜13日に行われたバルト海FOC行動週間中に、200隻の訪船が実施され、3つの協約の締結と471,000米ドルの未払い賃金回収が実現した。
昨年のバルト海FOC行動週間では、「バルト海の清潔を保とう!」のスローガンのもと、基準以下船を標的とした組織強化が図られ、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ロシア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドの9カ国のITF加盟組合がこれに参加した。
様々な国籍のインスペクター、船員組合と港湾組合の代表者が集結して査察チームを作り、査察を実施した。タリン(エストニア)に設立された連絡センターは定期的に報告書と短信を発行した。
「査察チームは1日平均40隻を査察した。実に素晴らしい。インスペクターから効率的に情報が上げられ、連絡センターとの連携を図ることで、キャンペーンが大成功を収めた」とエストニアのインスペクター、ジャーナス・キュイーブは語った。
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インド

船員、2,100万米ドルの退職基金を取り戻す

何万人もの船員が詐欺の結果失われていたおよそ2,100万米ドルを取り戻そうと4年間にわたり闘った末、退職基金の返還を受け取ることができた。
ITF加盟のインド全国海員組合(NUSI)とインド前進船員組合(FSUI)は失われた金を船員備蓄基金に返還するよう求めて運動を進めてきた。基金は船員たち自らの支払いで作られたもので、労働者の退職後の支援を目的に設立されていた。しかし2002年5月、支払われた金が横領されていることが判明、基金の理事はその後逮捕、起訴された。
2006年11月、インド政府は組合による持続的なキャンペーンと書記長デビッド・コックロフトによるインド政府宛ての問題提起などのITFからの圧力に最終的に屈し、その金額払い戻しに合意した。
ITFアジア太平洋事務所の副部長マヘンドラ・シャルマは次のように語る;「退職基金への返金を勝ち取ったことはインド人船員の大きな勝利である。インドのふたつの組合による厳しい闘いはようやく報われることとなった」
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アルゼンチン

カジノ船で働く労働者の勝利

アルゼンチンのカジノ船で働く労働者を組合に組織化しようとする船員組合の長期にわたる闘争は、ついに報いられた。労働者は船員としての承認を得、組合に加入することも認められた。
ITF加盟の海員組合(SOMU)は、海に浮かぶカジノ「エストレラ・デラ・フォーチュナ号」の船内で働く部員を代表する組合としての権利を求めて闘ってきた。本船はスペイン多国籍企業のCIRSAグループの一つカジノ・ブエノス・アイレスSAが所有している。
使用者側との交渉は、2006年5月ついに協約締結にこぎつけた。従業員はSOMUの組合員になることが認められ、船員と同等の賃金と労働条件が与えられた。彼らは、従前、船員組合とは別の組合に代表され、船員基準賃金をはるかに下回る賃金を受け入れてきた。
2005年4月にITF船員部会がブラジル、リオデジャネイロで開催された際、SOMUを支援する緊急動議が採択され、クルーズ船乗組員を船員と認めようとする取り組みも支持された。ITFはさらにアルゼンチン政府に対し、海上のカジノで働く部員に船員と同等の地位を与えることと、SOMUとカジノ・ブエノス・アイレス社との交渉促進を要請した。
これに加えITFは、加盟船員組合に対し、アルゼンチン労働省にあてSOMU支援の書簡を送ることで、連帯行動を進めるよう要請した。
SOMU書記長のエンリケ・オマール・シュアレスは「海員組合、総労働連合、アルゼンチン交通運輸労働者連合の支援を一方に受け、わが訴えを一貫して支持してくれたITFの貴重な支えを他方に得て、我々の6年にわたる闘いは遂に完了した」と語った。
団体協約を完結するための交渉は、数週間のうちに終了する。
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連帯行動

港湾労働者の支援を得て、フィリピン人船員の勝利

米国の港におけるストライキが勝利したため、フィリピン船員は一人当たり20万米ドルを未払い賃金として受け取った。港では米国の港湾労働者が船員のピケラインを乗り越えることを拒否してストライキを支援した。
2006年9月、パナマ籍のM/Vエンドレス号に乗り組むフィリピン人船員18名がカリフォルニアのロングビーチで4日間、未払い賃金をめぐり、ストを実施した。米国の港湾労働者7千人を代表するITF加盟の米西海岸港湾労組(ILWU)とロサンゼルスとロングビーチの海運業界が一丸となり、フィリピン人船員を支持した。ロングビーチで働くILWUの組合員らは、このばら積み船の荷役を拒否することで、ピケライン維持に貢献した。
ITFインスペクターのステファン・ムエラー・ドンボイスは、M/Vエンドレス号のギリシア人船主は同船に乗船する船員に適用されているITF協約の諸条件に違反していると述べた。
緊張感に満ちた交渉が一週間続いたが、船主が乗組員に計22万7千米ドルの未払い賃金を支払うこと、船員を本国送還させること、またこれらの船員をブラックリストに載せないことに合意したことが伝えられている。
ITF港湾部会のフランク・レイ部長は、「港湾労働者は船員を常に支援する心積もりでいる。今回も支援したが、次回も必要であればまたそうするだろう」と述べた。
ITF特別船員部のスティーブ・コットン部長も、「港湾労働者からの連帯行動は、ITFのFOCキャンペーンの要である。港湾労働者から支援を受けたことが、状況を一転させ、フィリピン人船員は正当な権利を有する未払い賃金を受け取ることができたのだ」と語った。
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ITFの活動

乗組員の未払い賃金13万米ドル超を獲得

パナマ船籍のケミカル・タンカー「ニコスA号」の28人の乗組員は、彼らに代わって交渉に当たったITFが未払い賃金130,146米ドルを獲得できたことから、大喜びしている。
ITFインスペクターのロドルフォ・ビダルは、ギリシャ船主所有のニコスA号がアルゼンチンのサンロレンツオ港に入港した際に、船員への未払い賃金があることを発見した。
また、船内で働く(フィリピン、ロシア、スリランカ、ウクライナ)4カ国の船員に対しては国籍により賃金に差別があり、場合によっては賃金が国際労働機関(ILO)の定める最低賃金を下回っていることも明らかにした。
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ヨルダン

港湾労働者の連帯行動により、船員が未払い賃金を獲得

ヨルダンの港における港湾労働者の連帯行動の力で、船員が相当の金額の未払い賃金を獲得した。
2006年9月、マジックスワン号の乗組員の支援要請にITF加盟のヨルダン港湾労組が応じたことから、アラビア人、ウクライナ人、ラトビア人の計15名の船員が未払い賃金10万3千米ドルを勝ち取った。15名の船員は、ITFの機関誌「シーフェアラーズブルテン」に掲載された連絡先リストを参考にして、エジプトのポート・サイドで警告を発した。
そのため、同船は、次に寄航したヨルダンのアカバ港で、乗組員が未払い賃金を受け取るまで荷役を行なわないとしたヨルダン港湾労組の組合員のストに遭った。その結果、労使協議が開始され、3日に及ぶ交渉の結果、乗組員は未払い賃金を全額受け取った。
ヨルダン港湾労組のモハメド・カライサト委員長は、ヨルダン港湾労働者が今回このように迅速な行動を取れたのは、ITFのPOC(便宜港湾)セミナーに参加し、国際連帯の重要性を学んだからだ」と述べた。
ITFアラブ事務所のビラール・マラカウィ部長は、アラブ地域でITF活動が活発になったことにより、組合が今回のような国際連帯行動に参加する能力を高めている」と語っている。
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ILO

新たな海事「権利章典」への批准呼びかけ

ITFは船員の労働環境を著しく改善することになる条約の批准を各国に呼びかけている。「2006年海事労働条約」は、国際労働機関(ILO)により採択されたが、加盟各国が自国法に組み入れ、これを実施すれば、包括的かつ強制力を有する船員の「権利章典」として機能することになる。
多くの高位の政府間会合が世界中で持たれ、ITFは積極的な役割を果たしているが、これは批准過程を迅速に進めることを目的にしている。
条約は、入港国の管理担当官の権限を強化して、船舶の乗組員の労働環境・住環境が不満足な状態である場合には、船舶を拘束することを可能にしている。
その条項では、船舶の船長は使用者が合意した労働基準を遵守していることを証明する旗国の発行した証明書を提示しなければならない。さらに船員が少なくとも月単位で賃金を受け取っていることや、1日あたり10時間の休憩(1週間あたりでは77時間の休憩)を与えられていることの証明も必要となる。
条約には部屋の大きさや暖房・喚気の基準など、住環境についての特定の要件も定められている。船員が適切な医療を受ける権利や、病気、怪我、船主の破産などの事態には本国帰還する権利も定められている。
全てが順調に進めば、条約は数年内に発効する予定である。
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ITF船員トラスト

シエラレオネの船員センター建設開始を祝う

シエラレオネで12月21日、新しい船員センターの建設作業開始を記念して式典が行われ、地元有名人や組合代表などが招待された。
フリータウン港のセンター建設作業が開始され、シエラレオネ全国福祉委員会が2年にわたり描き上げてきた計画が成就する。この委員会は組合、教会、政府および港湾当局から構成されている。
ITF船員トラストからもささやかながら寄付がなされ、その支援で新センターでは短期滞在の船員に対してインターネット・サービス、バー、レストランやゲームセンターやレクリエーション設備など幅広いサービスが提供されることになる。今年の終わりまでには建設が完成し、サービスが開始される見通しである。
ITF船員トラストのトム・ホーマーは次の通り述べる。「このセンターは西アフリカ船員の福祉向上を促進するため現在進められている典型的な取り組みの一つである。海運産業に携わる人々の連合から支援を受け、港に短期間滞在する船員向けに諸設備が用意された小ぶりの建物では、船員たちが暖かく迎え入れられることになろう」
同じようなセンターがコンゴのポアント・ノアールと象牙海岸のサンペドロにも建設されている。さらに2007年にはリベリアのモンロビアにも建設が計画されている。
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オーストラリアで座り込み

フィリピン船員、謝意を表明

クエーティティ・サウジ・ライブストック社が所有し運航するクエート籍船マワシ・アルガシーム号の乗組員は、2005年に画期的な8ヶ月に及ぶ座り込みの抗議をオーストラリア、アデレードで行った結果、フィリピンの母校に帰港した際に、未払い賃金の支払いを受けて大喜びした。本件は、究極的には連邦裁判所で決着を見たが、乗組員は賃金と本国送還費用として、計70万米ドルを手に入れた。
乗組員のほとんどはセブ島出身であり、彼らが未払い賃金受け取りのためにITF事務所に立ち寄った際、ITFとオーストラリア海事組合(MUA)への感謝の気持ちを心から表明していたと地元のITFインスペクター、ホセリト・ペダリアは伝えている。
「何人かはITFとMUAに感謝の意を表すために、わざわざ何度も事務所まで足を運んだ」とぺダリアは話している。
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未払い賃金

ロシア人乗組員の賃金問題、解決

2007年2月、未払い賃金が支払われ、長期にわたったラトビア船舶運航会社とロシア人乗組員との紛争は解決に一歩近づいた。
この争いは乗組員が総計29万3千ポンド(約3,500万円)にのぼる未払い賃金の支払いを求め、二人のITFインスペクターと共にジャマイカ船籍のマーチャント・ブリリアント号の船内に立てこもったことで大きな転機を迎えた。二人のITFインスペクター、ケン・フレミングとビル・アンダーソンは乗組員の依頼を受けて、英国ヘイシャム港沖合いに碇を下ろした同船の船内に一緒に留まった。
ADGシップマネジメントSIAと乗組員は、乗組員の本国送還と未払い賃金に関してITFの交渉支援もあり、合意することとなった。しかし船が向かったヘイシャムへ船主代表が到着すると船主側は合意を期待通りには尊重しようとせず、賃金の全額支払いを行わなかったうえ、乗組員を脅しにかかった。
ケン・フレミングによれば乗組員はあちこち小突き回された。しかし結局、7人が要求を取り下げたために当初要求額より少なくなったとはいえ、乗組員には未払い賃金13万7千ポンド(約1,700万円)が支払われた。
用船会社のノフォークラインがADGシップマネジメントSIAの手法から距離を置き、独自の決定を下したことに対し、ITFは歓迎の意を明らかにした。
アイルランドのダブリンに拠点を置いて活動するITFインスペクターのケン・フレミングは「この見苦しい争いに終止符を打ち、これを過去のものとする第一歩を踏み出すことが出来た。次は乗組員全員を無事にふるさとに送り届けなければならない」と語っている。
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ストライキ

黒海における連帯

バハマ籍船コーラル・シー号のエクアドル船員は、賃金、労働条件、不公正な扱いをめぐって、ルーマニア、コンスタンタでストライキを起こした結果、良い結果につながったことから、大喜びをしている。
2006年11月、5日間にわたりトラックで波止場を閉鎖して作業停止を行った結果、船員は、ストライキに対する免責を示す書簡、食事の改善の約束、そして船長と機関長の交替と共に超過勤務に対する未払い賃金を現金で受け取ることができた。
乗組員(上写真)は、とりわけルーマニア労組とITFインスペクター、アドリアン・ミヒャルチョフの支援に感謝の意思を表明した。
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グローバル連帯

チリの船隊に関するITF協約締結

ITF・FOCキャンペーンの集大成として、一ヶ月にわたり三大陸で同時に実施されてきた活動により、チリのCSAV社が管理する19隻で新たにITF協約が締結された。
これにより、CSAV社が管理するFOC船の組織率が4割も向上し、同社の管理船舶(大部分がドイツの船主から長期用船に出されたコンテナ船)の大半がITF協約でカバーされたことになる。
2006年6月、CSAV社が管理する船舶に乗り組む船員の最低条件を保障することを拒否したことから、ITFは同社の管理船約130隻に焦点をあてた活動を展開してきた。CSAV社の所有船は、国内船であるか、既にITF協約が締結されている。
そこで、労働組合はロッテルダム、ハンブルク、アントワープ、ルアーブルの各港で12月に最低労働基準の設定を要求する抗議運動を調整・実施した。ハンブルクでは、CSAV社の管理船、リオ・ベーカー号に対する抗議行動が行われた後、ドイツのITF加盟組合、ヴェルディの港湾労働者が船主のオスカー・ヴェールと交渉し、マーシャル諸島籍の3隻にITF協約を締結させた。また、オランダのFNVとヴェルディの組合員は、ハンブルク港とロッテルダム港で、抗議運動を展開し、リベリア籍のクリスチャン・シュルト号の出航を遅らせた。その結果、ルアーブルとアントワープでも同様の抗議運動の発生を懸念した同船は、それを避けるため航路を変更せざるを得なくなった。これとは別にロッテルダムで行われた抗議運動によっても、別のCSAV社の管理船でITF協約が締結されるなどの成果が上がっている。
一ヶ月にわたるキャンペーン期間中、極東地域、南北アメリカでも、小規模ではあるが、同様の抗議運動が実施された。これにより、キプロス籍のリブラ・エクアドル号の出航がブエノスアイレスで、マーシャル諸島籍のCSAV・カラオ号の出航が横浜と釜山でそれぞれ遅れることになった。
ITF特別船員部のスティーブ・コットン部長は次のように述べた。「今回のキャンペーンは成功したが、もちろん、やるべきことは依然として多い。ITFは、自社の所有船と同様、全ての用船についても、ITF協約を結ぶことを求める覚書に署名するよう、CSAV社に今後も圧力をかけていく。同時に、まだ組織されていないCSAVの管理船については、今後も世界中のITF加盟組合が注目を高めていくことになろう」
「これはまた、全ての船舶が真正に組織されるべきであることを世界中の用船主に改めて認識させるきっかけにもなる」
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2006年のFOCキャンペーンの事実と数値

世界の商船隊のうち、12,335隻に乗船する乗組員が、2006年中にITF特別船員部(SSD)またはITFインスペクターと何らかの形で連絡を取った。
2006年、インスペクターは10,557隻を訪船した。(昨年度は9860隻)
ITFキャンペーンの成果として、2006年に乗組員が受け取った未払い賃金の総額は、1,871万米ドル相当である。
査察の対象となった船舶の84%は、便宜置籍船(FOC)である。過去の記録から最も劣悪な船舶を中心に査察活動を進めている。
2006年にITF団体協約の適用を受けた船員は、193,325人であった。
2006年にITF協約の適用を受けた船舶は、8,161隻であった。同年中に、36カ国において1,386隻について新規に協約が締結された。
世界42カ国の港で129人のITFインスペクターが活動している。
2006年には、四大陸の23カ国において、ITF加盟組合およびFOC船乗組員が、ITFキャンペーンを支援するためのストライキを実施した。
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