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グローバルユニオン

No.21/2007
■日記
 
不満を抱えた船員の日記

ポーランド船員イェルジ・ティコウスキがスコットランドのある港で乗船した船舶での経験を記述する。

第1日目

ポーランドで私が乗船するよう指示された船舶を、スコットランドのアバディーンに近い港で見たときの印象は、私を完全に意気消沈させるものだった。「一体どうしてこんな目に遭わなければならないんだろう?」と私は思わずつぶやいた。
船体から甲板、ハッチコーミング、ハッチカバーにいたるまで分厚い錆に覆われていた。船体を厚く覆った錆が、自分の重さに耐えられずにボロボロと剥がれ落ちるほどのひどい状態だった。船倉や船首倉のフロアも抜けそうになっていた。船尾倉とエンジンルームの間にできた大きな穴は、乗組員によってセメントで固められていた。
陸上の修理班がメインエンジンに取り組み中で、溶接作業が進行しており、乗組員は船体の塗装作業を行っていた。ペイントを塗るためには、まず船体の錆を叩き落す必要があった。我々はこの苦しい作業を、2台の圧搾空気ドリルと1台のジェット洗浄機を使用し、12時間交代で行った。5日経過しても錆落しとペイント作業がなんとか完了したのは船首部分だけだった。天候のために仕事は遅れた。スコットランドの秋は、強風と雨の季節だった。
最初の日に船長に会った。痩せ型で白い長髪をポニーテールにまとめ、長めの鼻に眼鏡をかけ、500cc入りの缶ビールを一日中手放すことはなかった。彼にとってビールは命の綱であり、毎日少なくとも15缶は必要であった。船長キャビンの前の廊下には、船長の飲み物が20箱ほど積み上げられていた。これがこの船舶の指揮権と乗組員の安全を託された男の姿であった。
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第2日目

船長は、自由時間及び日曜日にも作業をするよう我々に要求した。この要求を正当化するために、これは契約に規定されていると彼は言っていた。休日の作業1日につき55米ドルの追加支給については、船長も船主も知らぬふりをしていた。
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第3日目

午前8時、我々は作業を開始した。我々がエアドリルとジェット洗浄機を使って作業しているとき、船長は缶ビールを飲み続けていた。休憩のために船内に入ると、船長は我々を口汚くののしり続けていた。彼はしきりに警官を呼ぶぞと言って脅し、我々を非難していた。ビールを飲めば飲むほど、彼の悪態は激しくなった。18時になって、遂に我々は警察に電話した。
この瞬間から船長と我々は、険悪なにらみ合いの状態となった。警察に電話する前に、我々は船主に電話連絡を入れて現状を報告した。船主は、我々の帰国のために航空券の手配を直ちに行うと回答していた。
我々は、海事沿岸警備局(MCA)にすでに連絡したこと、ITFにも連絡する予定であることを船主に通告した。警察官は22時30分に到着した。船長キャビンの扉を2人の制服警官がノックしたとき、船長は就寝中であった。我々ポーランド人船員4人からなる乗組員はメスルームに座っていたが、彼らが船長を連れ去ってくれるであろうと安心していた。
乗組員のうち2人は、英国政府が承認した船長の海技免状を所持していたので、どちらか1人が船長の職務を引き継ぐものと想定していた。特にこの点については、以前に船主が約束していたのであった。
事態は予想どうりには運ばなかった。警官の1人が、船長は正気であると我々に知らせた。正気と言っても、17缶のビールを飲んだ人間なのだ。警官は、船長の体内のアルコール量は、英国で認められている上限内にあると告げた。彼はクルマの運転も可能なのである。本船は英国船籍であり、我々は船長の指示に従うべきなのであった。
23時40分、警官が本船から去っていったのち、我々も船を離れた。今度は、警官を呼んだのは誰かを詮索し始めた老船長の挑発に、乗せられたくなかったためである。我々はハーバーマスター(港長)の事務所に直行し、ITFの電話番号を訊ねたが、誰も知らなかった。
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第4日目

通常通り、8時に作業を始めたが、休憩時間のたびに船長と船主は我々に言いがかりをつけに来ていた。我々は「連帯労組」の組合員なので、コロブルゼグ支部に電話をかけた。しかし、当日は土曜日のため事務所には誰もいなかったが、留守番電話が緊急連絡用の番号を教えてくれた。手短にいえば、やっとのことで私はグディニアのITF代表に連絡することができたのだった。彼はロンドンのITF本部の電話番号をくれた。それから我々はスコットランドのITFコーディネーターに連絡した。我々の事情を聞いたのち、彼はどのように行動するべきかを指示してくれた。
我々は次のように行動するよう教えられた。月曜日まで船内に留まること、いかなる文書にも署名しないこと、一切の支払いを受けないこと、そして警官が本船に来た場合には、ITFインスペクターの電話番号を教えることなどであった。このときになって我々は遂にITFの保護のもとに入ったことを実感した。
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第5日目

日曜日の午前7時30分、船社の役員の1人が警官と共に船に到着した。6人の警官は2台の車に分乗してきたが、乗船はせず岸壁で待機していた。船社役員は各キャビンを回って「荷物をまとめなさい。皆さんのために9時30分発の航空機を格安で予約しておきました」と告げていたが、我々の賃金の支払いについては全く触れていなかった。
我々はITFの助言にもとづき、我々はどこへも行かないこと、月曜日まで船内に留まること及び、ITFが我々を代表していることを、会社役員に通告した。彼女は、本船が英国船籍でありITFの支配権は及ばないと主張して、警官を説得しようと企てた。
この試みは明らかに無意味であった。警察はITFに連絡し、我々の立場を確認した。警官たちは、我々にグッドラック(幸運を祈る)との言葉を残して去っていった。会社役員は今回の事件が大きな経済的負担となることを理解したようだった。彼女が最後に取った行動は、我々に解雇通告を手渡すことだった。その理由とは、船長の命令に従わなかったこと、日曜日の就労を拒否したこと、本船の安全を阻害したことなどであった。
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第6日目

午前11時30分、ITFインスペクターと海事沿岸警備局(MCA)インスペクターが本船に到着した。我々4人の乗組員は、彼らの到着を埠頭で待っていた。船主は、ITFインスペクターの乗船は拒否すると脅していたが、彼は静かに甲板に上がっていった。我々との話し合いに基づいて、ITFインスペクターは船主を告訴するために十分な材料を入手していた。
その中には、英国籍船舶の乗組員のために必要とされる適正な雇用契約及び船員保険証書が存在しないことも含まれていた。また、船主が解雇の理由としていた乗組員の日曜日の就労義務も、船長も船主もそのような規定を提示することができなかったため、虚偽であることが明白となった。このほかにも、我々を酷使しながら、船長自身は何リットルものビールを消費していた状況の証人を立てることができた。我々の抗議を全面的に支持し、証人となってくれたのは、陸上の修理班員と溶接工たちであった。
我々の要求は、就労期間中の賃金、補償金及び帰国旅費を現金で支払ってもらうことであった。合計金額が約31,000米ドルであった。
ITFインスペクターは船主に対し次のように伝えた。「船主が乗組員への支払いを行わない場合は、本船は差し押さえられるため、貨物運送契約は破棄されることとなり、そのニュースはマスコミによって広く報道されるであろう」
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第7日目

午前10時、船主が支払うべき賃金を持って本船にやってきて、ITFの監督のもと、賃金支払いを開始した。11時までに我々は船主負担でホテルに入った。下船した4人の乗組員は「連帯労組」コロブルゼグ支部、グディニアのITF代表及び英国のITFコーディネーターらの援助に心から感謝している。
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