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2008年7〜9月 第32号 |
■気候変動 |
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交運労組の果たすべき役割
温室効果ガスを削減するための国内外での取り組みが交運労組に影響を及ぼすことが必至の今日、気候変動の危機を真剣に受け止めている2ヵ国の組合に、この問題へのアプローチを尋ねた。
適切なバランスを探って
バズ・ハーグローブ
当然のことだが、カナダ人は自然環境の状態に懸念をもっている。グローバルな気候変動の脅威は、最も緊急に対処しなければならない環境問題であることに、疑いの余地はない。化石燃料を燃焼させることから発生する温室効果ガスが、より多くの太陽エネルギーを捉えることにより、世界の気温が徐々に上昇していることは、科学者たちによって、もはや疑いようがないほどに証明されている。
気温の上昇と、それがもたらす結果は、氷冠の融解から、より頻繁で強力な暴風雨まで、既にあらゆる形で現れている。私たちの課題は、温室効果ガスによる汚染の速度を遅らせ、コントロールできなくなる前に世界の気温の安定化を図ることである。労働組合の課題は、持続可能な環境と経済的な繁栄を促進する政策手段の適度なバランスを保つ方法を見出すことである。
カナダ自動車労組(CAW)は、20年前に独立組合として結成されて以来、「雇用か環境か」という二律背反の考え方を認めることを拒否してきた。働く人々は、健全な環境と、適正な賃金をもたらす雇用の保障の双方を享受できてしかるべきだ。適切なポリシーのミックス(複数の政策の組み合わせ)を実施すれば、それは可能なはずだ。
CAWは、雇用問題と環境問題の二律背反という考え方を拒否する一方、労働者を利する形で気候変動問題に対処していく上での現実的な方策も考えている。しかし、自然に任せていたり、民間企業だけに委ねたりしていては、望ましい変化は起きない。民間企業は、常に環境コストを削減し、抑制する方策を編み出す一方で、労働者に対しては攻撃を続けるだろう。カナダでは、今後も、より多くの投資とグリーンな雇用の創出を求めつつ、汚染を規制する政府の規則を強化するために闘い続ける。
2007年8月、CAWは、「気候変動と我々の仕事:適切なバランスを探る」というタイトルの討議資料を作成した。この資料は、ニューファンドランドのセントジョンズで開催されたCAWカナダ・ケベック合同評議会において、全会一致で承認された。
質の高い仕事の保護と持続可能な環境の推進の両立を図る上で、CAWが直面する様々な課題を、この文書の中で考察している。
私たちは、グローバルレベルな富の不平等、主要な環境破壊をもたらした、自由貿易とグローバル化の根本的な信条に異議を唱える。平等と社会正義の原則を無視し、利益だけが経済的進歩を示す指標であるとする考え方を、私たちは否定する。カナダ政府が、連邦レベル、州レベル、市レベルで、気候危機緩和対策においてイニシアティブを発揮し、バランスのとれたアプローチを確保するべきだ、と私たちは主張している。
CAWは、「よりグリーンな(環境に配慮した)」経済は、全体的な経済的幸福と生活水準を引き上げるだけでなく、民主主義体制をも強化する機会を私たちに提供するものであると考えている。
しかし、このためには、全ての経済分野において、政策の変化を広めることを促さなければならない。特に、CAWは、自動車産業問題で多くの注目を集めているし、それは正しい。これに関し、CAWのグリーン・カー戦略(上述の資料の中で概説されている)が、清新で現実的な選択である。他の重要な項目の中でも、CAWは、車のサイズによってデザインされた公正な、強制的燃料効率基準の必要性を受け入れ、技術とでデザインの変更に必要な準備期間を十分にとっている。
もちろん、CAWの組合員も様々な経済分野で働いており、それぞれの分野に合わせたグリーン経済戦略を構築する必要がある。組合員は、航空宇宙、特殊車両、製造、鉱業、水産、サービス業、小売、卸売りなどの様々な分野に従事しており、特に、航空、路面、鉄道、海運に携わる組合員は、数万人と非常に多い。
これらの産業分野ごとの環境戦略の開発は、全国安全衛生環境部会からも協力を得ながら、CAWの産別評議会で構築されていくことになろう。また、一般組合員からの意見も直接受け付けていく計画だ。組合員が自らの仕事を批判的に評価し、自らの業務が実際に、また潜在的にどれほどの環境負荷を伴うのかを評価することは極めて重要である。この作業は、既にCAWの職場委員会や組合支部の環境委員会で実施されている。
働く場所がどこであっても、環境を保護することは、私たちが製造する製品や提供するサービスに付加価値が加わることを意味する。それはつまり、仕事が減るのではなく、増えることであり、より質の高い仕事へと高めていく機会にも恵まれるということだ。
CAWは、社会労働組合主義に関与している。すなわち、CAWは、労使交渉の場、地域社会、世界レベルで、労働者のより大きな幸福のために闘っている。社会運動に身を捧げるCAWの精神は、将来の世代のために環境を保護すると同時に、今日、組合員が必要としている仕事を守るというCAWの決意に何よりもよく現れている。 |
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バズ・ハーグローブはITFに加盟するカナダ自動車労組(CAW)の委員長。同労組は交運労働者、サービス労働者、製造労働者を組織している。 |
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仕事の変化も必要
ブリギータ・カールソン・セヴェフヨルド
排出される温室効果ガスが地球の大気温度を上昇させている、という意見は今、耳をつんざくほど大きな声となっている。地球の平均気温がほんの2〜3度上昇しただけで、壊滅的な影響が生じ得る。世界も、地球上の生物も、政治システムも、文字通り、グローバルな問題に直面している。
何から発生するにしろ、温暖化ガスは地球を取り巻く大気に吸収され、地球上のあらゆる地域の気候に影響を及ぼす。南米やアジアで熱帯雨林が破壊されれば、二酸化炭素吸収源としての能力も失われ、地球全体の気温上昇につながる。
今すぐ向き合って対処しなければならない、迫り来る脅威を前に、国内レベルおよび国際レベルでの気候変動対策が明確化されてきている。程度の差こそあれ、気候コントロール策は社会のあらゆる面に影響を及ぼすだろう。今、私たちは、エネルギー資源の再検討とエネルギー利用の変更に直面している。私たちは、これまでの移動習慣、消費パターン、ライフスタイルも見直す必要がある。
ライフスタイルの変化が広まると、常に、雇用にも影響が出る。消えてなくなる仕事もあれば、変化する仕事、新たに生み出される仕事もあるだろう。したがって、気候変動対策は、労働組合にとって重要な問題なのだ。労働組合の役割は、組合員の利益を守ることだ。労働組合は気候変動対策の策定に影響力を行使し、過渡期において社会的側面が確実に保護されるようにしなければならない。このような再構築のコストは全員でシェアすべきであり、またその恩恵はあらゆる労働者に均等に割り振られるべきである。
そのため、SEKOでは、気候変動関連の政策の変化に労働組合が参加していくための計画を策定し始めている。10万人いるSEKOの組合員のうち、約半数の就業分野において、短期または長期的に気候変動対策の影響があると考えられる。
SEKOの組合員が従事する鉄道、航空、海運などの交通運輸産業の他、エネルギー産業でも著しい変化が見られるだろう。また、手紙や小包の配達などの郵便事業関連の仕事も、大きく変化するだろう。道路輸送は減り、鉄道による輸送が増え、より効率的なロジスティックス業界が路面、鉄道、複合一貫輸送への投資を増やすべきであろう。
SEKOの仕事は、今後の気候変動対策がどのような形で組合員に影響するのかを調査することにつきる。これには、雇用、社会的変化の規制の必要性、将来必要とされる新たなスキルなどに関する調査も含まれよう。温室効果ガスの削減に当たり、カーボンフットプリント(二酸化炭素の総排出量)を最小限に押えるために、何ができるかを考える必要がある。
CAWは、労働組合が「(低炭素社会への)公正な移行」というアプローチを取るべきだ、とする国際労働組合総連合(ITUC)と国際産別組織に同意する。もし、変化が導入され社会や一般市民がそれを受け入れるなら、「あらゆる者にとっての公正さ」が気候変動対策の中核になるべきだ。労働運動、市民、労使ともに、労働組合が気候に優しい社会への合理的な移行の実現を確実に支援することが、SEKOの気候変動戦略に向けた姿勢である。 |
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ブリギータ・カールソン・セヴェフヨルドはスウェーデンのITF加盟組合、SEKOの研究担当部長。 |
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