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グローバルユニオン

2008年7〜9月 第32号
■鉄道
 
エイズ・結核予防 ウクライナでの共闘

ウクライナのエイズ・結核予防対策に新天地を切り開こうとする労組とNGOの共闘について、ジャン・エドウィン・ワンダーズが報告する。

ウクライナのHIV-エイズ感染率(1.4%)は、欧州・旧ソ連圏で最も高い。結核の感染率も上昇している。これまで、政府やドナーは、静脈注射の麻薬使用者や性風俗産業従事者等のハイリスク集団に的を絞った対策を講じてきた。その結果、予防関連の予算はほとんどなく、地方におけるHIV-エイズと結核の対策も遅れている。
世界銀行は、2014年までに成人人口の約3.5%がHIV-エイズに感染すると予測している。憂鬱にさせる数字だが、極めて現実的だ。統計上も、HIV-エイズの新規感染者数は増加している。このことは、ウクライナがHIV-エイズをハイリスク集団の中に封じ込めることに成功せず、感染が一般の人々にも広がっていることを示している。また、結核のハイリスク集団以外への感染も、警戒すべきレベルに達している。
このような状況は、新しいアプローチが必要とされることを示している。予防に的を絞り、大人と若年層を対象とする革新的な対策が必要だ。ウクライナのNGO、レーバー・ヘルス・ソーシャル・イニシャチブ(LHSI)は、ITFに加盟するウクライナ鉄道運輸建設労組(TURW)と協力して、職場でのエイズ・結核予防対策を展開するために、組合の能力と財源を増やすプロジェクトを開発している。このプロジェクトは、政策立案過程における組合の参加と影響力の強化をも目的としている。
HIVと結核の感染率が国内最悪水準である、ウクライナ最大の工業地域、ドネツクの3つの都市で、パイロット・プロジェクトが計画されている。今年9月には、ドネツク鉄道の組合教宣担当者や医療スタッフを対象に、研修が実施されるほか、組合員1万8千人を対象とする教育セッションも開催される。鉄道駅や列車内、あるいは組合の機関紙等を通じて、教宣活動を展開する計画もある。政策面では、支部および全国レベルで、エイズ・結核調整協議会が設置された。エイズ・結核問題を団体協約に盛り込ませようとする動きや、ウクライナのHIV-エイズ・結核戦略の開発に労働組合を参画させようとする動きもある。
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枠組み

ウクライナでエイズと結核の職場レベルの予防策が実施されるのは、このプロジェクトが初めてなので、マニュアル、ガイドライン、成功事例を集めた出版物など、他の労働組合でも活用できる資材の開発に重点が置かれている。オランダ労働組合連盟の国際協力部門であるFNVモンディアールに資金援助要請もなされている。プロジェクトの管理運営は、TURWとの緊密な協力の下でLHSIが行う。
LHSIは、「スマートワーク」プロジェクトとして知られる職場の予防対策事業を実施するために、労働組合、個人、労働省が設立したものである。「スマートワーク」プロジェクト自体は、米労働省が資金を拠出し、米教育開発アカデミーが実施した。
この「スマートワーク」プロジェクトは、23の公共企業体と労働組合が職場で実施するHIV-エイズ予防活動を支援するものだった。ここでの経験を活かし、エイズ・結核の政策立案に労働組合を関与させるために、LHSIの設立が決まった。
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協力体制

LHSI理事会のナタリヤ・ルキャノバ議長は、「2002年にスマートワーク・プロジェクトを立ち上げたとき、職場での予防対策に関する知識など何もなく、ウクライナのエイズ・結核対策に労働組合がどのような役割を果たすことができるかなどの意識も持っていなかった。しかし今や、2006年と2007年のウクライナの『世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバル・ファンド)』に対する提案の中に、職場における予防対策や労働組合の関与を盛り込ませるに至った。また、全国HIV-エイズ・結核対策協議会(NCC)の正委員に労働組合代表が就任する可能性も現実味を帯びてきた。我々はここまで来たのだ」と語った。
労組とNGOの協力は、LHSIの理事会で始まる。理事会にはウクライナ労働組合連盟(FTU)とTURWも出席しており、ここで政策や戦略が決められる。プロジェクトの管理、提案書の作成、財源の確保はLHSIが担い、労働組合はプロジェクトの実行部隊となる。「この役割分担は非常にうまくいっている。NGOと労働組合の共闘の成功事例だ。この経験を、より広い意味での組合の能力強化に活用できると思う」と、ナタリヤ・ルキャノバは述べた。
TURWのアレクサンダー・グナツクHIV-エイズ担当は、「TURWはエイズ・結核対策という社会的責任に全力を注いでいる。ウクライナでもHIVや結核が急速に広まっており、今後、組合員の生活や労働条件に直接影響が出てくるだろう。最近実施した調査では、組合員の大多数がHIV-エイズや結核を非常に心配しており、労働組合が積極的に情報提供を行うべきだ、と考えていることが分かった」と述べた。
さらに、「TURWが先頭を切り、エイズ・結核対策において労働組合ができることを示せたことを誇りに思っている。我々のプロジェクトはウクライナだけでなく、旧ソ連諸国の労働組合の模範となるだろう。わが組合にはプロジェクトの開発に必要な専門知識はない。しかし、アイデア、ニーズ、資源、組織・動員力などの強みがある。LHSIにも、TURWにも、独自の目標があり、両者のパートナーシップは排他的なものではない。しかし、実際、このパートナーシップは非常にうまくいっている。だから、協力できる時はいつでもそうするだろう」と述べた。
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ジャン・エドウィン・ワンダーズは、キエフ在住のコンサルタントで、LHSIとTURWのために、無償でこのプロジェクトの提案を作成した。
 
 
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