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2008年7〜9月 第32号 |
■論評 |
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アフリカにおける民主主義の側面
労働組合と民主化は、密接に関連している。表現の自由が確保され、独立のメディアや司法制度が存在する多元的な社会においてのみ、労働組合は活躍することができる。ゆえに、労働組合が民主主義を唱え、抑圧からの解放・自由を求めて闘う人々を常に支援してきたのは決して偶然ではない。20世紀後半の南アフリカ白人少数政権に対する闘争で頂点に達した反植民地運動のときも、80年代に東欧の人々が一党独裁の終焉を要求したときもそうだった。実際、ポーランドの民主化運動は、労働組合「Solidarnosc(連帯)」が主導したものだ。
そういった意味で、我々は南アフリカ交通運輸合同労組(SATAWU)の港湾労働者が、4月にダーバンで、ジンバブエに向けた武器の揚荷を拒否した行動を賞賛したい。船側が隣国での揚荷を通告すると、モザンビークとアンゴラの港湾労組も、その船を歓迎しない旨、明らかにした。その結果、「安岳江」号は武器を積んだまま、中国に引き返さざるを得なくなった。
民主主義とは、単に選挙の実施だけを意味するものではない。真の民主主義が問われるのは、国民が投票した政党への政権移譲が求められる時だ。今、議会選挙で野党が勝利したジンバブエで、正にこのことが問われている。ムガベ大統領率いる与党、ザヌPF党は、野党が勝利した選挙結果を認めようとせず、野党のMDC側も決戦投票が必要だとする選挙委員会の判断に疑問を投げかけている。ダーバンの港湾労働者が荷役拒否という賞賛すべき行動に出たのは、選挙後の対立がムガベ陣営による大弾圧へと拡大することが懸念されている時のことだった。
今年初め、アフリカのケニヤでも、選挙結果をめぐる暴動が発生している。昨年12月27日に実施された大統領選の結果に野党が強く抗議し、その後に発生した暴動で何百人もの死者が出たが、幸い、与野党が和平案に合意したため、これを上回る悲劇は回避された。
ジンバブエでは選挙後、野党支持者に対する残虐な暴力行為が多発しているとの報道がなされているが、ダーバンの港湾労働者の行動は、状況のさらなる悪化を食い止めたという点で賞賛に値する。
ジンバブエとケニヤの事件は、その性格を異にする。ケニヤでは汚職が蔓延し、人口の半数が貧困に苛まれているが、ジンバブエほど深刻ではない。一方、ジンバブエは、政策の失敗や、国際融資へのアクセスが遮断されていることから、経済は崩壊している。
両国に共通しているのは、アフリカの他のいくつかの国と違って、労働組合等の独立的な組織が残っていることだ。そして、国民の多くが民主主義を強く信奉している。ダーバンの港湾労働者の行動も、ジンバブエの人々に対する連帯の表明だ。労働者の連帯により、ジンバブエの政治危機が平和的・民主的に解決されることが望まれる。 |
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