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グローバルユニオン

2006年7〜9月 第24号
■動き出したグローバル連帯
 
動き出したグローバル連帯

テヘランバスの争議が示したように、争議発生時にITFがグローバル連帯行動を動員できるかどうかは、ITFの力量の試金石になると浦田誠は言う。

オーストラリアのキャンベラで抗議デモに参加した労働者は皆半袖を着ていた。オスロでデモに参加した労働者は分厚い冬服を着込んでいた。しかし、労働者が世界中で唱えたスローガンは一つ。「テヘランのバス労働者を即時解放せよ」だった。カナダ自動車労組のバズ・ハルグローブは、「正確な数は分からないが、とにかくおびただしい数の労働者が逮捕された。合法ストに対する当局の反応としては度が過ぎている」とコメントした。
2005年5月、当局により解散されたテヘランバス労働者組合が25年ぶりに再結成された。再結成までの5年間は、毎週金曜日に会合を開き、国際労働機関(ILO)の出版物を読みながら労働者の権利について勉強してきた。
テヘラン近郊バス会社(Sherkat-e Vahed)の労働者は長年不満を抱えてきた。多くが共産主義政権下のハンガリーで製造されたバスを運転している。ガソリンは1リットルわずか10セントしかしないため、町は車であふれ、交通渋滞は手に負えない状態だった。バス管理会社は従業員のすずめの涙ほどの月給から手数料を搾り取っている。最近、車掌制度も廃止された。
そのため、政府職員や企業が暴力団を雇い、投票所への道を封鎖したにも関わらず、テヘランバス会社の1万7千人の従業員のうち、8千人が組合結成大会で行われた役員選出選挙に出向いたと聞いても不思議はない。
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生きるための闘い

イランのイスラム政権は1980年代から真正な組合を解体し始め、全職場に労働者の家とイスラム労働協議会を設立し始めた。昨年の組合再結成の数ヵ月前には、少なくとも17名の活動家が解雇された。後に委員長に選出されるマンスール・オサンルーなどの活動家は、労働者の家やイスラム労働協議会、会社の警備員や治安部隊から繰り返し攻撃され、負傷を負っていた。オサンルーは病院で舌と首を縫う手当てを受けた後、拘留され、尋問を受けた。その後解放されたが、数ヵ月後に再び拘留された。
組合が組合の承認と団体協約締結を要求したため、5月に入っても抑圧が続いた。会社の非妥協的な態度に対する抗議の意味を込め、運転手は運転中にバスのライトを光らせたが、この行為は公衆の秩序を乱すものと見なされた。12月22日、西欧世界がクリスマス休暇に向けのんびりしたムードを漂わせる中、イラン当局は、組合幹部全員をまとめて逮捕した。すぐさま抗議運動が沸き起こり、テヘランのバス運転手3千人がストを打った。また、国際自由労連(ICFTU)もすぐに抗議の声を上げた。ITFアンマン事務所もイランの動向を注視し、速やかに対応策を練り始めた。彼らがクリスマス休暇中にも目を光らせてくれたおかげで、争議の全容がはっきりと掴めた。
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つぶされた抗議運動

数日後、ITFと加盟交通運輸労組が抗議行動に加わった。拘留されていた組合活動家のうち、オサンルーを除く全員が解放された。1月17日、パリで開催されたITF都市交通委員会では、テヘランバス労働者を支援する動議が採択された。テヘランバス労組は、オサンルーの解放を求め、1月28日に全日ストを実施すると発表した。
スト予定日の2日前、組合の執行委員が法廷に召喚され、そのまま拘留された。治安部隊や会社はスト破りを導入し、組合は政府の転覆を目論む破壊活動家に支配されていると書かれたビラをばらまいた。
警察による夜間の手入れにより、1月27日までに100名の組合活動家が逮捕されていた。スト当日、バスの運転手らは殴打され、強制的に運転させられた。何百人という運転手とその妻や子供たちまでが悪名高いエビン刑務所に連行された。治安部隊は催涙ガスや棍棒を使ってストをつぶそうとした。複数の報道筋によると、争議が頂点に達した際には、1千3百人の労働者とその支援者が拘留された。
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世界中の反応

さて、どうしたものか?ITFとICFTUは早急に決断を下さなければならなかった。昨年、ネパールで組合権が侵害された際、グローバル抗議運動を展開した経験に基づき、ITFとICFTUはグローバルユニオンの主導によるグローバル抗議行動日を設定した。ITF加盟組合や書記局はこの種の行動日には慣れている。イラン大使館はわずか30カ国にしか存在しないから、世界中のイラン大使館を対象に抗議運動を計画するとしても、大して時間はかからないと判断した。
2月15日の水曜日を行動日に設定することがすぐに決まった。ITFアンマン事務所に連絡を取り、この日がアラブ諸国の大きな休日と重なっていないかどうか何度も確認した。アラブ諸国の組合がイランに激しい抗議のメッセージを送ることが絶対的に必要だと考えたからだ。
決行日を発表し、行動日関連の文書をスペイン語とフランス語で速やかに作成した。一部資料については、テヘランの労働者も読めるように、亡命活動中のイラン人労働者がペルシア語に翻訳した。ITFウェブサイトに掲載されたこの争議の展開に関する情報は定期的にアップデートされ、ITFオンラインニュースも電子メールで配信された。また、プレスリリースも発表された。ITF書記局の職員がロンドンで抗議集会を開き、2月4日にも、ロンドンとオタワで抗議行動が実施された。書記局は主要加盟組合に連絡をとり、行動日に参加してくれるよう再確認した。オンライン労働ニュースサービスの「レイバースタート」が電子メールによる請願書を作成したところ、数日のうちに数千名の署名が集まった。
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行動日の体験

行動日はいつでも24時間以上続く。アジア太平洋地域の組合が行動日の抗議運動を開始する頃、米西海岸ではまだその前日で、米国の組合員はまだ前日の午後のニュースを見ている最中かもしれない。
情報を前もって伝達することは不可欠だ。特に加盟組合から重宝がられる情報には2種類ある。1つには、行動日に何をするべきかについてのITFからのガイダンスであり、もう1つは、各加盟組合が「利用できる」幅広い情報である。今回のケースでは、争議の時系列的な展開に関する情報を多くの加盟組合がウェブサイトからダウンロードし、各組合の機関誌などに掲載した。
ITFは、イランの争議と、各加盟組合が抱える問題に何らかの関連性を持たせるよう努力した。オーストラリアのある組合員は、「テヘランで今起きていることは、ハワード政権が現在審議している反組合的法案が通過すれば、オーストラリアでも起こりかねない」と述べた。
行動日当日、書記局は加盟組合から迅速かつ効果的に情報を収集し、それをできるだけ迅速かつ正確に広めなければならない。それは、たくさんの細い流れを集めて一本の大きな川に流し込むような作業だ。ウェブサイトや電子メールは非常に効果的なツールになり得る。
産業全体に関わる要求事項を柔軟に設定し、それに基いて各組合が具体的な要求事項を決定するという路面運輸部会の従来の行動日とは異なり、2月15日の行動日は、非常に明確な政治的目的をもっており、あらゆる労働組合がこれを支持した。このことは、イラン政府当局に非常に強力なメッセージとなって伝わった。彼らには隠れる場所はなかった。この抗議運動の報道は、イランの核保有疑惑のニュース報道にかき消されたり、また捻じ曲げられたりすることもなく、独立性を保つことができた。国際外交に非常に敏感なイランという国で起きている深刻な組合権の侵害に焦点をあてることに成功した。
日本、タイ、スイス、ニュージーランドの加盟組合は、イラクの在外代表部と会談した。イラクを含むアラブ諸国、アジア太平洋諸国、欧州諸国、北米でも抗議集会が行われた。PSI、UNI、ICEMなどのグローバルユニオンも行動日に協力してくれた。また、多くのイラクの市民団体も行動日に参加した。
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抗議運動の成就

数日後、7名の最高幹部以外の組合員が解放され、4月10日までには、オサンルーを除く全員が解放された。カナダに亡命中のイラクの組合活動家はこう述べた。「大量逮捕が始まった時、イランで唯一の真正な組合の最期だと思ったが、間違っていた。グローバルユニオンによる国際抗議運動が形勢を一転させた。イラン政府ももはや国際労働運動からの圧力を無視することはできないはずだ」
しかし、テヘランバス会社は今なお、ストに参加した労働者を脅し、メーデーのイベントの際には、再び労働者に暴行を加えたり、逮捕したりした。また、当局は、依然としてオサンルーに対し、労働組合の原則を断念するよう圧力をかけている。
こうした攻撃と同時に、テヘランのバス労働者たちは、全世界のバス労働者が共通して抱える問題にも直面しつつある。テヘランバス会社の所有権は最近、国からテヘラン市に移譲され、公社化した。これにより、現行の労働条件にさらなる攻撃が加えられることが予測される。
テヘランバス労働者の争議と彼らの労働基本権の獲得を目指す闘いから、今一度、世界中のITF加盟組合が労働者の国際連帯に貢献し、またそこから恩恵を受けていることを実感した。2006年4月に開催されたITF執行委員会は、全会一致でテヘランバス労組の加盟を承認した。これにより、テヘランのバス労働者と彼らを代表する真正な組合であるテヘランバス労組は、ITFが民営化と規制緩和という世界的潮流に対し展開する闘争に参加することになる。
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浦田誠はITF内陸運輸部会の部長。
 
 
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