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グローバルユニオン

2006年7〜9月 第24号
■港湾労働者の誇りを持ち続けて
 
港湾労働者の誇りを持ち続けて

ITFの便宜港湾(POC)キャンペーンの政治的背景をフランク・レイが説明する。

消費財輸送の8割を海運が占めている。したがって、消費財はある時点では必ず船に積み込まれ、また船から荷降しされているはずだ。つまり、消費財の少なくとも8割が少なくとも2回は、港湾労働者(国ごとにドッカー、ステベドア、ロングショアマン、ワーフィーなど呼び方は異なるが)によって荷役されていることになる。ここでは、便宜上、港湾労働者(ドッカー)と呼ぶことにしたい。アントワープ港(右写真)で働いていた頃、私はそう呼ばれていたからだ。欧州委員会が船員のセルフハンドリング(自家荷役)を導入しようとした際も、「港湾労働者(ドッカー)の誇りをもって」のスローガンの下に抗議運動を展開した。このスローガンは、荷役によって生計を立てている者たちの結束をよく反映していた。
世界経済に対する港湾労働者の貢献度の大きさを考えれば、荷役のプロである港湾労働者は、世界のどこへ行っても良好な労働条件で働いているはずだと思うかもしれない。だが、現実はそれからは程遠い。許容できる条件が維持されている港ですら、常に脅威は存在している。
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グローバルキャンペーン

ドバイポート・ワールドのP&O買収が最近大きな話題になっていたため、グローバル・ネットワーク・ターミナル(GNT)という言葉はよく知られるようになった。一部の国営企業を含む一握りの企業が世界のコンテナターミナルの処理能力の半分以上を占有している。これらのグローバル・ネットワーク・ターミナルが世界のコンテナ処理量の半分以上を扱っており、港湾産業の基準を設定している。
世界のある地域では、労働者の権利を尊重し、社会的対話を保っている同じ港湾事業者が、別の地域では組合潰しを行う可能性もある。あるいは、ある港では、登録港湾労働者を使用している企業が、別の港では労働者の権利のために立ち上がった登録労働者を解雇することもある。また、労働者にやさしい企業であることを社会にアピールするために、企業自らが「組合のような組織」を設立することすらある。
世界最大級のコンテナターミナルの中には、港湾労働者を直接雇用せず、エージェントに委託しているところもある。労働者はエージェントにより契約雇用され、その雇用や収入は保障されていない。労働問題の責任をターミナルオペレーターが問われるようなことがあれば、雇用契約を結んでいるわけではないから、労働者とは無関係だと言い放ち、責任を放棄するという訳だ。彼らは、「エージェントに言ってくれ」と言うだろう。
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カジュアル化(日雇い化)

港湾労働に関するILO137号条約には、港湾労働者は登録されなければならず、常用雇用または常時雇用されなければならないと規定されている。このILO条約は1973年に採択された。しかし、現実はどうか?21世紀になっても、多くの港で労働者は使用者の意のままに予告なく雇われ、辞めさせられている。労働者の仕事が依然として規制されている主要港も一部にはあるが、こうした規制も一部の新自由主義を信奉する政策決定者の目には、「市場に許容しがたい制限を加えるもの」と映る。
世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などの国際機関や欧州連合(EU)のような地域機構が率先して自由化や規制緩和を推進している。その根拠は、「市場の見えざる手」はあらゆる者に利益をもたらすというものだ。交通運輸は安くて効率的でなければならないと彼らは考える。
港湾は、さらにコストを削減するため、好んでカジュアル(日雇い)労働者を雇う傾向にある。臨時に雇った労働者には、シフト分だけ手当を支払えばいい。残業手当を払う必要もなく、社会保障手当や社会的保護を提供する必要もない。これこそが、資本主義の要求に対する魔法の答えなのだ。
適切な訓練を受けていないカジュアル労働者が仲間の労働者やその労働者自身にとってもリスクになっていることは言うまでもない。職場で事故が発生すれば、事故の犠牲者が傷つくだけでなく、生産性にも悪影響が及ぶ。
生産性に関して言えば、適切な訓練を受け、適切な報酬を受け取っている労働者の方が生産性は高い。現在では、定期的に契約労働者やカジュアル労働者を使用する港湾ターミナルが多い。香港は最近まで世界ナンバー1の港だったが、香港海事局は2005年2月以降、コンテナ取り扱い時に守るべき安全要件に関する通達を6つ出さねばならなかった。今後、さらに多くの通達が必要になることは間違い。
港湾の保安の問題もある。誰もが安全な環境で安心して働く権利をもっている。港湾保安の厳重化は、カジュアル労働者や未登録労働者を使用することとは相容れないものだ。港湾や倉庫や上屋のことは、そこで常に働いてきた港湾労働者が誰よりもよく把握している。したがって、既存の港湾労働者こそが国際船舶および港湾施設保安(ISPS)コードの実施にあたり、中心的役割を果たすべきだ。また、現在、港湾労働者の代表者は港湾保安諮問委員会に参画しているが、今後も参加するべきである。港湾労働者こそ、港湾施設保安職員の耳目となって働いているのだから。
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サプライチェーンの中の港湾

世界中で、労働組合権や港湾労働者の効果的な組織化に対する攻撃が見られる。ますます多くの製品が国境を跨いで製造・梱包・売却され、経済は、中断されることのないグローバル・サプライチェーンに大きく依存している。物の流れが妨げられた場合の影響がいかに大きいかは、2002年に米国西海岸で発生した争議によって示され、今ではよく知られる話になった。
この「ジャストインタイム」生産方式の脆弱性を示す例として、もう一つ有名なものがある。工場の操業に必要なスペア部品を積んだコンテナを載せた船が迂回した結果、到着が遅れ、自動車製造工場が操業短縮を強いられた。こうした事例は、明確かつ非常に重要な事実を示している。すなわち、サプライチェーンの中の全ての連結点が最終結果を左右するということだ。
サプライチェーンの中でも特に重要な連結点が港湾と港湾労働者である。港湾労働者は昔から戦闘的で、組織率も高かった。港湾労動者は「ノー」という回答を受け入れてこなかった。港湾労働者が物流を止める主要なリスク要因と見なされるのは、そのためかもしれない。しばしば大コングロマリットの形態をとる荷主はリスクを好まない。したがって、物の流れの中断というリスクを最小限に抑え、最大限の利益を上げるために、組織港湾労働者という障害物を取り除きたいと考える。
貨物を荷役する人員がいらなくなることはないだろう。そのことは、貨物を運んできた船員に荷役をやらせようと欧州委員会が考えた際にも認識されている。あまり保護されていないか、全く保護されていない労働者の立場は弱いため、彼らが反抗する可能性は少ない。組合や組合員を潰すことが会社の目的だ。カジュアル労働者を連れてきて、それでも足りなければ、カジュアル労働者の出身国に他にカジュアル労働をしてくれる労働者がいくらでもいる。もちろん、こうした慣行が全ての港で行われているわけではない。一部の賢明な使用者たちは「人的資源」、つまり、労働者が満足することは企業にとっては掛替えのない要素であるということを正しく理解している。
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競争

港湾産業では既に激しい競争が展開されている。大量の物資の輸送を依頼する大荷主が業界のルールを設定することができる。しかし、競争は、安全な職場環境において効率化を促進し、その効率改善から生じた利益が全ての労働者に分配されることがあって初めて、恩恵をもたらすものだ。反対に、あらゆる犠牲のもとに成り立つ競争は、労働者の安全衛生をリスクにさらし、賃金と労働条件の下方スパイラルを促進する。切れる直前のワイヤーはよく伸びるものだ。
港湾労働により生計を立てている者が、最低でも、8つのILO基本的条約に謳われる中核的労働基準を尊重する職場で働くことができるようにしなければならないことをITFは今一度主張したい。
港湾労働者は、人間らしい労働時間を守り、公正な賃金を受け取るべきだ。また、職場の安全衛生法により保護され、安全な環境で働き、高度な専門基準に沿って仕事をするべきだ。
21世紀の今、便宜港湾(POC)、すなわち基準以下港湾をITFは認めない。POCなど必要ないからだ。世界中の港湾やターミナルで受け入れ可能な基準が確実に設定され、労働者が決して搾取されることがないようにしなくてはならない。
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フランク・レイはITF港湾部長
 
 
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