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グローバルユニオン

2006年7〜9月 第24号
■各地域の展望
 
各地域の展望

地域の活動が全世界で成功を収める鍵だとインゴ・マロウスキーは言う。

ITFにとって、各地域の活動や出来事は、グローバル航空産業というジグソーパズルを完成させる重要なピースである。ピースの一つ一つを別個に見ていると、それが示す状況に何ら共通点も共通の傾向も見られないが、それぞれのピースがお互いに関連し合い、航空業界の雑多な全体的イメージを作り上げている。しかし、グローバル航空産業の状況を簡単に正確に把握することなど不可能だ。
2001年の9.11テロやSARSをはじめとする一連の出来事により、航空産業と観光産業は未曾有の危機に陥り、これらのグローバル産業の景気循環の下降局面が加速された。
しかし、各地域によりその影響は異なっている。9.11テロの最も大きな被害を受けたのは北大西洋路線だった。そのため、北大西洋市場に大きく依存していた航空会社は、それ以外の路線を中心に運航する航空会社に比べ、甚大な被害を被った。一方、SARSはアジアで集中的に発生したため、他地域に比べ、アジア太平洋地域の航空会社が大きな影響を受けた。
アフリカの航空会社は、9.11テロやSARSの影響はそれ程受けなかったが、既に問題が山積している中で、欧州が最近発表した「危険な航空会社」リストの影響を大きく受けそうだ。このリストは、主にアフリカの航空会社を名指しし、安全基準を満たしていないと指摘している。アフリカの航空労組の大部分が他の地域で見られる社会的対話の機構を欠いているが、今、使用者や政府と協力して極めて重要な安全問題に対処していくという大きな課題に直面している。
全体的イメージは、自由化と規制緩和がもたらす一般的動向を示しているが、注視してみると、思わぬところに地域ごとの差異があることに気づく。あたかも、新自由主義という名の狼が世界中を徘徊し、全世界を一気に征服するのではなく、一つ一つ獲物を捕らえているかのようだ。
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北米

北米市場は世界の航空市場の32パーセントを占める世界最大の市場だ。しかし、米国の組合は雇用や労働条件をめぐり依然として大きな課題に直面している。
米国の航空管制システムが既に一部民営化されていた2005年に、勇気を出して安全関連の問題を指摘した航空管制労働者がそのことを理由に解雇された。ITFがこの米国の組合の支援に乗り出したことで、解雇を撤回させることができた。使用者は依然として労働条件を攻撃し、一方では、組合にもっと譲歩するように迫っている。さらに追い討ちをかけるように、組合は「独立系の組合」からのあからさまな組織攻撃に悩まされている。
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欧州

欧州市場は、世界航空市場の3割を占める世界第2の市場である。最近、東欧諸国が新たに加わり、欧州連合(EU)が拡大した。
東欧の労働組合は西欧の組合ほど強力ではない。実際、東欧では、労働者は労働組合を過去の政権の関係組織として冷ややかな目で見ている。しかし、現在は「自由市場経済」が選択のモデルとなりつつあり、これにより、保護を受けない臨時雇用や派遣労働が増えてきている。欧州内の先進諸国から、労働者に対する保護規制が緩いか、全く存在しない、使用者が低賃金労働者を利用できる欧州内の後進諸国へと雇用が移ってきている。
欧州の格安航空会社、ライアンエア社は、こうした動向をフルに活用してきた。このことは、ITFが現在も継続的に実施している同社の不当な企業戦略に抗議するキャンペーンによって明らかとなった。
下がる一方の航空産業の労働条件に歯止めをかけるため、ITFとその欧州機構である欧州運輸労連(ETF)は、従業員のプロ化やライセンス制度を追求する活動を再強化している。また、ITFは、空港のグランドハンドリング業務のさらなる自由化の動きと闘い、労働者の配転が必要な場合は、労働者を保護できるように加盟組合と協力している。
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アジア太平洋地域

雇用の西から東への移動は欧州域内に限らず、グローバルレベルでも起きている。その結果、アジア太平洋地域市場は現在、世界の航空市場の中で最も成長が著しい。同時に、地域の国営企業が投資不足の結果、分割され、売却されている。
既に飽和状態に達した米国市場や欧州市場とは異なり、アジア太平洋地域は、コールセンター、民間航空会社、格安航空会社の面で急成長しているが、成長分野の大部分が未組織だ。既存の組合も産別組合や職業別組合というよりはむしろ企業内組合が多く、そのため、未組織の、また時には反組合的な航空会社ですら地域への参入が可能になってしまう。既存の組合の対応も間に合わない。こうした問題については、ここ数年、地域の会議で議論をしてきたし、今後行われるワークショップなどでも議論していくことになる。
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アフリカ

アフリカでは、航空産業がかろうじて存在している状況の国が多い。数年前にエアアフリクが破産した際、アフリカの数カ国で労働者とその家族が苦しむことになった。エアアフリクはアフリカ11カ国が所有していたからだ。最近、ナイジェリア航空が倒産し、ヴァージン航空がその後を引き継いだ。
政労使が参加している国際労働機関(ILO)の三者構成プロジェクトが2004年に立ち上がった。これは、アフリカの航空産業が抱える数々の問題に対処し、労働者のために解決策を見出すことを目的としていた。ILOとITFの両組織がこのプロジェクトを強力に支持していたが、アフリカ諸国の使用者と政府が消極的だったため、その進展が大きく妨げられた。しかし、ILOとITFは粘り、プロジェクトの主要イベントが今年6月にようやく実施された。
最近昔の「ヤムスクロ合意」に従い、アフリカ航空市場を他国に開放すると発表しているアフリカの政府案に対する懸念が高まっている。アフリカの航空会社自体がほとんど存在しない状況下で、オープンスカイ政策を実施することが成功につながるとはとても思えない。
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南米

南米では、元労組の幹部を含む様々な社会改革者たちが現在は政権の要職についている。しかし、これらの新しい政界のリーダーたちによる、全てを市場任せにするのではなく、国内産業に対する国の責任を回復する動きはまだ実現していない。
メルコスール(南米南部共同市場)に参加国のITF加盟組合は、2004年に詳細な政策提言書をまとめ、その中で南米における健全な航空産業の育成のための明確な方策を提示した。中でも重要なのは、オープンスカイ政策は小地域市場に利益をもたらす可能性があるが、それは社会的保護を確実にするためのセーフガードが導入されればの話だということを加盟組合が認識している点だ。
ITFは、メルコスールが地域の航空政策を策定する際には、他の交通産業政策の場合と同様、組合を参加させなければならないと主張している。国際労働運動の代表者が、3カ年計画の一環として、この政策提言書をメルコスール地域の各政府に提出した。ITFと加盟組合は、現在、この提言書の影響を注視している。提言書はITFウェブサイト(www.itfglobal.org)で閲覧できる。これまでのところ、各政府は聞く耳は持っているが、提言が実行されるまでには至っていない。しかし、毎度のことながら、我々はあきらめない。この政策提言書は、この地域の航空産業の動向を取り入れ、現状を反映するものに絶えず作り変えていく。また、キャンペーンの展開の仕方についても変化させていく。
各地域の課題がますます多様化しているため、ITFは、現在、これまでのITFの対応策を見直している。今後も、組織化とベンチマーキング(成功例を学びそれを取り入れること)を重視していく。ITFは、ここでもまた、グローバルな視点で物を見るだけでなく、各地域の状況も考慮していく。ベンチマーキング調査はインターネットをもとに行われることになる。各地域の違いがソフトウェアのプログラム上で選別されるようになっている。
各地域の差異から学ばなければならないのは、地域ごとの問題を解決する上で役に立つ知識をお互いの経験からどう学ぶことが出来るかだ。世界のある地域で起きている事象は他の地域に波及効果を及ぼす。したがって、地域ごとに異なるだろうが、原因と結果のパターンを認識することが可能だろう。だからこそ、ITFのグローバルレベルの活動にとって、地域限定の活動は不可欠なのだ。
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インゴ・マロウスキーはITF民間航空部会および観光部会の部長。
アフリカの取り組み:地域の活動開始

2005年12月、アフリカ北部および中東:
ベイルートで行われたワークショップにアラビア語圏の加盟組合のほとんどが参加し、小地域のコミュニケーションおよび活動の機構を発展させる議論をした。
アフリカ東部:
ILO内のメカニズムを活用することで、同地域でさらに活動を実施する資源を確保できる可能性がある。アフリカ東部については、アナリストも航空産業の発展の可能性があると指摘している。
アフリカフランス語圏(アフリカ西部):
国土の狭い国が最も多数集結する地域。ベニンで開催されたセミナーに参加した加盟組合は、同地域の航空産業の現状とこの地域特有の課題について議論した。
アフリカ全体:
南アフリカのダーバンで世界大会が開催される頃には、上記の会議の結論や勧告の分析が概略文書としてまとめられるだろう。それを基に今後のプログラムを検討していく。
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