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グローバルユニオン

2006年7〜9月 第24号
■HIV/エイズと交運労働者
 
HIV/エイズと交運労働者

ITFが交通運輸産業でHIV/エイズと闘うためのグローバル・プロジェクトを立ち上げた理由をサイード・アシフ・アルタフが解説する。

HIV/エイズは過去25年間、話題になってきたが、その実態が明らかになったのはごく最近のことだ。つまり、HIV/エイズとは、経済成長や社会の安定、政治の安定を脅かす独特の脅威である。今後も数世代にわたって、その影響が消えることはないだろう。
HIV/エイズは交通運輸産業に複数の影響をもたらしている。交通運輸労働者やその家族、地域社会、関連する企業、交通運輸経済全体などが影響を受ける。HIVウィルスの感染リスクが最も高い時期は、成人男女の働きざかりの年齢と重なる。家を遠くはなれ、移動しなければならないため、陸運であれ、海運であれ、また航空であれ、交運労働者は特にHIVウィルスに感染しやすい。
1981年にエイズが報告されて以来、2千5百万人がエイズで死亡した。有史以来、最も破壊的な疾病ということができる。国連エイズ合同計画(UNAIDS)によると、現在、4千万人の患者・感染者がおり、2005年だけでも新規感染者は約5百万人に上った。アフリカで感染状況が深刻化する一方、最近のデータから、中央アジアや東欧で感染が広がっていることも分かっている。また、先進国でも新規感染が広がっており、1990年代に短期的に低下した感染率が再び上昇する懸念がある。
グローバル化の時代にあっては、HIV/エイズもまたグローバル現象となった。
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交通の要衝

生産がグローバル化し、複合一環貨物輸送や複数の輸送手段をもつロジスティックス事業に参入する交運会社が増えている。これはつまり、多くの企業が継ぎ目のない柔軟な輸送スケジュールを確実に提供できる力をつけてきており、労働者はさらに長時間、家から離れて勤務することを余儀なくされるということだ。
これがもたらす影響は国内に留まらない。小地域、果てはその外へと広がっていく。グロ−バル生産やサプライチェーンによっても、配送期限がよりきつくなるため、労働者にはさらに大きな圧力がかかる。「ジャストインタイム」在庫管理方式の成長により、配送スケジュールはずっと密になり、配送予定時刻に遅れれば、罰金を支払わねばならない。このことが運転手のストレスを増大させている。
ウガンダとケニアを結ぶ高速道路を走るあるトラック運転手は、この地域のトラック路線を研究している研究員にこう言った。「トラック運転手の多くが最終的にエイズを患う羽目になる。多い仕事量、低賃金、警察による汚職、劣悪な道路整備状況など、たくさんの問題を抱えているからだ。こんなに多くの問題を抱えれば、誰だって精神的に参ってしまい、楽しんで心の重みを軽くしたいと考える」
アフリカ諸国や一部のアジア諸国においては、交通運輸労働者の間の感染率が国の平均感染率より高い。特に、一部の主要交通回廊を往来する長距離トラック運転手の感染率の高さは顕著である。
UNAIDSのグローバル・エイズアップデートは次のように報告している。「アフリカ国内の成人のHIV感染率はこの2年で14パーセントから16パーセントに上昇した。特にマラウィ、南アフリカ、ジンバブエなどと各国を結ぶ幹線道路がある地域では感染率が急速に上昇している」
ジンバブエでも感染率は依然として高く、状況は変わらない。「都市部人口の感染率は、地方人口の2倍になっている。中でもとりわけ感染率が高いのが、複数の幹線道路をつなぐ地点にある町や都市だ」
インド南部の特定の道路に沿って最近実施された調査から、この道路を走る運転手のHIV感染率が16パーセントであることが分かった。これに対し、全国の平均感染率は1パーセント以下だった。HIVに感染しやすいのは、トラック運転手だけではない。ほかの産業分野のデータは少ないが、警戒を怠れない数値が存在する。船員に関するユニセフとUNAIDSの合同プロジェクトは、例えば、東南アジアのメコン川流域(ベトナム、タイ、カンボジア)の船員の22パーセントが感染している可能性があると報告している。
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声を上げる女性たち

交通運輸産業はHIV/エイズの影響を特に受けやすい産業であり、また、女性は男性よりも影響を受けやすい。だからといって、女性交運労働者の間の感染率が女性一般の感染率よりも高いということではない。実際、特に男女不平等な社会では、経済的に男性から独立しているため、女性交通運輸労働者が果たせる役割は大きい。
女性交運労働者は、教育活動やキャンペーンに積極的に参加してきた。社会の中では、女性は常に性的暴力の犠牲者となり、無防備なセックスをすることを強いられがちだ。交運労働者の妻やガールフレンドの多くがこうした事情から感染を余儀なくされる。交通運輸労組の女性組合員は声を上げ、こうしたジェンダーの違いに基づく暴力に抗議してきた。
女性は男性よりもHIVウィルスに晒される危険性が高い一方で、延命薬である抗レトロウィルス薬を手に入れられる可能性は男性よりも低い。この問題も、女性によりITF内で提起されている。
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予防と治療

エイズは不治の病かもしれないが、予防や治療はできる。世界保健機関(WHO)の予測では、2002年から2010年の間の新規感染のうち、3分の2は既存のHIV予防戦略が十分に補強されるなら、予防できるはずだとしている。
この10年間で、HIV/エイズへの対応も拡大・改善されているが、依然として感染状況の悪化に歯止めをかけることはできていない。
効果的なワクチンの開発までは、さらに数年待たなければならない状況の中、エイズをコントロールするためには、政府、使用者、労働組合、その他の組織がエイズの蔓延に拍車をかけている根本的な問題に取り組むという、より強固な決意を固めなければならない。これには、エイズにまつわる負のイメージ、差別、ジェンダー不平等、人権侵害などの問題がある。また、能力の剥奪など、エイズによって新たに生み出された不公正を個人レベル、地域レベル、産業レベル、あるいはそうした枠を越えて解決していく必要があるだろう。
これは、格別大きな課題かつ要求であり、全地球規模での対応を要する。交運労働者とその組合が積極的に関与しなければ、現実的なエイズ対策を練ることはできないことは既によく認識されるに至った。交運労組は極めて重要な役割を担っており、エイズ問題に責任をもって対処し、また問題の本質を理解する必要がある。交運労組は、政治、産業、職場の各レベルで効果を上げられるよう、努力とエネルギーを結集させなければならない。このエイズ危機と闘うグローバルな視点を養うことに力を注ぐべきだ。
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グローバル・プロジェクト

1980年代後半以来、ITFと一部加盟組合は、様々な交運労働者を対象としたHIV感染予防プログラムなどの教育プログラムへの参加を通じ、積極的にエイズ問題に取り組んできた。しかし、プログラムの大半は、感染率がピークに達しているサハラ以南のアフリカに焦点をあてたものだった。
最近、ITFは新たな先駆的グローバルHIVプロジェクトを立ち上げた。専従のHIVコーディネーターが任命され、ロンドンのITF本部で様々なプロジェクト活動の調整にあたっている。グローバル・プロジェクトの目的は、交運労働者間の連帯をグローバル化することで、様々な国の交運労組が持てる資源を動員し、世界中で特に交運労働者のニーズを最優先させていくことである。
同プロジェクトにより、他の国際産別組織とともにHIVキャンペーンの知名度が上がるだろう。また、プロジェクトを通じて、団体協約に包括的なHIV/エイズ条項を盛り込むなど、職場方針を作る際に組合が使用者を参加させていくことが期待される。
意識向上キャンペーンやプログラムの実施にあたっては、加盟組合は様々な教材を活用することができる。HIV/エイズとの闘いの第一の目的は、現在において、また将来的にも組合員を守ることであることは明白だ。また、このプロジェクトが組合にとっての組織拡大の道具となり、未組織労働者の中でも特に若年労働者を組合に惹きつける力になればと願う。組合はエイズという重要な問題に関して責任を全うする意欲があり、また組合員に目に見える形で支援を提供できるのだというメッセージを伝えていきたい。
142カ国、666組織がITFに加盟している。ITFは、新自由主義、ジェンダー差別、グローバル化が世界中の交運労働者に及ぼした悪影響などに対する抗議運動にも通じる、HIV/エイズに対するグローバルな闘いを展開することができる。活動を調整することにより、交運労働者とその家族の間の新規感染を予防し、組合員の中の患者・感染者に対しては支援を提供するという形で、確実に前進できるはずだ。
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サイード・アシフ・アルタフは、HIV/エイズに関するITF3ヵ年プロジェクトのコーディネーターで、バングラデシュを拠点とするNGO、ケア・インターナショナルの元HIV/エイズプログラム・コーディネーター。
実施中のITFの取り組み

HIV/エイズとアフリカの交運労働者:
サハラ以南のアフリカを対象とした、HIV/エイズを職場の問題および組合の問題と認識するためのITFプロジェクトの継続。このプロジェクトは、特に職場の方針の策定と団体交渉に重点を置いている。
   
HIV/エイズと南アジアの交運労働者:
このプロジェクトは主に、HIV/エイズを職場の問題および組合の問題として考えることに重点を置いている。対象となるのは、インド、バングラデシュ、ネパールの加盟組合。
   
アビジャン-ラゴス交通回廊におけるHIV/エイズ地域合同プロジェクト:
世界銀行がHIV/エイズ予防プロジェクトを助成している。コートジボワールとトーゴの加盟組合が参加。
   
REDSO交通回廊プログラム:
UNAIDSのアフリカ東南部地域経済発展サービス事務所(REDSO/ESA)が組織するプロジェクトをファミリーヘルス・インターナショナルが助成。ケニヤとコンゴ共和国の加盟組合が参加している。
   
船員健康情報プログラム(SHIP):
ITF船員トラストが助成し、国際船員福祉委員会(ICSW)が実施している健康増進キャンペーン。同プログラムは7つの健康問題を重点課題としており、HIV/エイズはその中でも重要な課題となっている。
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