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グローバルユニオン
No.25/2011
■オフショア産業
 
事故は再発するかもしれない

メキシコは、石油・ガス海底資源の探査と利用に力を入れているが、海底資源産業に雇用されている労働者に不可欠な技術的訓練が欠けている。その結果、2010年にメキシコ湾で発生したBP社の「ディープウォーター・ホライズン」のような事故がまた発生するかもしれない、とアナ・リリア・ペレスは警告している。

ペメックス社(メキシコ石油)が、メキシコ湾の深さ500メートル以上の海底から石油を採掘するためのエネルギー計画を申請し、承認を得てから既に約2年が経過している。しかし、リスクが高いとされている石油産業のなかでも、最も危険とされる海中リグの操業に従事する人員の訓練計画の実現が失敗に終わっている。
メキシコ連邦議会に提案が出された際、ペメックス社の役員は、この石油生産の新たな段階のために人的資源の準備が緊急に必要となっていると述べた。この点についての前進は全くないけれども掘削作業は開始され、民間企業によって運営される4基のリグは近く操業を開始すると言われている。
このような方式で事業を進めるならば、BP社のディープウォーター・ホライズンの悲劇以上の重大事故となる可能性が極めて大きい。2010年8月、メキシコシティで開かれたITF大会において、オフショア・リグ労働者の労働条件を話し合うための会議に出席したオフショア産業代表は、このような見解を表明した。
深海における石油生産の経験を持つノルウェー、英国およびブラジルの専門家は、ペメックス社が下請け業者に操業させている浅い海での安全問題にすら対応していない、との結論に達した。彼らは、さらに重大な問題は汚職である、と主張した。
「ペメックスの関連企業の事業活動の安全基準は極めて低い水準にあるが、これがメキシコ式であり、これがペメックス流のやり方である、と彼らは言っている」と、ITFオフショア特別チームのノリー・マクビカー議長は語っている。「オフショア部会の会合において、多くの参加者が苦情を訴えていた。他の国々では認められないような不正な慣行に従うことを強制される、という苦情である。深海の作業においては、このようなことは決して許されてはならない。この事業には、労働者の生命、環境およびペメックス社の全資産が賭けられているのだ」
ITFの指導者グループは、メキシコのエネルギー省(SENER)および労働社会福祉省(STPS)の代表との会談に臨んだのち、深刻な懸念を表明した。ITFのアントニオ・R・フリッツ米州地域部長は、次のように発言した。「我々にとって明らかなことは、メキシコの石油産業における不十分な労働条件について彼らは無関心であり、懸念さえも持っていないことである。」
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無経験の代償

スイスのトランスオーシャン社が所有し、英国石油(BP)にリースされていた石油掘削リグ「ディープウォーター・ホライズン」の事故は、国際石油産業界への警鐘となった。その理由は、11人の犠牲者、リグの爆発および沈没による損害、490万バレルの石油の流出によるミシシッピー河口の東南64キロにいたる海洋汚染だけではない。なぜなら、BPは、石油業界でも最高の安全および訓練の規準を持っていると考えられていたためである。マクビカーによれば、調査報告は事故原因として7項目を指摘している。2項目は技術的要因であり、5項目は人的要因である。126人の労働者(トランスオーシャン社79人、BP社7人、その他の企業40人)は、十分な訓練を受けていなかった。「問題点を確認し、決定を下し、危機を管理し、事前に修正措置を講じる能力を持った、適正な健康・安全委員会が設置されていなかった」
マクビカーは言葉を継いだ。「一部の人々は、この事件を人命の損失ととらえる。自然環境への損害と見る人もいる。けれども、我々は、メキシコで次に発生し得ることと見ている。今回のような事故が発生する可能性が極めて高い。とりわけ、汚職の洪水に溺れてしまったカンペチェ海域(メキシコ湾南部)の石油産業に内在する深刻な問題が、その理由である」
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コスト削減の代償

ディープウォーター・ホライズンの事故は、石油産業のコスト削減の常套手段となっている慣行を明るみに出した。すべては利益の追求である。
多くの関係企業が、専門的訓練をうけた人員の代わりに低賃金労働者を雇用し、設備の維持管理には無関心である、とメキシコ労働調査センター(CERL)は主張している。
事実、監督官庁が存在しない海底油田で操業しているペメックス社の下請け企業や孫請け業者の大半は、このよう状況にある。「コスト削減」の影響のため、作業服(つなぎ)、手袋、ヘルメット、作業用長靴、保護メガネなどの基本的な安全用具さえも労働者に支給されていない。「コスト削減」は、さらに未成年者や仕事についての基本的な知識のない低賃金労働者の雇用となって表れている。このような例が、2007年10月、21人が犠牲となったペメックス社のウスマシンタ・リグの事故であった。
それらの結果として、事故が多発している。事故に関連する当局の秘密主義のために、人命の損害および経済的損失の計算は不可能である。これらの状況はすべて、ITFの報告書「カンペチェ海域・労働者搾取の典型」に記録されている。この報告書は、2009年に国際労働機関(ILO)に提出されたほか、メキシコで開かれた会議にも提出された。この会議に出席したメキシコのエネルギー省(SENER)、社会労働福祉省(STPS)およびペメックスの代表者は、状況の改善を約束した。
ITFによれば、一年後の現地の状況に変化は見られない。アントニオ・R・フリッツ地域部長は「現在の状態での海上の操業は、労働者の生命、石油産業および環境を危険に陥れることとなる」と警告している。
黒い黄金を生み出す産業は連日、労働者の生命を危険にさらしているが、深海油田の掘削は環境および技術に関する複雑な問題を抱えている。海上リグは潮流によって移動するほか、潮流の影響によって掘削装置やパイプなどに振動が発生するとされている。
海面と海底および掘削地点の温度差が、ポンプで圧送される各種の掘削用液体に複雑な影響を与える。油井のパイプを固定するために使用されるセメントの特性は、その場所の温度が低すぎると変化してしまうことにある。掘削作業中はガスや水が異常な圧力で噴出するが、これらを制御することは容易ではない。
海中構造物の検査と維持管理にはロボットが利用されるが、これは人類にとって深海での活動が不可能なためである。日常的に行われているオイル・リグへの労働者の輸送業務にも正確な輸送管理が求められるが、深度が浅いカンペチェ海域におけるこれらの業務においてさえ、安全かつ効率的には行われていない。2010年8月に沈没した通船サバアン号のケースにも見られるように、無能な下請け業者からリースされた通船や航空機などの劣悪なコンディションのために、この海域で働く労働者らは惨事の発生を恐れながら暮らしている。
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もし、そうならば・・・・

ITFのノリー・マクビカーは、石油からの収入に大きく依存しているメキシコのような国にとって、「政府が汚職の根絶を促進し、行政、雇用契約および労働条件に関する規制の透明性を改善する必要がある」ということは明らかであると確信している、と述べた。「さもなければ、深海における石油産業の発展にともなって、これらの問題点が表面化するであろう」と、彼は言う。
現在判明している欠陥を放置したまま深海における石油の探査と開発を続けたなら、どのようなことが予想されるかをマクビカーに聞いた。「それは明白だ。メキシコの主要産業である石油開発は崩壊するだろう。浅い海域における低コストの探査と開発による安価な石油の時代が終わりを迎える。浅い海における石油掘削の時代は終わった。炭化水素燃料(石油)の消費が続く限り、深い海における探査と開発を推進する必要がある。けれども、深海探査と開発には多額の経費と最先端技術が必要であるうえに、厳重な安全および訓練基準ならびに労働者のための公正な労働条件が要件となる」と、彼は言う。「なぜなら、BPの事故で証明されたとおり、人的要因もまた事故原因とされるためである」。
ITFビデオ「混乱海域の石油:メキシコの海中油田における労働組合権の闘い」は、以下のサイトで
www.youtube.com/watch?v=NAOsU2moVpE
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●この記事の完全版は、2010年9月、メキシコのニュース雑誌「コントラリネア」に掲載された。アナ・リリア・ペレスは調査記者で、受賞経歴もある。
 
 
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