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No.25/2011 |
■コメント |
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海運業界と世界中へ物資を輸送する船員たちが負っているリスクについて、2010年には2度にわたり、世界の注目が集まったが、2度とも好ましい理由からではなかった。
まず、米国沖で石油掘削リグ「ディープウォーター・ホライズン」の炎上事故が発生した。作業ミスが起きたのか、適切な訓練がなされていなかったのか、あるいはコスト削減という会社からの圧力に現場が屈してしまったのだろう。全世界のメディアの注目は、この事故による野生動物や水産資源への影響に瞬く間に集まったが、海への石油流出事故が発生した際には決まってそうだが、安全装置の欠陥ゆえに命という代償を支払った11人の作業員にはそれ程の注目は集まらなかった。ITFは、安全確保にはヒューマンファクターが欠かせないという明確な主張を持っている。船員の権利を尊重し、人間的な生活ができる賃金を船員に支払い、危険を感じた際に船員が声を上げる事ができる環境を担保し、安全な海運産業の構築に真正な組合の存在は不可欠な要素であると認識すること、これらは全てITFの信じるところだ。
もう一つ、海運産業のヒューマンリスクとして世界中のメディアが大々的に取り上げた問題があった。海賊問題だ。本誌12ページの記事からも明白だが、ITFと全ての大手船社が協力したことで、「今すぐ海賊を撲滅する」ための署名が約100万筆集まり、国際マリタイムデーに国連事務総長と国際海事機関(IMO)宛てに提出された。海賊を撲滅するために直ちに行動しなければ、世界中の賢明な船主がITFと協力し、船員を危険な海域に送らない、ソマリア海域やスエズ運河の航行を完全に避けるという決断を下す可能性もある。そうなれば、先進国の物価にも大きな影響が及ぶことになり、一般市民も自分たちの生活が船員の働きに大きく依存している事実をより認識するに至るだろう。
ITF書記長
デビット・コックロフト |
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