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No.26/2012 |
■女性 |
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組合でトップを目指して
海事労組の女性活動家がリーダーシップについて議論
ボジャナ・マノジュロヴィク著
組合の指導者の素質とは?組織戦略の成功のカギは?組織労働者の減少という世界的傾向を食い止め、交通運輸労働者の団結を図り、集団の力で世界の労働者のために、よりよい未来を築くには?
これらは、2011年10月に米国メリーランド州、パイニーポイントのポール・ホール海事研修センターでITFが6日間にわたり開催した「海事労組の女性活動家のための戦略的リーダーシップ・組織化会議」で、世界25カ国の女性活動家37人に投げかけられた質問の一部だ。同センターは、ITFに加盟する国際船員組合(SIU)が運営している。
会議参加者は、男性が支配的な海事産業で働く女性労働者の日々直面する問題について話し合ったほか、ハーバード・ロースクールの「労働と勤労生活プログラム」のエレーン・バーナード事務局長の指導の下、組合の組織戦略や教育の役割について検討した。
全参加者が、教育や知識なしには、労働時間の改善、雇用契約期間の縮小、産休期間の拡大、安全な労働環境の確保といった目標は達成できない、との意見で一致した。 |
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⇒ボジャナ・マノジュロヴィクは、クロアチア船員組合(SPH)の職員。 |
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人生を楽しみたい人は、海へ出なさい!
「海事労組の女性活動家のための戦略的リーダーシップ・組織化会議」で最も活発だった参加者の一人が、北米国際海員組合(SIU)のベッキー・スリーパーだ。セントルイスでポート・エージェントを務めるベッキーの組合員歴は27年。
「ベテランの女性船員だからこそ、この特殊な職業を若い女性に勧められる」とベッキーは言う。「確かに厳しい仕事だが、組合が常に側にいて、助けてくれる。女性も男性も、刺激的で満たされた人生を送ることができる」
「28歳で組合初の女性役員に就任した後、カジノ船の組織化を支援するためにイリノイに派遣された。とても刺激的な経験だった。その後、ゆっくりと、しかし着実にキャリアを積んでいった。今でも学び、成長し続けている。私の人生はすばらしいと思う。誰だって、すばらしい人生を歩むことができる。私の息子は、大学で1年間学んだ後、家に戻り、大学は自分には向いてない、船員になれるかと聞くので、もちろんなれると答えた。同じく、船員になることを希望する15歳の娘にも、同じ答えを返している。人生を楽しみたい人は海に出なさい!と」 |
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家庭を大切に出来る雇用契約を
ジャクリーン・スミスは、2006年以来、ノルウェー船員組合の委員長を務めている。
組合は何に力を注ぐべきか?
船員組合は適正な賃金・労働条件の確保に努めるべきだ。伝統的な海運国の船員の労働条件を切り下げるために労働供給国の船員が利用されてはならない。公平性が重要だ、互いに必要な存在なのだから。適正な賃金・労働条件を確保し、全ての船員が差別されることなく、同一労働同一賃金の原則が守られるよう活動していく必要がある。
女性船員の労働条件向上のために何ができるか?
より多くの女性船員を海に送り出したければ、既に女性が乗り組んでいる船に配乗することだ。船員の仕事は本来、孤独なものである。(女性乗組員は通常いない。)小型貨物船は特にそうだ。海事産業で働く女性は増えているが、女性船員が船内で孤立しないように配慮する必要がある。
通常は9カ月程度の契約期間を短縮することも重要だ。外航の場合、乗船ごとに雇用契約が締結されるので、下船すれば雇用契約も終了となる。これでは、家族に優しい雇用形態とは言えない。継続雇用や、2対1あるいは4対2の休暇制度を推進すべきだ。そうすれば、女性船員にも家庭を持つ道が開かれる。現在、多くの女性船員が出産を機に船を下りている。家庭を抱えながら海に戻るのは、ほぼ不可能だ。
組合の全レベルで、活発な運動や率先力を根付かせるには?
組合活動に参加し、自分の生活・労働働条件に責任を持つよう、組合員に呼び掛ける必要がある。また、教育活動も重要だ。自分には仲間を代表する力があると感じられるよう、様々なツールを与えなければならない。自分たちの権利について知り、それらを主張する方法も学ばせなければならない。 |
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初めて訪船した時、船長に面会を拒否された。
会う価値のない人物と判断されたのだろう。
ベッティー・マケナ・ムツギは、ケニヤ港湾労組(DUK)の役員であると同時に、ITFの11番目の女性インスペクターだ。女性インスペクターの数は5年前に比べて倍増している。
ベッティーは22年以上、モンバサ港で働いている。ITFの女性活動や青年活動にも積極的に参加し、組合活動家としてのスキルを身につけてきた。
組合に関わり始めたきっかけを尋ねると、ベッティーは次のように語った。
「男性が支配的な職場の女性の多くは、男性にまかせておけばいいと考えている。しかし私は、やって見なければ分からない、と言ってきた。アフリカの組合では、女性に対する同情心から、女性に名ばかりの役割が与えられることがある。しかし、港湾の世界では、それすらない」
ベッティーは続ける。「私はポジションを求め、それを勝ち取ってきた。モンバサ港では女性労働者が非常に少ない。男性と女性では課題も違う。しかし、熱い組合魂を持ち、経営の前で堂々と主張できる女性がいれば、男性もサポートするだろう」
ベッティーがITFインスペクターとして初めて訪船した時、船長はベッティーと面会するために船を下りてくるのを拒否した。女性だから無視してよいと思ったのだろう、とベッティーは言う。
しかし、ベッティーはあきらめず、粘りに粘った末、船長との面会を果たし、乗組員の賃金問題を解決した。
「船長は私を一瞥し、女性だから重要ではない、と判断したのだろう。しかし、私は重要なのだ。女性としても、ITFインスペクターとしても」
ここ20年間で、港での女性活動家の扱われ方は大きく進歩したという。かつては、女性は役割(形式的な役割に過ぎないが)を与えられても、意見を聞いて貰えず、国内や国際の会議にも参加させて貰えなかった。
しかし今は、進歩的な組合指導者のおかげで、女性組合員が自分たちの役割を自覚しつつある。「従来、女性たちは、台所での役割しか期待されていないと考えてきたが、今や多くの女性が外に出始めた。女性は外に出なければならない」とベッティーは言う。 |
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⇒ベッティーのインタビューは、で視聴できる。 |
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