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No.26/2012 |
■マダガスカル |
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海事労組の誕生
ITFのレスリー・ホスナー海事研修開発スーパーバイザーは、ITFとフランスの民主労働総連合(CFDT)が、いかにしてマダガスカルの船員・港湾労働者・漁船員を組織するSYGMMAの誕生に一役買ったかを語る。
2002年10月、エルベン号(パナマ籍)の一等航海士だったRHルシアンは、マダガスカル人の他の乗組員12人と共に、ITF協約締結を要求し、ストを通告した。この知らせを受けたフランス在住のITFインスペクター、フランソワ・カイルは、ルシアンに会い、マダガスカル船員のための組合を作ることを提案した。
フランスのナショナルセンターである民主労働総連合(CFDT)の代表団と、CFDT・ITF合同代表団のマダガスカル訪問を経て、2003年5月にマダガスカル海事労組(Sygmma)が誕生、同年後半にITFに加盟した。
2003年2月にCFDT視察団の一員としてマダガスカルを訪問した際、カイルはトアマシナ州に寄港中のマリノン・ドゥフレスン号(フランス籍)内でMギルバートほか20人のマダガスカル人乗組員と面会した。彼らは船員にすら位置付けられておらず、ILOレートを大幅に下回る賃金しか受け取っていなかった。また、差別的な待遇も受けていた。マリノン・ドゥフレスン号はブレスト(フランス)で乾ドックに入る予定になっており、乗組員らはマネージャーとの面会を数回申し入れた後、全員でストを決行した。その4日後、会社側はITF協約に署名した。
Sygmmaは現在、海事産業全体に2,000人の組合員を擁する。インフラが脆弱で通信も困難、インターネット普及率がたった10%というマダガスカルで、組合を強化・発展させるべく、書記長となったルシアンは日夜努力を続けている。
2011年9月、船員、港湾労働者、漁船員、計50人が、トアマシナで開かれたITFの3日間のセミナーに参加した。
セミナー参加者は、このセミナーや組合に何を望むかと問われたところ、口をそろえて、船員としての権利、組合への関わり方、ITFの支援について知りたい、と答えた。
最初の二日間は、ITFや便宜置籍船(FOC)キャンペーン、各種国際条約や海事労働条約(MLC)で保障される権利のほか、自分たちの団体協約に何が記載されているのか、自分たちの権利を確保するためにどうしたらよいかなどを学んだ。
FOCに関するメキシコシティー・ポリシー(2010年)の一部であるITF船員憲章についても学び、同憲章に規定されている組合の義務をSygmmaが満たしていることを確認した。
セミナーは主にフランス語で行われたが、フランス語が得意でない者のためにルシアンはマダガスカル語の通訳を買って出た。英語しか話さないオフィサー(職員)に権利を要求する練習として、英語によるロール・プレーイングが行われ、参加者は船長やAB船員の役を演じた。中には印象に残る名演技もあった。
また、争議の体験談も語られた。ITFとSygmmaの支援を受けながら、1年間の闘争の末に7カ月分の給与を受け取った船員19人のうちの一人が、その体験を語った。さらに、海難事故の犠牲となった夫の補償金を請求する際、Sygmmaに援助してもらった女性が勇敢なスピーチを披露した。
セミナー最終日は終日、盛り上がりをみせた。
初めに、ITF海事組合開発プログラムのリー・キャッシュが組織化のセッションを行い、参加者は様々なアイデアを出し合った。
最後は、参加者全員がITFの会議でよく歌われる「ソリダリティー・フォーエバー(連帯は永遠に)」などの組合歌を熱唱することで、「皆が一つの声で同じ歌を歌う」ことがいかに効果的であるかを実証し、幕を閉じた。
参加者は、Sygmmaがしっかりと組織された、ダイナミックで対応力のある組合になってほしいとの期待を抱きつつ、自分たちが作成した計画を実現するには、自ら組合に積極的に関与すべきことで意見の一致をみた。
トアマシナで書記を務めるSygmmaのマリオ・ラコトンドラマナナは、最近着手したトアマシナ港のマッピングについて語り、組合に情報を提供し続けることが組合の成長にとって非常に重要だということを参加者に示した。
ITFは、Sygmmaのように民主的かつ活発で、組織拡大に務めている組合を支援することが重要だと主張してきたが、このセミナーは正にそれを証明したと言える。献身的な役員の下で、活動家の基盤を拡大しつつあるSygmmaは、地域を超えて他の交通運輸労組のモデルとなることをITFは確信している。 |
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