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No.26/2012 |
■HIV/エイズ |
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恐怖や偏見と闘って
正確な情報をもたず、誤った思い込みや、エイズを恥やタブー視する圧力に苦しむ人間が多い限り、差別を生む恐怖がなくなることはない。
ITFと加盟組合は、HIV感染者が直面する偏見をなくそうと懸命に努力している
ITF・HIV/エイズ・コーディネーター
アシフ・アルタフ
一定の労働者グループは、仕事がら、特にHIVウィルスに感染したり、他人に感染させたりするリスクが高い。非常に移動性が高く、性的にアクティブな男性がほぼ全員の職場であり、長期間にわたり家から離れて働いている船員労働の状況は、極めて高リスクの行動を誘発する可能性がある。
同時に、船員労働の状況から、HIV/エイズの予防や治療および関連情報を手に入れるのが難しい可能性もある。
殆どの研究が陸上で働く交通運輸労働者に焦点を当てているが、出身地域の人口で比較した場合、船員のHIV感染率は通常、極めて高い。また、船員は、HIV感染やリスク要因について認識レベルが低いことも調査から分かっている。
国連児童基金(UNICEF)や国連合同エイズ計画(UNAIDS)などの国連機関は、東南アジアのメコン河流域出身の船員の22パーセントがHIVウィルスに感染している可能性があると推計している。UNAIDSが2007年に発表した報告書によれば、フィリピンで報告されているHIV感染者の35パーセントが外国人労働者であり、33パーセントは船員である。
グローバルレベルでは、この30年間に、HIV/エイズの予防や治療の面で大きな進展があったが、新規感染者の総数は一日7000人で高止まりしている。UNAIDSの最新の推計では、患者・感染者は3400万人で、約3000万人がエイズに起因する理由で死亡している。
ITFは、HIV/エイズが労働組合の中核的問題だ、と絶えず訴えてきた。職場こそ、予防や治療、ケアを受けるための入り口だとITFは考える。HIV/エイズ問題は、ITFインスペクター研修の中に組み込まれている。船員の健康情報プロジェクトを通じて作成したHIV/エイズ資材を、世界中の船員センターに間もなく、配布する予定だ。
独自で、あるいは他団体と協力して、職場でHIV/エイズプログラムを展開しているITF船員組合も着実に増えている。
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メキシコの加盟組合のASOMMMNは、タンピコ船員学校のカデットを対象にしたHIV/エイズ意識向上プログラムを開始した。今後は、同様のプログラムをメキシコ全土の船員学校で実施する予定だ。 |
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インドネシア船員組合(KPI)とノルウェー船員組合は、乗船前のHIV/エイズ教育プログラムを実施している。また、船員の家族を対象に、HIV/エイズ意識向上セミナーを実施している。 |
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インド船員組合(NUSI)の青年委員会も、インド各地で定期的にHIV/エイズ意識向上キャンペーンを展開している。 |
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今年の世界エイズデーには、ウクライナ海事労働組合が、4000人の学生が学ぶ、オデッサ国立海事アカデミーで、安全なセックスを勧めるキャンペーンを展開した。 |
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フィリピン船舶職員部員連合組合(AMOSUP)は、船員がなぜHIVに感染しやすいか、その裏の要因と、感染を防ぐ方法、HIV感染者としての生活と仕事について描いた「上陸」という漫画を作成した。 |
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HIV陽性だが…
沈黙を破って
33歳の若者、リトン・サラはインドの西ベンガル出身で、以前は船員だった。だが、サラの生活は、2004年に乗船前の健康診断でHIVに感染していると判明してから、完全に変わってしまった。
何の話し合いもないまま、解雇されてしまった。船員に要求される仕事は何でもできますと主張し、他の船で仕事を探そうとしたが無駄だった。
そこで、サラは、自分がHIVに感染していることを公にすることにし、2009年以来、HIVと闘う船員を支援するITFの仕事を手伝っている。
彼が船員に伝えるメッセージは、シンプルなものだ。「HIV/エイズの基本的な事実を学んでください。悪いイメージや偏見と闘ってください。安全なセックスをし、死をもたらしかねないHIV/エイズについて必ず友人に話してください。いつの日か、必ずHIV/エイズを制御できる日がくるはずですから」
海に復帰して
HIVに感染していることを理由に、長らく様々な斡旋会社や船主から雇用の機会を否定されてきたインド人船員が、ITFに連絡してきた。
ITFは、この船員に会うことを承知してくれた責任ある船主を探すことができた。この船員は、HIV/エイズという烙印ではなく、自身のもつ能力と資格によってのみ判断され、雇用契約を見事に勝ち取った。
その後、この船員は雇用契約を更新でき、この船員がHIVに感染している事実は絶対に明かさないと、使用者側も保障している。
そのため、この船員は、経済的に家族を支えることができ、健康を維持し、働き続け、友人や同僚と付き合うこともできる、と確信している。
ITFは、HIV感染の有無を採用の基準とすることは受け入れられないと考えるし、事実、そのようなことは多くの国で違法だ。
HIV感染を理由に採用を拒否された船員は、自分の組合かITFに連絡すべきだ。 |
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Coming Soon!
ITFグローバル・サポートライン
年中無休、24時間利用可能
ITFは、年中無休、24時間体制の電話紹介サービスを、間もなく開始する予定です。FOC船に乗り組む船員が、世界のどこにいてもITFから支援を受けやすくするためです。
ITFグローバル・サポートラインは、グローバルなワンストップ紹介システムです。マルチリンガルのオペレーターが、まず皆さんに最初のアドバイスを行い、世界中の港で活躍する130人以上ものITFインスペクターなど最も適切なITFの担当者に、あなたの問題や問い合わせを引き継ぎます。
また、船員の皆さんは、ITFロンドン本部や世界150カ国に所在するITFの加盟海事組合から、支援やアドバイスを受けることもできます。
さらに、ITFと加盟組合は、非営利の船員福祉団体や世界中の政府の海事関係省庁とも協力関係を維持しています。 |
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