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No.26/2012 |
■クルーズ船 |
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新協約で保障された新たな権利
ITF海事オペレーション部のファブリツィオ・バルセロナが、ITFクルーズ船協約のガイドラインについて説明する。
ITF加盟組合がクルーズ船協約を締結する際の指針として1994年に制定されたITFマイアミ・ガイドラインが、2011年に改定された。新ガイドラインは、今やITFの海事政策の重要な要素となっている。
新ガイドラインは、国際海事機関(IMO)や国際労働機関(ILO)の最新条約も考慮し、組合と船社の間で締結される協約がこれらの条約に適合するよう配慮されている。
特に、2006年ILO海事労働条約(MLC)の勧告内容が盛り込まれ、居住条件や協約上の規定に関する船員の利益が確保されている。
重要なのは、クルーズ船で働く全ての労働者が船員として定義されたことだ。これは、各種規定の調和を意味する。つまり、運航要員だけに享受されていた条件が、全乗組員に適用されることになる。これまで、非運航要員の多くは、異なる権利・義務が規定された様々な契約に縛られていた。
さらに、MLCは、労働組織や休憩時間に関する規定を強化したほか、団体協約が遵守されない場合の苦情申立手続きを定めたり、船員を供給するマンニンング会社に対する規制を設けたりしている。
マイアミ・ガイドラインが制定されるに至った理由は、クルーズ船産業が他の海事産業に比べて非常に競争が激しく、規制が緩やかだった時代に遡ることができる。
クルーズ船の乗組員は、他の船種の乗組員と同等の契約条件を享受することはできなかった。例えば、ホテル・ケータリング関連のサービス要員は、保安や適正条件を確保するための協定が必要だった。
しかし、ITF加盟組合が長年にわたりクルーズ船各社と鋭意、交渉を重ねた結果、賃金のみならず、以下の条件が保障されることになった。
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居住空間の改善(休養目的のレクリエーションエリア等) |
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運航当日の過密なスケジュールを考慮した拘束・実働時間 |
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妊娠中の特別規定 |
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マンニング制度の規制強化 |
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苦情申立および仲裁手続き(労働争議の際、船員の代表者が申請できる) |
2014年までに、302隻のクルーズ船が市場に供給されるとITFは見込んでいる(探検クルーズや沿岸クルーズを含めれば402隻)。
クルーズ船で働く船員の数は、2012年末現在、193,000人。休暇中、陸上での研修中、病気療養中、産休中の船員を含めれば、その数は250,000〜270,000人に上る。
最も多くの船員が雇用されているのはバハマ籍船で、その数は約58,000人。その次に、パナマ船籍(37,000人)、マルタ籍船(23,000人)、イタリア籍船(21,000人)、バミューダ籍船(17,000人)、オランダ籍船(8,500人)、英国籍船(6,000人)、米国籍船(1,300人)と続く。
マイアミ・ガイドラインに基づいたITF協約が適用される船員は、全体の約92%に達する。
ITFは、ITF協約の小冊子をクルーズ船の乗組員に配布している。また、ITF加盟組合の代表者が、定期的に協約船を訪船している。さらに、船社の中には、組合の代表者に乗組員の苦情に対応させているところもある。
ITFも各加盟組合も、船員の全ての問題を解決できるわけではない。しかし、問題に対応するためには、現場船員の意見が必要だ。支援が必要な時は、組合やITFに是非連絡してほしい。 |
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