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2011年4〜6月 第42号 |
■気候変動 |
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気候変動会議
組合にとって何を意味するのか?なぜ重要なのか?
2010年12月にカンクン(メキシコ)で開催された国連気候変動会議の良い面、悪い面を、ローラ・マーティン・ムリーリョが指摘する
良い面
ディーセント・ワークの認知
カンクン会議では、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らいし仕事)と質の良い雇用を原則とする、公正な移行の必要性が認識された。これは、国際環境交渉の分野や、国際労働機関(ILO)の枠外でまとめられる国連文書全般において、実に歴史的なことである。労働組合の代表団は、優れたロビー活動を展開し、この勝利を勝ち取った。この運動に参加してきたことが誇らしくなるような連帯を感じた瞬間だった。
「緑の気候基金」の創設
新たな民主的枠組みの下で、1000億米ドルの「緑の気候基金」が設立されることも決まった。これにより、発展途上国も、先進国も同等に参加することができる。設立までの間、発展途上国から25人、先進国から15人の委員で構成される暫定委員会が設置される。この委員会には、オブザーバーも参加できる。市民運動は、ダーバンあるいはそれ以降の会議に向けて、この開かれた体制を活用してきた。緑の気候基金は、温暖化の緩和策や対応策のために、官民双方の財源から拠出される。
良く練られた原則
カンクン合意は、原則面で優れている。平等の必要性、開発権、先進国の歴史的責任、人権尊重、ジェンダー平等、先住民・若年層・障害者の権利を認識している。
気温の上昇は2度以内
各国政府は、気温の上昇を2度以内に収めることに合意した。さらに印象的だったのは、科学的知見による提言があれば、1.5℃を検討することについても合意したことだ。
気候変動会議の機運の維持
カンクン会議は、閉塞的な交渉プロセスに新風を吹き込んだ。気候変動会議は完全なプロセスとは言い難いが、これまでのところ、前進するための唯一、正当かつ国際的な方法である。カンクン会議の相対的成功は、国連および各国のできる仕事が依然として存在し、効率的に行えることを意味している。 |
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悪い面
先進国は尻込み
決意表明の大半は、発展途上国から出された。指導力を発揮したのは、主に新興経済国だった。交渉を前進させるために犠牲を払ったのは、後発発展途上国や交渉の結果によって最も影響を受ける国だった。先進国の決意表明は、はるかに少なかった。
温室ガスの削減は限定的
緩和策(温室ガスの削減)の点では、公約や目標、行程が示されず、第2の京都議定書への道筋もはっきりしない。従って、我々は闘い続けなければならない。
2007年のバリ会議以来、温室ガスの削減は何ら進展していない。バリ会議で、各国政府は米国を待つことにしたが、米国政府が昨年見せた柔軟性の欠如、オバマ政権の弱体化、米国世論の急進化などを考えると、これは前向きな戦略とは言えない。そして、これには日本やロシアなどの国々の強い反対を追加しなければならない。
超楽観主義のリスク
カンクン会議は、交渉担当者を含めた気候運動全体に、奇妙な高揚感を醸成した。最後の数時間で、野心的で拘束力のある、公正な合意をまとめ上げることができたように思われた。しかし、実際にはそれとは程遠いもので、この高揚感によって、ダーバン会議に向かう過程で足元を見失ってしまう危険性さえある。各国は、会議の成果にある程度満足しているのかもしれないが、問題を適切に管理し、求められる野心的な目標を実質的に達成するという点で、我々はどこに位置づけられることになるのだろうか?カンクン会議で期待以上のことを成し遂げたために、ダーバン会議では最低限の達成さえ不可能になってしまうのではないか?
我々の次なる課題は、ダーバン会議で真の進歩を遂げるために政府に圧力をかけることと、様々な目標と技術を備えた各種運動体の強力な動員力を維持することだ。その実現に取り組んでいく。 |
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ローラ・マーティン・ムリーリョは、「サステインレイバー」(持続可能な開発のための国際労働財団)のディレクター
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気候変動に関するITFの取り組み
アラナ・デーヴITF教育部長
2010年のITF世界大会(メキシコ)で、代議員は、地球温暖化の差し迫った脅威の対応策をITFに付託する決議案を満場一致で採択した。現在の課題は、言葉を実行に移すことだ。では、具体的に何を実行するのか?
労働組合は、12月にダーバンで開催される国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)で、拘束力のある国際合意を採択するよう、各国政府に圧力をかけなければならない。各国で要求実現のためのキャンペーンを実施するとともに、ダーバンでは、国際労働組合運動全体として活動する。ITFは、COP17への加盟組合の関与を調整する。労働組合運動の声を高めるために、他の社会運動と連携する必要がある。また、気候変動に反対する運動に参加する組合員を増やすことも重要だ。まず、やるべきことは、問題と解決策の両方について、認識を深めることだ。
ITFは、教育プログラムを実施したり、教材を製作しながら、加盟組合が独自の気候変動政策を立案することを支援している。また交通運輸産業における雇用への影響について調査を実施しており、その結果を、組合が団体交渉やキャンペーンに活用することもできる。
今年は、質の高い公共交通に焦点を当てて活動する。これには、交通運輸が環境に与える影響も含まれる。気候変動に関するITFの活動に、是非、参加してほしい。 |
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