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グローバルユニオン
No.27/2013
■ITFの支援活動
 
ITFの支援活動
最前線


船員の仕事は誇らしい仕事だ。しかし、何か問題に直面したら、相談できる場所があるということを知っておいてほしい。ITFがどのように船員を支援しているかを紹介する。

不可能はない
ITFマリタイム・オペレーション部 ジェフ・アブレット

ITFは負傷・死亡補償金の請求に関する支援を求められることがある。中には、どんなに悲劇的な内容でも、成功の見込みがほとんどないケースも存在する。カリストのケースもこの類だった。
2004年4月29日、ルーマニア人の操機手(38歳)がイタリアからギリシャへの航海中に行方不明になった。彼には妻と二人の子供がいた。船主は船舶1隻しか所有していないギリシャの会社だった。老朽化した船を安く買い取り、ぼろぼろになるまで使い回し、スクラップ売船するというのが手口だった。ITFが要請を受けた時には、この会社は既に倒産していたので、補償金を請求する相手もいなかった。カリストの遺体は発見されなかったので、妻はルーマニアでの長い裁判手続きを経て、2010年12月になって、やっと死亡証明書を手にすることができた。
この間、ルーマニアの船員組合とITFインスペクターのエイドリアン・ミハルショウがカリストの妻を支え続けた。しかし、2011年5月となった当時、何ができるかということが問題だった。残された相手は、さまざまな法的問題はあるものの、P&Iクラブだけだった。
雇用契約書には補償金の額は明記されていなかった。また、事故の場合との記載はあったものの、「業務中の死亡」の場合という記載はなかった。これがさらなる障害となり、我々は、事故が原因で死亡したのであり、この種の請求で相手側がよく主張する、自殺ではないということを証明しなければならなかった。
幸い、我々の主張を裏付ける様々な資料(捜索・救助報告書、航海日誌、カリストと会社の通信)を妻が保管していた。
それ以降、P&Iクラブとのせめぎ合いが約1年間続いた後、ついに、妻は補償金5万ドルを手にすることができた。
大した額ではないように思われるかもしれないが、妻はITFに送った書簡の中で次のように述べている。「これでやっと全ての埋葬手続きを終え、夫の魂を安らかに眠らせることができる。亡くなった方や行方不明になった方、全ての方に祈りを捧げたい。そして、私を助けてくれた偉大なITFファミリーのために祈りたい。私に支援を差し伸べてくれた全ての人と知り合えたことを誇りに思う。ITFのおかげで、私の子供たちの未来も開けた」。
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サハリン号

賃金未払いのまま香港で遺棄されたサハリン号の乗組員
香港のITFインスペクター、ジェイソン・ラムが報告

2012年2月26日、ベリーズ籍のばら積み船、サハリン号の乗組員からITF香港事務所にメールが届いた。香港に係留中の本船で、水、食料、電気が不足しているという内容だった。ITFインスペクターのユ・サク・ミンは、船舶代理店に連絡を取り、必要な物資と燃料の補給を要請するとともに、現況を把握するために訪船した。
ウクライナ人の船長によると、ブルガリアの管理会社、インターフリートが燃料代20万ドルをマルタのサプライヤーに滞納しており、このサプライヤーが香港で裁判を起こしたため、本船が拘束されたという。船内には、ウクライナ人船員16人、ロシア人船員5人、計21人が残されていた。船長は、乗組員の賃金が2011年から未払いになっていることを説明した。甲板手1名が2011年3月から、他の乗組員は6〜8カ月前から賃金を一切、受け取っていなかった。我々は、香港政府に対する法的援助の申請を手伝った。

船長は、乗組員の賃金が2011年から
未払いになっていることを説明した


2012年5月、サハリン号は香港高等裁判所により390万ドルで売りに出された。乗組員の弁護士が売上高で未払い賃金を支払うよう、請求した。
2012年5月3日、乗組員は香港政府によって本国に送還された。乗組員が香港を出発する時には、未払い賃金の総額は274,342ドルに達していた。
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もはや逃れられないとわかると、船主はイライラを募らせた

一致団結して
ビルバオ(スペイン)のITFインスペクター、モハメド・アラチェディーの報告

2012年1月末、ITFに加盟するモロッコのUMTから支援要請がITF本部に届いた。
コマリット・コマナヴ・フェリー(CCF)社は、4カ月間、全フリートの乗組員に賃金を支払っていなかった。社会保険料や医療保険料のほか、労使で合意されている住宅手当も未払いで、家族は自宅から強制退去させられるかもしれない状況だった。船内の食糧、電気、必要物資はすぐに底をつき、スペインとフランスのITFインスペクターが物資の供給に全力を尽くした。
しかし、問題は人道援助に止まらなかった。乗組員は終身雇用で、CCF社に長年勤務していた。中には勤続30年以上の者もいた。
ITFは、タンジール(モロッコ)のCCF本社のほか、スペインとフランスのモロッコ大使館・領事館に書簡を送り、政府の介入を要請した。船籍も乗組員の国籍も会社も皆、モロッコだったからだ。しかし、政府からの回答は一切なかった。
私は、ホセ・オルテガITFインスペクターとUMT幹部と共に、アルへシラスとセット(フランス)で記者会見を行った。
フランスの港湾当局、港湾管理者、シーメンズクラブ等の協力を得ながら、食糧、医療、燃料の供給に尽力してくれたフランスの組合に感謝したい。特に、FO労組のリリアン・トレスが果たしてくれた役割は大きい。
これらの活動と並行して、モロッコでは、船員がCCF本社前や運輸省前で何度も抗議行動を実施したり、UMTがモロッコ首相に抗議文を送ったりした。
UMTの活躍は目覚ましかったので、幹部2人が「国家の安全を危険に晒した」というでっち上げの容疑で逮捕された。これに対し、すぐに大規模な国際抗議活動が開始された。(最新情報はhttp://www.itfglobal.org/campaigns/free-said.cfmへ)
ITFは連帯要請を行い、世界各国の海事関係組合がモロッコ大使館・領事館に抗議文を送った。
一方、ITFインスペクターのパスカル・プイエ、イブ・レイナード、ホセ・オルテガは、UMTの合意を経て、法的手続きを開始した。モロッコの港湾労組は、CCF社の船員に連帯し、5月11日に各港で8時間ストを実施した。本件は現在も係争中だ。
最新情報はhttp://www.itfglobal.org/solidarity/solidarity-3533.cfm
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ジャニスM号の乗組員
未払い賃金を回収


ラッド・タウェン・ITFインスペクター(オランダ、デルフゼイル)

2012年8月8日、ベルギーのゼーブリュッヘ港のインスペクター、クリスチャン・ルースが、小型のばら積み貨物船4隻を欧州と地中海で運航し、ギリシアを本拠とするイカリアン・ムーン社について世界のITFインスペクターにEメール送った。
ばら積み船市況が大きく低迷していることに加え、金融危機、機器の破損、他の船舶との衝突事故などが重なり、同社の生き残りは困難を極めていた。イカリアン・ムーン社所有の4隻のうちの一隻、「ジャニスM号」の乗組員がオランダのインスペクターに連絡をしたため、デビー・クラインがテルネーゼン港に停泊中の本船を訪船し、フィリピン、ギリシア、エジプト出身の乗組員の賃金がこの数か月間遅配となっていることが明らかになった。
4人のフィリピン人船員は既に雇用期間を満了し、交代要員もすでに船に到着していたので、7月にカサブランカで下船できると約束されていた。しかし、彼らに賃金を支払う資金がなかったために下船できず、次の寄港地で賃金を支払うとの約束を信じ、船に残っていた。ところが、テルネーゼン港についても資金は届かなかった。
私は会社に連絡し、船主に船に金を届けるよう要請したが、会社はあらゆる言い訳をして動こうとしなかったため、乗組員を代表し、私たちで本船を抑留することにした。次の朝、船主が連絡してきて、米ドルが手に入らないと言い訳したが、ユーロで支払うことで既に話はついていた。数時間後、飛行機がいっぱいで送還のためのフライトが予約できないと船主が言ってきたので、自分たちでも調べたところ、航空券はいくらでも予約ができる状況だった。
船主は逃げ場がどこにもないと分かるにつれ、激怒し出したが、最終的に8月24日に船に資金が運ばれ、4名の船員は合計4万8千米ドルの現金を受け取り、雇用契約を終了した。デビー・クラインがこれを見守り、翌日のフライトに備えて4人の船員をホテルに宿泊させた。
残りの乗組員に関しては、遅配手当500米ドルを含め、次の寄港地で未払いの賃金を支払うことを約束させた。
差し押さえ執行官に船を解放するよう命令が下され、本船はテルネーゼンを出港し、ルーアンに向かった。ルーアンに着くと、8月26日に今度はフランスのインスペクター、ロワール・タロネューが訪船し、残りの乗組員5名が5万5千米ドルの賃金を受け取るのを監視した。この船に4年間乗り組んでいたエジプト人ABは、船がカサブランカに9月1日に到着した際、未払い賃金3万3千米ドルを受け取ることに合意した。
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どれくらい待てば長すぎるのか?

トミー・モリー(英国リバプール港のITFインスペクター)

インスペクターをやっていると雇用契約が終了したのに船舶運航者が下船を許可せず、本国送還にも合意してくれないというケースにしばしば遭遇する。
大抵は契約満了から数か月経っているケースだが、それより長い場合もある。最近のケースは少なくとも近代において、船員がそのような形で最も長く船に留められたケースといえるだろう。
アイルランド所有、クラサオ島籍の一般貨物船「フィンガル号」に乗り組むABから私のところに連絡が入った。一か月前に送還させてくれるように頼んだが、聞き入れられないとのことだったが、このABはその時点でなんと3年9か月もこの船に乗り組んでいた。
その期間の殆どは自分の要望で船に留まったということだった。大学生の子供が2人いて、その学費の支払いもあるため、できるだけ長く働きたいと思っていたそうだ。
私は船主にこのABの賃金を支払わせ、リバプールから送還させることができた。しかし、同船に1年10か月乗り組んでいた別の船員は2012年11月までは働きたいと懇願した。家に帰るより、できるだけ長く船に留まり、一つの仕事が終わればまたすぐ次の仕事を探してできるだけ長く働きたいと思う気持ちはよくわかる。しかし、私に言わせれば、これほどの長期間にわたり、船員のそのような要望を聞き入れる船主は無責任極まりない。
海上労働条約には、船員は、最大12か月以上経過した後は、雇用契約を終了し、送還する権利があると規定されている。英国の海上保安庁とこの件について話したが、明らかにリスクが高いことが明確なケースでない限り、省庁もほぼ何もできないということだった。
この特集記事の完全版は、ノーティラス・インターナショナル労組の機関紙「テレグラフ」に掲載された。
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うちの港で船員いじめは許さない

ムケシュ・ヴァス ITF連絡担当(インド、カンドラ)

韓国籍船の「ブルースター号」は何年も運航を続け、船主には多くの富をもたらし、船員には雇用を提供してきた。最終的に、廃船されることが決まったが、ある自称船主が割り込んできてこの船を買い取った。
再び航海に就いた「ブルースター号」は、すぐにエンジンが故障し、技術的問題を抱えるに至った。そこで、港湾局は同船を係留させた。数日後、食糧品が底をつき、燃料も切れたが、船主からは何の連絡もなかった。乗組員は支援を求めようとしたが、誰も相手にしてくれなかった。
ある日、タグボートに乗った数人の港湾労働者が船の横を通りかかり、船員が助けを求めて叫んでいるのを目撃した。この港湾労働者から連絡を受け、私が対応することになった。地元の配乗代理店がすぐに食糧を提供した。賃金と本国送還の問題もあったが、乗組員はもうこの船では働きたくないと言っていた。船主と配乗代理店は交渉しても非協力的だったが、圧力をかけ続けたため、半年後に賃金は支払われ、船員の送還も実施された。
また別のケースになるが、ツバル籍船のベレズ号がカンドラに入港したので、船員の福利担当スタッフがインターネットサービスを提供するために訪船した。その際に乗組員から助けが必要だと言われた。
私が訪船しようとした際、船長は私の立ち入りを許可しなかった。そこで私は自分の組合の書記長とインドの港湾労組に連絡した。ITFに加盟する港湾労組の組合員が荷役を停止した。その結果、船長は私の訪船を許可した。船員と話をしてこの2か月間給料が支払われていないこと、女性の料理長が個人的な理由で送還を求めていることが分かった。
そこで私は船主に問題を通知したが返信はなかった。港湾労働者が再び荷役を停止すると、1週間後にカンドラまで出てこざるを得なくなった船主から賃金は支払われたとの連絡があった。
そこで同船に再び戻ってみると、確かに賃金は支払われていたが、料理長が指を骨折したことで乗組員が意気消沈していた。料理長は何があったか話そうとしなかったが、船主が料理長に暴力をふるったと二等航海士が話してくれた。しかし、乗組員はこれ以上苦情を申し立てるつもりはないので、ただ家に帰して欲しいと要求したので、送還が実行されるまで乗組員を保護するよう、警察に頼んだ。
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ネットワークづくりが成功の鍵

マット・パーセル
(オーストラリア、メルボルンのITFアシスタント・コーディネーター)

アンティグア籍のHCメリーナ号に乗り組む船員から、2012年4月に同船がメルボルン港に停泊していた際に問題を解決した件で、長い感謝の手紙がITFに送られてきた。
この船のフィリピン人船員らは個人的な理由から下船したがっていた。雇用契約の期間はとっくに過ぎていたが、ポーランド人船長は乗組員に対し、ひどい扱いをしていた。この船長はITFのことをマフィア呼ばわりしていたのだ。

「地域全体にネットワークを張り巡らせ、網の目が非常に強力になれば、悪辣な船主も逃げ隠れできなくなる」
助けを求める電話がかかってきた時、私は休暇中だったので、ボランティアスタッフの一人に同船を訪ねるよう指示した。彼はシドニーを拠点とするITFコーディネーターのディーン・サマーズや私、ITF本部の指示に従いながら、三日間にわたり、船を行き来した。船主は約束を破り続け、3名の乗組員の送還のために予約した航空券を2度もキャンセルしたりした。
そこで、サマーズが切り札を使い、ポートステートコントロール査察官に二等航海士が下船するので、マンニングの不足が発生する旨を連絡した。会社は代替船員を手配しなければならなくなり、その船員の到着を待つ数日の間、船は係留されることになった。
このことは会社にとっていい教訓となった。適切な行動を取り、交渉を開始した段階から協力的な態度で臨まなければ、係船という痛い目に遭わされるのだ。交渉の中で、ITF側は一貫して乗組員の責任を決して追及しないように求めた。その結果、船社やマンニング会社からHCメリーナ号の乗組員が不遇な目に遭わされることはなかった。
オーストラリアではネットワークづくりを重視しているが、本件の結果はまさにネットワークの重要性を物語っている。地域全体にネットワークを張り巡らせ、網の目が非常に強力になれば、悪辣な船主も逃げ隠れできなくなるため、大抵の問題ではネットワークが良い結果をもたらしてくれる。
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